151.ルーファス2
「なんだなんだ、大声で」
ベッケンは椅子に座るパソコンモニターに近づく。
スタッフらしき男がベッケンに話しかける。
「いやぁ、それがベッケンさん。このAI、手品を見るのに種を推測して見るなんて邪道だ!番組タイトルから見破れるか?!って文言を外してほしいと」
ベッケンは驚いた顔をしつつ、古めかしいモニターの中を覗くように話しかける。
緑色の文字が表示されたモニターはベッケンの顔を反射させ映し出す。
「ああ!ベッケンさん、本物だ!初めまして」
ロボットアームが動き出し、ベッケンの体の前に現れる。
「ああ、もう。勝手に動くなよ。止めろ止めろ」
スタッフはアームを払いのけ、ベッケンを覆うよう体を庇う。
「ええぇ。握手ぐらいいいじゃないっすか。しょぼーん」
アームはゆっくりと元の位置に戻ると、絵にかいたような「肩を落とす」動きをする。
「握手したって体温感じねえんだから、握手した喜び感じんのかよ」
ベッケンは肩を落としたモニターに向かいツッコむ。
「はっはっは、確かにそうっすね。でも何かを握った、握られてるって感覚は届くんで、そりゃあ嬉しいもんすよ、人間が人間と手をつなぐ感覚には劣るかもしれませんが、しかし握手って文化は不思議っすねえ。手に武器など持っていないって友好の証なんでしょうけど、違う国にいっても手を出したら手を出して握り合うのはそんな文化がないところでも反射的に理解して手を握り合うわけっすから、何かDNAに刻まれた意味のある行動な・・・あっ」
スタッフはモニターの電源を落とし、ベッケンに頭を下げる。
「すいません、ベッケンさん。3台AIを用意したんですが、撮影前にテストで、過去のベッケンさんの映像を見せていたら、ベッケンさんが懸念していた、あらすじと現象の検索、最後にとりあえず褒めておこうと、前回の撮影と変わらない感じでして・・・」
「それで急遽、予備で用意しておいたこいつを準備したと?」
「お、さすが察しがいいようで。ただ、先ほど見てもらったように、まぁこいつ喋る喋る。喋らないように前もっていえばそりゃあ手品を見はするんでしょうけど、やっぱり天才AI VS 天才手品師って企画が無理があったんじゃないっすかね」
ベッケンはモニターを右手で優しく撫でながら、左手で電源を押す。




