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魔王様は手品師  作者: ゆたか
比企田天在編
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149/191

149.ベッケン3

「世界の常識は日々変わる、今ある調味料は薬として誕生し、味付けをする『あって当たり前のもの』『ないと物足りないアクセント』になっている」


「我々が今命をつなぎとめる薬として使うものも、ないと物足りないものになる日はくるのだろうか」


「ベッケン監修、未知なる七味。好評発売中!」


監督がメガホンを叩き、場の空気は穏やかになる。


「香辛料のキャラクターまで引き受けたんですね」


見習いは椅子に座ったベッケンに水を手渡す。


「元々付き合いのあった会社ってのもあったんだけど、老舗は資金難でね。ちょっとでも流行りの食べ物とか健康器具があると・・・ヤクザやそっちの人たちは商いとしてサプリや食料品に身分を隠して低価格で市場参入するから・・・業種によってはその一時的な商いのせいで廃業してしまうこともあるんだよ、あとギャップが面白くて印象に残りそうじゃん?」


「ファジーフードでしたっけ。機能食品未満の効能あるやつ。ベッケンさんが名付けた・・・昔は薬扱いだったけど、効果がないわけではないが、なんでしだっけ、かん、」


見習いは商品の七味を手に取ると、成分表など細かい文字を見る。


「漢方な。ファジーフードなんていい意味には思えないって最初は反対されたけど。なんだかんだで大好評で知り合いの社長も喜んでいたよ。やっぱりなんだかわからないけど響きがいい。これを見つけられたら、結果は付いてくるんだろうよ。・・・・まぁその後ヤクザさんたちがこぞって参入してきてな、元祖ファジーフードだ!ってここでCM打っておいてほしいって言われてね、効果がどれだけ続くか・・・ずっと続いてほしいよなぁ」


(正直、今回のCMがコケてしまったら、社長には諦めてもらおうと思ってるんだよな)


「・・・元気ありませんね」


「ああ。ごめんごめん。さすがに5個続けての撮影だと疲れちゃって。最後は何だっけ??」


「最後が最後、・・・ややこしいな。次はベッケンさんの特番最後の撮影です」


ベッケンは手渡された紙を見る。


「ベッケンVS最新スーパーAI、世紀の頂上対戦・・・かぁ」


見習いは束になった仕切り書を手渡す。


「あー。もう大体覚えているから大丈夫、これね一回頓挫してる企画だから・・・よく覚えてるよ」


「なんでしたっけ、手品をカメラを使ってAIに見せて驚くかどうかでしたっけ」


ベッケンは腕組みをする。


「世界の不思議って例の番組のワンコーナーだったから、それほどウケなくても流せばいいかって現場はそのレベルだったんだけど。撮影を始めたら大変だったんだよ。カメラでとらえた動きから解析して何のマジックをしているかネットで調べて、その歴史や話をし始めてさ。こっちが言葉を投げかけたら、今のはどう?わかった?素晴らしいですなんて。起こった現象をあらすじで述べて最後に良かったっていうだけで・・・盛り上がりがなかったんだよなぁ」


「なるほど!人間のような感情があって驚いた!ではなく、定型文を返してきてる機械っぽい感じだったんですね、で、絵映えずに前回のはお蔵になったと・・・」


見習いは書類を何枚かめくり、とあるページを指さす。


「おそらく、前回のを踏まえてでしょうね。今回はAI3台用意されているようです」


「3台だったねぇ、さて・・・どうなるやら」


(なんとしても特番でAIとの対決を撮影したいのか。スポンサーの意向・・・だろうな、ということはマジシャン側が負けるシナリオなのか)


「まだまだ人間はAIより賢いんだぞ!それを番組にして、ベッケン最高!!で盛り上がればいいですね!」


ベッケンは少し驚き見習いの顔を見る。


「君は将来有能なディレクターになれそうだな、そうだな。」


「えっ。結末決まっての撮影じゃないんすか?」


「そりゃあ、君ぃ。勝ちで撮ったとしても撮影全部終えていいまとまりになってなかったら、負けの画を撮って完成でも俺は嫌じゃないよ、大事なのは面白いと記憶に残る作品になるかどうかだ」


遠くからベッケンを呼ぶ声が聞こえる。


「ベッケンさん、隣のスタジオ準備できました。化粧直しその場でしてもらって、すぐこれそうですか?」


ベッケンは見習いの肩を叩き、最後の撮影に向かい立ち上がる。

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