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魔王様は手品師  作者: ゆたか
比企田天在編
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148/191

148.ベッケン2

ベッケンの初放送は深夜のミニドラマ枠を使い放送された。


昔、子供の時に見た映画やアニメ、ドラマなどの手法を用いた映像作品に近い手品の実演動画だった。


「なんだかわからないけれど、凄いものを見た」


番組名も「???」映像が始まっても番組名が出ることはなく、映像の最後にもBECKENとロゴが表示されるのみだった。


「噂が噂を呼び、テレビのアーカイブ配信だとかネットで動画が流れて、ベッケンは一気に有名人になったってわけだ」


見習いはベッケンの過去の映像を指差す。


「パートカラーもしてたんですね、しかもこれ当時の作り方?」


監督は嬉しそうに当時の動画を振り返る。


「そう、フィルムに色を塗っていくんだ、こっちは包帯男が包帯を取ると顔がない例の技法で・・・これなんか見てみろ、全編通して引きの絵。演劇を撮影したような本当に初期の撮影構図、あ、あとこれも面白かったな、SEばかりに焦点をあてた特殊SEの回」


監督の近くにベッケンが現れ、見習いとともに映像チェックを行う。


見習いはベッケンに畳みかけるように質問をぶつける。


「手品は全く詳しくないのですが、あえて選んでいるジャンルでもあるのですか?」


「おっ、どうしてそう思うんだい?」


「い、いえ。逆なんです。普通、こうスプーン曲げとかトランプだけとかある程度統一感がありそうな道具を使うのに、ベッケンさんは色々なものを使っている印象が」


「あぁ、なるほど。俺がしているものは全部国名がついているものなんだよ」


見習いは首をかしげる。


「国名です・・か??」


「そう。この映像の・・・これとかメキシカンロープ、これはヒンドゥーペーパーミステリー(ブッダペーパー、アラビアンペーパー、インドペーパー等々)チャイニーズステッキに、チャイナリング、、ヒンドゥーヤン・・・・チュウカセイロに・・・」


「じゅ・・・呪文みたいですね」


「考えた人の名前が不明だから・・・このマジックで有名な国や地域の名前をつけとけってことなんだろうけど、中国とインドは一緒くたになってる印象があるなあ」


ベッケンは軽く伸びをしながら動画を見る。


「ふむふむ・・・とりあえずは昔すぎてわからないと」


「恐竜の化石とかと同じでさ、なんだか昔のものと触れるとその時代の人の考えや時代にいったことを想像して楽しめるというかさ」


「確かに!」


「まぁ。出版ブーム時に出された本とかは裏を取らず、誰かが言っていた気がするなあ、で本に書かれているだけのものもあるから、それに・・・忘れられないよう、忘れられるってことはとても辛いことだと思うんだ」


見習いはベッケンの顔色をうかがう、が、すぐに笑顔で返す。


「ベッケンさんは忘れられませんよ、こんなにも凄いんですから」


見習いの返答に対し、ベッケンは真面目に返す。


「一時的な人気やブームじゃダメなんだ。・・・ダメは語弊があるかな」


見習いは気を使い話題を少しだけ変えようと手を叩く。


「あっ・・・。本と言えば、巷では最近頻繁に表れる、天才少年天才少女ブームの現実から目を背けるために、ベッケンさんから始まった昔の映像美に現実逃避する中年達、なんて嫌な書き方してる週刊誌の記事ありましたよ」


その声に監督は鼻で笑い、見習いに手を出し飲み物を要求する。


「天才が多く排出される孤児院ねぇ、ベッケンが好きそうな話だわな、もう行ったのか?」


「・・・。・・・それよりもうすぐ収録再開じゃないのか??監督」


「おわっ、しまった、準備してくるわ。新人、早くテーブル等用意しろ」


「は、はい!」


見習いが場を後にするのに続き、ベッケンも化粧直しを口実にこの場を後にした。


監督は手にした飲み物を酒のように飲み、ベッケンが元いた場所を眺める。


「人懐っこいよう、作られた演技にしか思えないんだよなぁ。いやぁ悪いやつかと言われたらそうじゃないんだろうけど、淡々と何かをこなしていく様は・・・・熱の無いロボットだな」


監督は揺手にした飲み物を揺らし、ゆっくりと最後の一杯を楽しんだ。

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