135.自称パズル作家
松本はふと我に返り厠のほうを見る。
「ああ、なんだかぼぉーっと・・・していた気が、信さん?」
「ちょ、ちょっと寝てたんじゃないかな?つ、疲れていたんだよ」
松本は改めて厠を一周する。相変わらず干渉はできそうにない。
「ヒントになるから話をしに行けって言われたけど、これじゃあ何も見えやしない」
「ぼ、僕はラジオが好きだから、音だけでも十分だけどね、で。君は今相方を有名な手品師にしたくて、宗教や占い、色々を学んでいると・・・・」
松本は腕組みして座り込む。
「ヒデさんに企画書というか、おおよそのフォーマットは見てもらったんですが」
「どれどれ、拝見」
厠から出てきた色白の手が汚れたノートを丁寧に受け取る。
「なるほどねえ。淡白なんだね。盛り上がりに欠けるのと、あとは定番を入れることだね」
「定番?ですか?」
「こうなるんじゃないか、やっぱりそうだ、っていうお約束って大切なのよ。で、そのお約束は骨組みは同じで時代に合わせて変わってはいるけど」
信の話に魅了されたため、ふといつものツッコミを忘れていた松本。
「ってあんた、普通に喋れるんかい!」
「え、い、いや。こういう話だと、た、の、し、いからさ」
「その喋り方、うさん臭くなってきた、そもそも特技と言いますか、本業?と言えばいいですか、なんなんですか?」
「う、うーん?仕事かぁ、まぁしいて言えば」
「パズル作家?」
松本は深呼吸して厠の前に正座する。
「大先生、どうぞご教授くださいませ」
地面に頭をこすり付け、拝み奉る動きを繰り返す。
「き、君だってさっきのツッコミと言い、キャ、キャラクターがよくわからないよ」
「はは、よく言われます。前世は漫才師に憧れていたお笑い好きとか?」
正座の姿勢からカバンに手を入れ、スマートフォンを取り出す松本。
「そ、そこはプロの漫才師だったって言わないこと、が謙虚というかなんというか。あ、それはアレだね、話に聞いていた最先端機器だね」
「どこから見てるんすか。最先端って、もうかなり経ちますよ、えーっとパズル作家・・・」
「お、表に出て活躍しているパズル作家の何人かはライターの延長で物書きさんだけど、ぼ、僕は裏でこそこそやるタイプだから調べても出てこないよ」
「なーんだ有名人じゃないのか」
「あ、ある意味で有名だから、この厠にいるんだけどね」
「まぁそうでしょうね、例えばなにしたんですか?」
「うーん?例えば??ミステリーサークルを木の葉っぱで作ったり、洞窟の岩に特殊な穴を開けて風が通ると女性の声に聞こえるようにしたり?あとはねじれた木や草、あれはよかったね。比企田山の恐竜とか?」
「手品やゼンマイからくり、映画とはまた違う表現方法・・・・って比企田山の恐竜??!」
「そ、そう、あれ、た、大変だったんだ。まずは大きな動く謎の物体を見たという証言を流行らせるところからスタートして、皆に浸透したあたりで恐竜の声を、で、尻尾を引きずったようなあとを池までつけて」
「まぁ、なんとなくわかりました。人を怖がらせることをして世の中を混乱に陥れた」
「よ、よしてくれよ。嬉しくないよ」
「褒めてねえからな!」
厠の中から写真が数枚落とされる。
「び、美術品の贋作作りと似ているかな、途中経過を一切バレないように、間違えた解釈をするようなトラップも入れつつ、なおかつ発見者が偶然を印象図けて・・・」
「うーん。。そう言われると悪いことしていないようにも聞こえるか。。これなんて有名じゃないですか、突如現れたオーパーツ。周りに足跡などなくって話題になっていましたよ」
「こ、これ、良く撮れてるでしょ。1個目は本物で2個目からの目撃されたものは張りぼてで軽いものなんだ、話題になっている間は見ただけで1個目に発見されたものと同じと思ってくれるから、楽なんだ。念入りに調べたアレと同じって具合にね」
「じゃあこの鉄?みたいなオーパーツに海水のような不純物がってのも」
「わ、わざと、海水にちょっと混ぜた水をかけて、放置しておくと、山で見つかったら勝手に海を連想しちゃうでしょう?正反対のものが共存しているのは神秘的なことだと思考をだね・・・」
「それも時代時代でニーズを取り入れて作っているんです?」
「か、過去の神秘みたいなのが流行ったら、ミイラとか作ったり、オーパーツも同じように見えるけどオーバーテクノロジーがあっただからまた系統違いかな、カメラが流行ったときは心霊写真を作ったなぁ、ふ、不可能物体オブジェは楽しかったなぁ」
写真を見比べつつ、松本はどう手品に活かせるか考え始める。
「し、仕掛けはある程度で、先入観や世の中が受け入れる体制ができていればいいんだよ。信じないやつがおかしいって具合さ。そうすると専門家が調べたところで、これは自分が信じているものだから、信じたいものだから多少の違和感は気にしないでおこう、ってさ」
「うーん。。でもそれだと時間がかかることなんですね、今からするとなると・・・」
「か、貸してあげるよ」
「へ?」
「貸してあげるよ、出来上がってるもの、比企田の天在」




