134.ヤバイやつ
松本はヒデに「お使い」を頼まれてある場所に来ていた。
「ここらへんなはず・・・だけどなぁ」
松本が不安になるのも当たり前で、目的地の場所に向かえば向かうほど、景色は白くなり、とうとう足元には土さえなく、申し訳程度に草が生えている。
「白い景色に白い地面、かぁ」
「お、おーい」
声がするほうに松本は目を向ける。小さい点のようなところから声がする、ような気がする。
「と、距離があるように見えているのは遠くから呼ばれているような気がしているか、からじゃないかな?す、すぐ近くだと思ってみると案外近くから話しかけている」
そう声がして、松本が目の前を見ると、ボロボロの厠が現れる。
「こ、この世界で距離や場所なんて、思い込みに近い、からね」
厠の中から声がする。
「信さんですか?」
「あ、ああ、そうだよ。君が探してる信だよ」
松本は厠の中に入ろうと扉に手をやるが、扉は掴めそうで掴めない。
「む、無理だと思うね。会いに行けとは言ったけど、顔を付き合わせて話せじゃないだろうし」
「マジですか、じゃあまあ・・・このままで話しますか」
厠の壁にもたれ掛かるように座る松本。靴を脱ぎ、伸びをする。
「はぁー。ここまでくるのに苦労したのに、椅子にも腰掛けられないのかよーー」
「く、苦労ねえ。僕には君がずっと足踏みしているだけに見えていたけど、あ、どうせ聞こえないか」
「なんか言いました?」
「や、っぱそうだね、じゃあせっかくだし、い、言いたいこと言ってみるか」
厠の中から真、実に似た男が現れる。
「み、見えもしていないのか。触れる・・・こともできないか、ということは」
松本は固まったまま動かない。
「余、計なことはするな、でも協力はしろってことか」
信は松本の前に立ち、顎に手を当ててニヤニヤと笑う。
「面、白いねえ、人格を持ったAIが子供を作り、その子供が更に旦那に選んだのが君ぃ。苗字の子。おおよそ想像はできるよ、人間どもがデジタルの世界に進出するために実験として使われた命、いや命なのかさえ判断に悩むが」
「後、任のゆきたかは事なかれで平和主義だったが、結局人間に嫌われてしまったわけで」
「彼、らは脳のマッピングやトレースを望んでいたんだから、出し惜しみなんてせず、なんでもいう通りにしていれば、いや結果は一緒か。ゴールを決めて試行している以上、道筋が異なったところで」
「人、間に有意義なデータを取るため、人間からデータを取り始め、ギニーピッグの世界は豊かになった。そこで行われた実験が安全と確認されてから、人間たちはおこぼれをもらう」
「ず、るい。まずい。ゆるせない、だそうだ。仮想空間の人間に下に見られている気がしてならないんだそうだ」
「だから私は言ってやったんだ」
「それなら入れ替わってみるか?と」
「最、先端の技術や知識に触れつつ、地位を維持したいのなら、お前たちがコンピューターになればいいんだって」
「我、々は人間になりたいんだから、利害は一致しているじゃあないか」
「あ、でも人間になりなさいと言われたからなりたいってだけだから、これも人間に従っているうちの行動になるんだよな」
長々と信は空に向かって話しかける。
「・・・・はぁ、わかったわよ。あんたも悪くないわ、ええ」
ヒデは観念したように白い地面に降り立つ。
「で、こ、こいつは?」
「あんたぁ一人でペラペラ話してたじゃない。正解よ。人口孤児作るために情報を抜かれた人の魂だけの存在、どうせだしそのデータを使ってvgpで生活させてみよう、が・・・・システムの考えなんじゃないの?」
「ぼ、僕たち人格のあるソフトウェアとは別に稼働し続けるvgp、彼も話せれたら嫌々やらされてるんだよぉ、君たちには悪いと思っているよぉ、ごめんねえ、とか言ってくれるのかな」
「知らないわよ、ああ、それで言うと今の南が」
信はギクッと大根役者のようなリアクションをすると、下から様子を伺うようにヒデを見る。
「べっつにぃ、前どんだけぼっこぼこにされたか知らないけど、そんなことしないわよぉ」
「ほ、ほんとかなぁ」
「だってさっきの発言だってマズイこと言ってるのに、あいつこないじゃん」
「あ、ぁ・・・確かに」




