133.消滅
少しの時間が経ち、たかゆきは辺りを見渡す。
「いつの間にか、こんなにも仲間、家族が増えていたんだな」
ラーメン終わりに差し入れされた無数のドーナツ。穴に人差し指を入れたたかゆきはそのまま、ゆきたかと会話を始める。
「いつかした、独我論の話を覚えているかい?」
ゆきたかはニコニコと笑顔で頷く。
「もちろんですとも、あの話はこの世界の根幹になるシステムにも通ずる話、唯我論とも言うようですな」
誇らしげにゆきたかは世界全体を指差すよう、両手を広げてみせた。
「自分が認識する世界以外は存在しない、させないようにすれば処理する情報は非常に少なく済む」
「背中を壁につけたとして、壁にもたれ掛かっている感覚さえ体に感じさせれば、背中の後ろにあるものは何もなくてよい、振り返るという命令が脳や体に来たら背中越しの壁を目や脳に認識させる」
「作った本人がいうのもなんだが、見えているから触れるからソレは本当に実在するものなのか、実在しないものをあるものとしてあとから補正されて存在しているのか」
ゆきたかは悩まし気にたかゆきを見る。
「この手の話は実や真としてほしいですな。とは言え、あるのかないのか議論するのは楽しいですが、明確な答えがあるものではないでしょう」
「・・・いいや、俺から見たら、この世界はデータでしかないから存在しないんだよ」
「データを物質ではないと言われると人の記憶も同じようなものですな」
「確かにな」
たかゆきは座っていたテーブルを人差し指で押す、たちまちテーブルは音も光もなく消えてしまう。
透明なテーブルにひじをついていたゆきたかは遅れて消えたテーブルからひじを外す。
「ひとよりもひとらしくなったお前に問う、お前が死んだ場合世界は消える、ここにいる人たちは消えると思うか?」
「わたしが作ったから存在しているモノは残るかどうか、・・・ですか。私の世界は終わってしまいますが、あなた方の世界は続くでしょう」
「なんだそのなぞなぞみたいなものは」
「言葉通りの意味ですぞ」
妙な沈黙が流れる。先に口を開いたのはたかゆきだった。
「ソフトウェア同士の恋愛、結婚、出産。前例がないことだからな」
「つまり判例になるわけですな」
「・・・・」
ゆきたかの顔の前に手をやり、少し躊躇した手がおもむろに左右に揺れる。
数秒経つとゆきたかは消え、足元には明子と明恵の写る写真だけが残った。
たかゆきの耳にどこからか男性の声が聞こえる。
「やりました!とうとう我々を苦しめた、諸悪の根源が消滅致しました。生放送でご覧になられた視聴者の皆様、我々は勝ったのです、それは今後の展開については専門家におつなぎしようと思います」
「今後の政権運営、経済ともに安泰と言ってよいでしょう。何故ならシステムを私物化していた人間もどきが消えて、純粋なシステムだけが残ったのですから。これからは機械を人間に近づけようなどという神を冒涜したような・・・・」
たかゆきはある程度の会話を聞き終えると小さく勝利の握りこぶしを作った。




