132.パーティ
「大将、さっきの醤油ラーメンお替りで」
たかゆき(南)はビール片手にどんぶりを大ちゃんに突き出す。
「待ってるだーぁよ、次は背油チャッチャの京都系醤油ラーメンじゃあなくて、徳島ラーメンにするだぁ」
「徳島ラーメン?!」
「んだ、醤油ラーメンも豚骨ラーメンと同じぐらいご当地進化をしてるものがあるだぁ、生卵が入ってるだぁ、チャーシューも独特で豚バラが添えてあるからか味付けも相まってすき焼きみたいなんて言われてるだぁ、カレーと肉じゃがの歴史はさっき話しただぁ?ここらへんで鍋料理+麺のラーメンが登場してきた可能性が高いだぁよ、彩華ラーメン系もそうだなぁ、鍋料理のシメに麺を入れていたものとうどんや素麺から派生したものとが・・・・」
「あー、はいー、うーん。はい、わかります。おっしゃるとおりで」
たかゆきはニコニコ笑顔でどんぶりを揺する。
「おらぁ、こんなに褒めてもらえて嬉しいだよ、料理の歴史、こんなに詳しい人同じ趣味の人に出会えたのも初めてだあよぉ」
厨房にウキウキと戻る大ちゃんをゆきたかと白井は白い目で見送る。
「いやぁ、ほとんどあの大柄な人が一方的に喋っていただけな気がしますが。。。なるほど、あれが私も昔使っていたレシピなどの」
「あぁ、ネット上にある料理系のデータベースの集合体、って感じじゃな。食は衛生学、ひいては錬金術、練炭術にも精通する大事な学問じゃな」
「私も外国で水が飲めなくて苦労したことがあります。飲み水が駄目で、スープや果実でのどを潤したことも」
「人間だけじゃなく植物も同じで、とある地域の植物を日本の水で育てようとすると育たなかったりすることもあるからな」
白井とゆきたかの前を上下左右に奇妙に揺れる人影が横切る。
「あぁー酒を持ってこい酒ぇ」
「大将、酒でーす酒ー」
真と明子は仲良く肩を組み合いながら、絵にかいたような酔っ払いの姿でたかゆきの前に座る。
「ゆきたかの話は半信半疑だったがぁ、確かにいい男だなぁ、真」
「あぁ、さすが俺らの創造主様って感じでぇ、えす」
白井は苦笑いをしつつ、声を小さくゆきたかに話す。
「登場から不信感、和解を通り越しての親友みたいになってますね」
「う、うむ。まぁ自分で作ったプログラム相手だからツボも熟知されているのかもしれない、自分と話しているようなもんじゃろうし」
ゆっくり席に着くゆきたか。白井も隣の席に座り話は続く。
「・・・平和なのは良いことですからね。そういえばさっき話に出ていた松本?ですが」
「あぁ、推測じゃがヒデの話だと生殖器なし、アンナ(アンナチュラル)の君ら人口孤児と同じタイプだとは思うが、なんせ苗字を名乗っているからな」
「そんなに個体名にこだわりが・・・??」
「製品番号や抽象的な言い方でしか呼ばれたことのなかった我々らしいこだわりじゃろ??」
「はっは、皮肉ですね、それは。私たちのほうが今や製造番号で呼ばれているようなもんですよ。鈴木の誰かをよこせとか」
「・・・・・」
ゆきたかは腕組みしたまま考え込む。
「人間が機械に近づき、機械が人間に近づいてる。君らは生きている、部品なんかじゃない」
「・・・っはっは。あなたは本当に今いる人間より人間らしいかもしれませんね」
ゆきたかは椅子にもたれ掛かりながら伸びをしてあくびをする。
「はぁー。。誉め言葉と受け取っておくわい。」




