131.急な展開
真はこの世界が崩れていく様を目で確認できている。夢部屋での鍛錬でもあるが、感性を磨いた証でもある。さっきと同じ風景が映し出されていても書き直された風景に違和感を見つけられ、その違和感からつなぎ目を掴むことが出来る。
「・・・・まったくわかりません」
「そうじゃろ、普通。故障しかけとは言え、入れ替わっていく風景のデータの切れ目に手をひっかけたり踏んでみたり、お前らが掴んだりするから世界の寿命がより縮んでいっている気さえしとるのに」
「隙間に手を入れて本来そこにはないものを呼び出してきたり」
真はポケットを叩き何かを示す。
「な?馬鹿じゃろ?普通するかね。しかも素手で」
ゆきたかは呆れてため息を出す。
「いえ、さすが先生と言いますか、しかしどうしてそのようなことを試そうと思い立ったので?」
「おい、インタビューアーみたいなことすな、真もニコニコすな」
「世界が作りもんだと知ったときから・・・だな、なんでもできそうな気がしたし、できそうにない気がした」
「おお、今のはメモしておきます。本にしてください、本に」
興奮する白井を見て真はふとある人物を思い出す。
「そういや、お前松本ってわかるか?そう名乗っていたが」
白井はきょとんとして、自分の中にある松本を思い出し始める。
「あー、いや。いいや。おそらくお前って技術が進展した方法でここに来れたんだよ、だから記憶も自我もある」
「・・・・そうじゃない人がいる、来ていると」
「・・・・結構前からな。自然発生したモブではない、外部から来たと思わしき人物たち」
ゆきたかは腕組みしながら足を揺らし貧乏ゆすりをし始める。
「vgpに質問する前から秘密裏に電脳化のテストをしていたようだな、捨ててしまっても問題ない命を使って」
「おやじさん、怒ってる?」
「そりゃあ、・・・・そうじゃろ。わしらが回収できて治療できたものは助けて何も知らず生活しているが、記憶を呼び戻す訓練をしていいものか」
「・・・・ってなわけだ、白井。せっかく或る記憶だが、全てなくして生まれ変わりたいなら。『そういった処置』も可能なわけだ」
「・・・・・」
酷く思い空気の中、小さな鼻歌が部屋の外から聞こえる。
3人は不審に思い・・・・真に至っては白い手袋をはめ、壁に背中を貼り合わせる。
「ちょっとやめてよ」
「いいじゃん」
漏れ聞こえる声にゆきたかはハッとする。
扉がゆっくり開くと、南が一人で手を振って立っていた。
「こんにちわーゆきたか、他の皆。たかゆきでーす」
「ちょっとやめてよ、勝手にしゃべらないで」
「じゃあ喋るとき手をあげるから、このマジ、マジのマジ」
「うるっさいなあ」
一人でそわそわする南。壁に張り付いたままの真。立ち尽くすゆきたか。
白井は久しぶりに大声を出して笑ってしまっていた。




