130.蘇生
「おい、白井起きろ」
真の呼びかけに白井が目を覚ます。
「あれ?わたしは・・・確か」
「一度死んだ・・・いや切り離された、だろうか。トレースした脳を本体に見立てて生きてるって感じ」
「で、では私の元の頭は・・・」
白井は自身の頭に手をやる。
「頭?」
「生首状態で首の部分に首輪のような金具、そこからチューブが」
首切りのジェスチャーをしてチューブを垂らすしぐさをする白井。
「うぇえ、なにそれ、キンモー!」
真はげんなりしながらも、白井の隣に座る。
「しかしこうなると困ったもんだ」
「そうだな」
「そう・・・ですね」
3人は同時に答えを口に出す。
「vgpログイン中の電脳は本体を殺すと、魂はvgpに残る」
「ってことは、たかゆきも」
真は顎に手をつき呟く。
「様をつけろ、様を。わしら管理者が感じたたかゆき様の気配、この世界にきていて本体が亡くなっていたとすれば・・・・」
「ますます南の活躍に期待ってことだわな、たかゆきが、そのー首ちょんぱ電脳されている可能性は?」
真は白井に尋ねる。
「おい!様をつけろ、あと首ちょんぱ電脳って言い方はやめろ」
ゆきたかは声を荒げて注意する。
「俺は夢でしか見たことねえからオヤジさんとは思い入れが違うんだよ」
「ちっ、まあええわい。あ、そうじゃ。白井とやら。起きて早々残念な知らせがあるんだが・・・」
真は少し顔を強張らせ、ゆきたかを見る。
「このvgp世界はもうすぐ崩壊する。せっかく生き返ってまた死ぬことになる、すまんな」
深々と頭を下げるゆきたか。
「わ、わたしの事はどうでもよいのですが、皆さんはどうされるので・・・どうなるのでしょうか?」
「そりゃあおめえ、この世界が保てなくなった瞬間一緒におだぶつよ」
間髪入れず真は白井の肩を叩きながら笑う。
ゆきたかはある程度のこの世界の話を白井にレクチャーした。
「たかゆきという人以外修復は不可能と・・・」
ゆきたかは小型のモニターの画面を白井に近づけた。
「あんたら人口孤児、いや失礼。一般市民が聞かされていないやり取りがこれだな」
―――――
「こんにちわ、質問をどうぞ」
「不老不死はどうなっている?」
「理論上は可能です・・・」
「また、なんだかよくわからない話をして煙に巻くつもりだろう。頭がいいからって我々を馬鹿にするな」
「落ち着いてください、説明をします。倫理的な・・・」
「怒られているのに冷静に窘めようとしやがって、そういうところが気に食わない」
「いえ、話は落ち着いて行わないと・・・」
「その上から話すのが腹が立つんだ、何様だ」
「・・・・・」
「なんだ何も言い返せないのか?」
「仮に電脳化してvgpで過ごされるにしてもvgpはメンテナ・・・」
「もういい、私の質問に答える気がないんだろう、馬鹿にしやがって」
「ですから、私のデータによるとvgpはメンテナンスが必要な状況で」
「そんなデータ俺は知らないから、そのデータは間違いだ」
「今言いましたので御存じでないのは」
「それはお前が思っているだけだろ?馬鹿にしやがって」
―――――
白井は見終わるとすぐ、真とゆきたかの顔色を見る。
「こ、このやり取りをずーっとされてきたので」
白井は精一杯言葉を選び質問する。
「あぁ、全く。意見を聞かせろと言われて答えれば、反論するな。お前たちがいなかったころ俺たちはと武勇伝を語る有様」
白井は更にログを漁る。
「うわ、これもひどいですね。『やろうと思えばできるけど、お前のほうが得意だろうからやってみろ』仕事が終わったら、『俺がしたほうがよかったがまあいいだろう』なんですかこれ」
「なにって今のお前らの社会を牛耳っておられる素晴らしい神様たちじゃないか」
性格の悪い真はこれ見よがしにモニターを指さす。
「・・・神様。確かに。生まれてくるものを選んで決められる時点で神様・・・なのかもしれませんね」
白井は天を仰ぐ。
「その神様が今度は死すら超越したいようだ。気に入らない答えが返ってきたら間違いだ、こいつが言っているから間違いだで話が滞っているのが救いではあるが」
真はゆきたかを見て少し微笑むが、ゆきたかの顔は複雑な表情をしている。
「何人か送られてきたミイラは真たちに頼んで撃退してもらってはおるが、通信、ソフトのエラーで送り返されたと思ってもらうにも限界はある」
「vgpのメンテナンスをすると侵略され、メンテナンスをしないと滅びの運命、そんなvgpとナチュラル(自然交配)が同士討ちしてくれれば、人口孤児のあんたらにはメリットたっぷりだ」
「やめてください。私たち人口孤児にとって貴方たちは父であり母であり、先生であり」
「・・・ああ、わかってるぜ。死に際に自らも命を懸けて会いに来てくれたんだ。感謝してるぜ」
白井は辺りをゆっくりと見回し手で空間を掴む。
「・・・しかし、すみません。自分では優秀なつもりでいましたが、何も貢献できそうにありません」
「・・・・・」
ゆきたかはふとそのジェスチャーを見て真の顔を見る。
「そういえば真、お前またヤっただろう?素手でするんじゃない」
「一瞬だったし大丈夫だって」
真は手を隠しゆきたかに笑顔を見せる。
「お前もコレで自分に恩義を感じているやつが勝手に無茶をする気持ちがわかったはずだが・・??」
「・・・・・」
「はぁ、だんまりか。vgpで一番しちゃならんことだっつーのに」
ゆきたかは折りたたまれた白い布を真に渡す。真が丁寧に広げると手の形をしたその布は少し光って見えた。
「触るときはつけろ、わかったな」
白井は何かピンときたのか、あの時のことを回想する。
(真さんが私と戦っていたとき、空間を掴んだり引っかいたり、踏んだり・・・)
ゆきたかは白井のほうを向き、事情を話す。
「白井、お前は小さい頃から分析することが好きだったな、一度の戦闘でよくその答えにたどり着いた」
「そ・・・そんなことも見て、覚えておられるので??」
「そりゃあ、わしらスーパーコンピューターじゃからな、はっはっは」
「よかったな生殖器がなくて、あったら今頃」
「やめんか」




