128.ファン
「なカなか面白いものを見ました」
路地裏のゴミ箱から白い影がヌルりと這い出てきた。立ち上がるとすぐに、白い長身の影は自分の体を叩く。
「えーっと、おそらク・・・2000年あたりの日本の秋の服装で」
白い影の顔から下にペインティングのように服が現れる。
「さらりぃまん、といウものでいきましょう。顔はお任せで」
町の建物のガラスに移る顔をまじまじと見る男、店の中の者は不審そうに見る。
「ああ、イけません。もう見えているのでした、さて。名前は白井で、はは。これでいきましょう」
白井は街をゆっくり歩き始める。壁に触れ、地面の土を蹴る。土がズボンの裾にランダムにかかる。
かかった土を払えば勿論、ズボンには規則的ではない汚れが付着して、地面に土が落下する。
「素晴らしイ。これを基礎は一人の人間が作ったという、信じられません、先ほどのガラス映しの私の顔。私の顔から推測して絵をトレースしているのでしょうか、それにしても反応速度が」
白井の横に同じ歩幅で歩み寄る男が一人。
「光が目に届き、脳が映像化して表情を変えたことを認識する。しかし、その光を超えるスピードで私は表情を変えるという指令を脳に出したことになるのか、指令を先に脳が受け予想した映像を流して、本当に見えた映像を付け加えて補完しているのか」
「やレやれ、忍者さん。わたくしあなたのような知り合いを持った覚えはありませんよ」
「おやおや白いお方、私は忍者の姿はしておりませんがなにか」
金髪のボサボサが髪をかき分けながら珍しいものを見るようにさらりーまんを見る。
「研究者としてね、惜しいのでスよ」
「ほう??命がけで潜入する価値ありと??」
「自分で見テみたかったのです、この世界を」
白井はジャケットの内ポケットから小さな書籍を取り出す。
「秘伝うんこカレー」
「このうんこカレー。非常に奥深い。見た目にだけとらわれず、目隠しをしてカレーと思えば、カレー味のうんこはカレー、しかしながら、うんこ味のカレーはうんこになる。しかし、これはカレーにうんこの味を足したのであって、元はと言えばカレーに違いない。ならば、我々は何をもってカレーに価値や存在意義を・・・」
「はいはい、サインするから静かにね。いい歳したサラリーマンが道端でうんこうんこはよくありませんねー」
珍しく焦る真。
「あア、すいません。ファンなもので」
「で、なにしにきたんだ?」
白井は突如、涙ながらに伝える。
「もう、手遅れに近いノです。死の雨が降り・・・・」
真は白井の倒れ込む体を支える。
「死んだ・・・いや。とりあえずオヤジさんのところに連れていくか、」
白井の手に握られた本に丁寧にサインをした真は白井をおぶり歩き出した。




