119.ゴースト
「ゴーストインザマシン?!」
松本がヒデにニコニコ近づく。
「いや、あんたと実は車直す相談で忙しいんでしょ?」
「ゴーストインザマシーンとは、デカルトが心身二元論・・・」
ヒデの手が雑に松本の額を覆う。
「ねむりなさい、ったく。あの村に勝手に集まるやつはどうしてこうも講釈垂れが多いのよ」
「はっは、ほんそれっすよ。乙女の会話の邪魔すんじゃねえっすよ。まぁでもパイセンが一番力を入れていた村ですから、もうね、みんなそっくりっすよ」
ヒデの前で膝を曲げつつ立ち直す松本。
「ヒデさん、俺りゃぁ負けねえぜ。このウンチクを言うまでは決して」
「呆れたぁ。バッドボーイ。それより帰りの車の心配しなさいよ」
「あの車修理してもまーたゴリラが破壊しちまいますよ!」
松本の背後をちらりと見てヒデはニコニコ話す。
「ふぅん。まぁその耳のいいゴリラ、悪気はなかったんだしあんまり悪く言うと・・・あ、もう遅いか」
明子は松本の股間を鷲掴みする。
「陰口とは男としてよくねえな。松本ぉ」
「いてて、なんすか。一応あんたの娘の旦那なんすよ俺」
明子の手を払いのけ、松本は冷静になるよう明子に掌を見せつけ宥める。
「・・・・それだけ??」
「それだけ・・??って??」
「いや、男だともっとこう悶絶して苦しむから楽しいのに・・・・」
「???」
「ついて・・・ないのか」
「??」
明子にヒデは近寄り小さい声で話す。
「もうやめときなさい。生まれたときから変なんだなんて言われて嬉しい人なんていないじゃない、だってそう出来上がってしまったんだから」
「エラーか?」
「いいえ、途中で変えられた可能性もあるし、最初からかもしれないし。管轄外よ、ソーリィ」
「ちっ、気に食わねえな」
明子は松本を実のほうへ行くよう促す。
「神様の話?」
「ああ」
「・・・・・・。・・・・・はぁ。わたしは長旅で疲れたしあんたたちはドーナツでも食べて頂戴な。グットラック」
無言のまま俯きつつも、ヒデを見つめる明子はまだ何かを言いたそうだった。




