117.ヒデ
「曳家ってやつですね。。昔はお城を移動させたりもしたそうです」
実は感心しきって眼鏡を整えた。
「いや冷静ですね相変わらず!」
松本は実の感心に感心する。
「テレビ局はいくらなんでも移動させられないからぁ、中継車の代わりにもなるし私の編集会社をそのまま移動させてるわけ」
「ぎゃはは、ヒデちゃん相変わらずぅ!」
明子とヒデは陽気にハグを交わす。
「待てないから来ちゃった!」
自分の頭をコミカルに自分の拳でコンッ・・・と舌を出しながら松本を見るヒデ。
「家ごと来る奴があるか!!」
松本の大声に冷静な顔をしながら、頭に拳を乗せたままヒデは答える。
「マップが・・・あ、いえ、最近県が消えるのが早まっているでしょう?逃げるようニュースをバンバン流しているけど、完ぺきではなく駄目ねえ。命令と取られないような言い方でいくつか試してはいるけれど・・・」
「ヒデちゃん急にまっじめえぇ」
明子はそういいつつ、自分も冷静な顔になる。
「松本は・・・同じかもしれない。その、逃げない人と。でも好きなものがあってそのためならとついてきた」
松本に近づき、じろじろ体を見るヒデ。
「ふぅん。モブってるわね」
松本の額にヒデは手をやる。
「眠りなさい」
松本は気づくと群青色の世界の中にいた。
「あれ?俺また寝て、あの夢の世界に来てるのか?」
とりあえず松本は己の感で天地を整えるよう泳いで見る。
「いいわねえ。まあ初めてじゃないんだしそれくらいできないとね、お姉さんガッカリしちゃうわ」
少し響いたように聞こえるヒデの声。
「ああ、ヒデさんの声が聞こえるけど、あれ?ヒデさんって誰でしたっけ」
「さっきあったばかりよ、明子が連れてきたんですし、巻き込みたくはなかったけれど見せるわよ」
少し時間が経ち、松本は目覚める。
「よかったです、ああ、よかった」
心配そうにする実の顔。松本は何かを思い出そうとする。
「だめよ。まっちゃん。夢日記って知らないの?夢を思い出してメモしたらロクなことがないんだから。まあこれであんたはひとまず大丈夫よ」
無意識に体が動き、かしこまりひざまずきながら礼をいう松本。
「あ、ありがとうございました」
ふっと我に返り立ち上がる松本。
「ってなんのことかわかんねえよ!」
「あらまぁ、強い自我、これは点数高いわね。明子がテレビで売れてお金を稼いでお母さんに褒められたい、というか村のこと忘れて私をもっと見てほしいって言ってたことを・・・」
明子の綺麗な往復ビンタ(3回)が決まり、ヒデは倒れる。
「ほら、実さん見てください。あんな強烈なのを浴びても鼻血出てないじゃないですか」
「本当にそこかい、ツッコむところは。。。」
「マ、マンマミーア!」
オーバーリアクションで目覚めるヒデ。
「あんたやってくれたわね。一応私えらいんだから!!全然痛くないけどぉ!」
ヒデは起き上がると鼻の下をハンカチで拭った。
「あ、今さら鼻血出ましたね。メモしておこう」
「まっちゃん冷静!」
指を松本に指しポーズを決めるヒデ。
「うぜぇ」
「やだ、うぜぇなんて。ってあんたどこかで見たことあると思ったら奇術協会のとこの」
「あー。もういいんす。俺は継ぐわけじゃないし」
「ふうん。まぁこんな状態じゃFISMどころじゃないし、あたしゃどうでもいいけど、で。明子なに?この子に会わせたかったってだけじゃないでしょ?」
明子は1枚の写真を手渡す。
「知り合い・・・だろ?」
サングラスを外したヒデは写真を受け取ると顔をこわばらせた。
「明子、あんたのとこをこの・・・人が尋ねてきたって」
「そうよ」
「で、私と関係があるって・・・感?」
「感よ」
ヒデはため息をついて空を見上げる。
「いい感してるわね、あんた。占い師に戻りさないよ」




