115.壺
数日経ち、松本は真と実三人で例の場所へ来ていた。
「これが里で大切にされていたという壺・・・ですか」< 90話.うん>
部屋の壁や床は丁寧に掃除されているため、部屋の中央に置かれた汚れた壺はより場違いに思える。汚れの元になっているホコリが誰も長期間手を付けていないことを証明している。
「伝承から推察するに、こっちがペスト、コレラ、寄生虫。中身はもう使い物にならんだろうが、見た目は普通の壺だから、壺を少し削ったりしてただの陶器とわかればいいんだが。なんせこの壺自体が何でできているかわからんからな」
真は不愉快な笑みを浮かべる。
「開けていいですよって命令があればすぐに開けてしまうんだろう。命令がなかったから放置されている、俺らには触れることもできないが・・・・」
真はそういうと松本を見る。
「俺ならなんとかできる・・・ですか」
「可能性としてはな」
松本は壺に触れようとするが、見えない膜に阻まれ壺に触れることが出来ない。
「うーん。明子さんも無理だったし仕方ないわな。悪かったな付き合わせて」
「い、いえ」
二人のやり取りを見ながら実は考えを過らせる。
なんにでも効く薬の開発に利用された村、実験で生まれた保菌者たち。健康保菌を維持するための実の争奪。
実の険しい顔はすぐに緩み二人を見る。
「これが水蜘蛛。忍者が水の上を歩いたとされるもの。しかし実際には水に浮くことが出来ない、何だと思う?」
「浮き輪のようにしたって新しい定説ではなく・・ですか?」
「ふっふ、これに形がそっくりなものがある、それは・・・かんじきだ」
「かんじき?!雪道を歩くための・・・」
「そう、そして近年、江戸時代は小氷期と判明した」
「ま、まさか」
「そう、凍った水の上を歩くアイテムとして水蜘蛛の形状はぴったりなんだよ!」
「おお!さすが先生!その推理、根拠は」
「ねえな」
「ないんかい!」
「根拠がないのは水の上を歩く説も同じだから引き分けだぜ、にんにん」
「まぁ面白かったですけど・・・」
「面白いものが残るから定説になるかもしれねえぜ」
実はまた壺を見る。
まぁ、考えすぎても駄目ですね。それに私の直観だと・・・そう遠くないうちに謎が解けそうに思えます。・・・知らないほうが良かった、そんな答えになりそうで。今のまま・・・が続いてくれればよいのですが。




