112.悪い研究
本日、松本と真は同じ部屋で過ごしている。机に向かう松本とそれを眺める真は家庭教師のように見える。
「だ、大先生もあの中で泣いていたんですか?」
「ま・・・松本にはわからんだろうが、いわゆるストックホルム症候群やリマ症候群、外の影響が遮断された密室で感情を高めた相手に対して同調していくというもの、それの超強力バージョンに思えたぜ」
松本はペンを回しながら
「魔女狩りや村の人全員がいきなり失踪する事件、あと教会で祈っていた人にスティグマが現れてその場にいた人が神の啓示や心霊体験を得る」
「おっ、良く知ってるねさすが俺の読者。感情感染ってやつ。俺らが秘密をペラペラ喋っていたのも・・・信じられんが南の知りたいですって探求心が伝染したものと思える」
「あ、あり得るんです?」
「うーん、平場で何もない状態であんなことは普通起こりえなくて・・・よくあるパターンは悪い占い師が飯も睡眠も与えず、信者を極限状態まで追い込み罵声を浴びせる、これを複数人で共有させる」
「昼の二人を帰らせたのも・・・」
「おっさすがだねえ。目に見えないものは悪いほうに想像を膨らませる、あのときは室内の湿度を上げたんだ。空気が重くなるなんていうけれど、本当に空気が重くなっていたわけ、一人がパニックになるとそれが共有され増幅。感情感染」
「目以外で感じるもの」
松本はメモを取りながら真を見る。真は松本に背を向け何かを準備する。
「そんなわけで俺の研究の集大成がこれ」
真は松本に掌を見せる。すぐさま、松本は立ち上がり壁に背を付ける。
「オーラ、・・・気。なんでもいいや。俺から殺意や恐怖を感じれたか?」
松本は恐る恐る頷く。
「・・・・フェロモン」
松本は確信をもって呟く。
「・・・・マジか。まあヒントは十分あげたし、俺の本読んでたらわかるか、しかし松本よ。このヒントがなければ、お前が俺のことを知らなければ、きっとお前は俺に妄信してしまっていただろうよ」
真はポケットから紙を取り出す。
「これはとある先住民の儀式、刈った獣の血を体に塗る、まぁ感染症の恐れがあるから危険極まりないが・・・・でこれは最新の研究、ライオンの糞を線路に撒いて鹿を遠ざける・・・・」
「香水が人に気に入られるよう研究を進めた結果としたら」
紙を受け取り松本はメモに書き写す。
「そういうこと。悪いほうに利用しようとしたら、人に気を、恐れを与える研究もできちゃうってわけ、俺の手には今、人が恐怖するであろうフェロモンがある」
「あえて毒や強い生き物を摂取して、見えない体臭で発する・・・それを実践していたやつらがいた。・・・なんてあり得ない話でもないのかな・・・ってのが俺の見解だな」
松本は涙ぐみながら真の手を握る。
「やはり先生は最高です!」
「お、おい。やめろ。全然褒められてる気がしない」
「よし、俺も超臭いやつを集めて精製してみます!」
「おいいいい!!!やめろ!!」




