111.GO SOUTH
夢の中、南は一人走り出していた。
「きっと、松本君は3人に・・・違う違う、明子さんに絡まれているだろうけど、ごめんね!いいよ?ありがとう!」
暗闇の中、声が聞こえる。
「なーぁに独り言いってんすか。お嬢ちゃんダメっすよ、これ以上先には行かせないっす」
緑と白が混ざった、クリーム色に近い光る塊が現れる。
「わっ、びっくりした。・・・白い・・・よっ、妖精??」
「・・・・。」
「・・・・・あんた、あっしに会うのは初めてなはずっすよね?なんすか、ラジオみたいに音しか聞こえないとかモノクロだとかワーワー言わないんすか?ってか自分の意志ですぐ眠れたり、夢の中で自由に動けたり、簡単にしてみせるのやめてもらっていいっすか?」
「見えちゃうもんは仕方ないっしょ?しゃーないっすよ」
身振り手振りを交えて南が元気に返事をする。
「真似すんじゃねえっす、まぁいいや支配権はこっち側にあるしぃ、どれどれ」
妖精は南の体を頭から1周、2周、足へ向かい回っていく。
「かぁー。プロテクトがかかってら。まあそりゃそうっすよね」
あぐらをかき座りだす妖精。腕組みをしながらブツブツ何かを唱える。
南はとりあえず暇なので指でつつく。
「あんたぁ、あいつに会いに行って色々聞こうとしてたんしょ?駄目っすよ。3つの意味で駄目っす。ひとつ。あいつにそんな説明能力は皆無だし、ふたぁつ。きっとあんたにマイナスしかないし・・・それに。3つ目、今は他にしたいことがあるんしょ?」
南は妖精の頬っぺたを引っ張りながらうつ伏せで寝転がる。
「自己紹介も説明もできないっすけど、信用してほしいっす、敵じゃないっす」
「うん、わかった」
「はやっ!秒っすね!いや、秒、いやいや、ややこしい。秒っす!まぁその方が時短でいいっす。あーあと、今ようやく見えるようになったんで今更っすけど、人の体を粘土みたいに引っ張るのやめてもらっていいっすか?」
「だってちょーー柔らかいんっすよ?ゼリーとマシュマロの間みたい」
「まじっすか」
「まじっすよ」
南に抱えられながら潰れては膨らみを繰り返す妖精。
「まぁ、ってことでヤクソクっすよ、あいつには会いに行かないでほしいっす。いいやつすぎて考え込んでるし、今じゃないっす。マジ」
「マジ?そのマジ、マジ?」
「・・・・なんかそのやり取り嫌っすね」
「なんで??」
「いや、なんか昔いじられたのを思い出すっす」
「あ、それはごめんなさい」
「・・・!えらいっす!世の中、謝らずに『知らなかった』からとか『皆が言ってたのに私を責めるなんておかしい』『勘違いしたけど、勘違いさせたあんたが悪い』『私は悪くないからあんたが悪い』って言うやつらが多い中っすよ、いやあいい子っすねえ、あ、でもいい子だからって駄目っすからね、ズルしてもわかるっすから・・・ってもういねえ!」
夢の空間に取り残された妖精。
「・・・・・。自分から出ていけるとか、規格外っしょ。それにさっきのプロテクト」
「GO SOUTH、南ちゃんって名前だったすよね確か。行け!南!なんて安易な意味だったらいいっすが・・・・まあ、パイセンのことですし?安易なほうじゃないか。あーダルいっすねこれは」
南が目を開けると悲しそうな顔の松本がいた。
「ちょ、なに?松本君、その顔」
「いやぁ、自分が知らなかっただけで悲しいことってのは教えられると悲しいことなんだなって、俺らは考えているようで全部教えられたことを使った反射運動でしかないから、教えられていないことを悲しいことって」
「もう!!!なにいってるかわからないんですけど!!」
南の目覚めに明子が駆けつける。
「やあ。御姫様?良いお目覚めで。その割には5分ほどしか眠られておりませんでしたよ?本当にただ眠っておられただけなのでしょうか?」
南はきょとんとする。
「南、お前が普通じゃないってことでイライラをぶつけてるんだよ。。」
「・・・普通」
南は泣き出す。
「えっ、うわあ!ちょっと明子さん!南が」
一転、泣いている南を優しく介護し始める明子。
「ど、どうしたの?南ちゃん、ってうぉおおおおお!泣くな!泣かれると何故かこっちも泣きたくなる!!」
―――――
「南、どう思うよ。村の人たちには争いなく普通に暮らしてほしかったのにな」
南は焼けた村の跡に立ち尽くす。
「独り言を言っても、ただ、空しいだけか」
―――――
「何で泣くんだよ、泣くな!泣くな!」
「わかりませんんん、わかりません!」
南と明子は泣き合う。一歩、二歩引いて松本が静かに思う。
他の研究員たちの泣き声が聞こえ始める。か・・・帰りたい。




