107.偶像
「あー。えー。うん。今日はもう遅いし寝るんだな。そのーうーん。寝てまたあいつに会うかもしれないってのは、まあないわ。あいつのほうから1度会いたいって言ってたから、安心してゆっくり、あー。うん。寝るといいさ」
凛とした態度をする明子だったが、素振りとは対照的に化粧が乱れた明子の目元を見て松本は笑いをこらえていた。
すぐに実から「やめなさいあなた、あなたが泣かされますよ?わかるでしょ?空気を読みなさい。ってか私たち皆泣いちゃったから、その説明もしないといけないし、ってか隠れて話聞いてたのってところから話を始めると長くな(略」というジェスチャーを受け、松本は南に先に寝るよう促す。
南が部屋を去ろうとすると、明子が屈み南を抱擁する。独り言をいうように壁のほうを見る。
「本当はやめておいたほうがいいって私は言うべきなんだ。時代が違えばもっと違う評価をされたであろう傾奇者は歴史を見ていると沢山いる。もちろん世界にかかわる変革の時だったから後世に名を残したものもいる、私は違うかったから、悔しくて、でもあんたがここに来てから良かった私じゃなくってって思っていて」
南の両肩に手をやると明子は少し泣いているようにも見えたが、すぐに表情を切り替える、
「ってかあいつが悪いんだ!!黒いローブを羽織った人を探しているでござるよ。あなたからもなにかしら感じたのでござるが、ローブは持ってるでござるか?え?着てたことがあるでござる?!」
「それじゃあなたがこの世界を救うキーマンでござるよ!え、今は持ってない?・・・じゃあ違うでござるな」
「拙者の情報収集で間違いないと思ったでござるが・・・勘違いだったでござるか。誰か他にローブ着てる人いないでござるか??」
「ちょ・・・なんでござるかやめてほしいでござる!わ、わかったでござる。あなたからも何か感じるでござるから、そのぉ、少しずつ話すでござるよ。と、とりあえず今日はもう起きるでござる!」
さすが、一人芝居をさせても見事な明子。初めて夢で「あいつ」と出会ったときの様子を再現した。
「い、一回目なのによく覚えてるんですね」
南は急に始まった芝居をひとしきり見た後、ぴたりと動きを止めた明子に問う。
「ったりまえでしょ!!勝手に呼ばれて勝手に期待されて、勝手に用はありませんおかえりください、いやでも待てよって腹立つから覚えるわ!!」
「は、はは。まぁ神様も切羽詰まってるんじゃないですかね、はは」
「・・・・・カメラで見た。ここに来てからのあんたらのやり取り。あとお母様から送られてきた映像でも見たよ。ギャンブラーズテクニック、それ以外でも古典をしっかり勉強して取りこぼしも無さそう」
「え、あの占いの館、カメラあったんですか?」
南は見られたくないことをしていないか必死に考え停止する。
「研究熱心な婆だよ?癖を数えたり・・・まあ防犯のためでもあるからいつも見てるわけじゃないだろうけど」
南はほっとしているが、すかさず松本が
「屁ぇしててもバレなくてよかったな」
とデリカシーがない発言をして、南は顔が一変する。
「アイドルはオ、オナラなんてしないんです!」
後ろ向きになり、松本を威嚇する南。
「アイドルって・・・お前」
三人のコントに実と真が割って入る。
「いや、まああながちです。あながち南くんがアイドルになるってのも・・・」
「だな。アイドルの意味は『偶像』だからな。あながち」
松本は割って入った二人に泣いた跡があるのを見つけにやにやする。
「こ、こいつ俺より性格がわりぃかもしれないにん」
「いやぁどっこいどっこいでしょ」




