106.味噌
「ああ、忘れてただ、で。味噌の話だぁ。こいつはビタミン、脂質、塩分、ミネラル、アミノ酸、ポリフェノール等、1つの食べもんでこれだけの豊富な栄養を含んでいるものはねえだ。長期保存もできて日本が、アジアが世界に誇る画期的な調味料なんだぁ」
「味噌も傷口に塗ると治る伝承があるのは塩分があるからたまたま効いたやつがいたからとおらは思ってんだぁ。・・・さっきの砂糖と塩の殺菌効果なんだろうけんど、デメリットのほうが大きいからすんじゃねえぞ」
「は、はい」
「おらはなんかあったら味噌抱えて逃げろっていうだな」
「そ、そんなにですか?」
「これだけ食べていれば大丈夫なんてことはねえが、飢えをしのぎ健康を最低限維持するのにはもってこいだぁよ」
大ちゃんはキラキラと光る味噌を丁寧に皿に移す。
「食べ物がねえってのはほんとうつれえだ。なんでもいいから胃に入れろと頭から声が聞こえてくるようなんだぁ。液体を取っても取っても止まらない。食べられないとわかっているもんでも胃に入れちまって空腹を紛らすんだぁ」
大ちゃんの悲しそうな顔に松本も知る知識を話す。
「飢えに苦しんだんだろうなという人の胃の中から石が大量に出てきたり、革製品を鍋で煮て食べたり、食べ物が不作や病気や虫で手に入らなかったとき用にか、食べられる壁で作られた城が日本にあったりもするんだってよ、武器や防具にも干して保存加工した海産物を使用したりな」
南はゾッとしつつも、大ちゃんからのいい答えを期待してか質問をする。
「神様が人間を作ったって言われてますが、もっと食べ物や病に苦労しないように作ってくれたら争いも辛いこともなかったんじゃ」
大ちゃんはうんうん。うんうん。と頷いてから
「おらもそう思ったときあっただが、神様が自分に似せて人間を作ったって話ぃあるだぁ?あの言葉を思い出したときに、あぁ、神様も病気や飢えと戦ってんのかもしんねえなあ、他の悩みごとも神様も解決できてねえから似せて作られたおらたちは解決しようがねえんだな、って吹っ切れて考えなくなっちまっただよ」
珍しく南が食い入るように話す。
「でも、自分たちが辛いってことを作った人間にまで体験させるなんて」
「自分たちが解決できないからこそ、子供であるおらたちに期待してるのかもしんねえぞぉ」
大ちゃんは力強く南の背中を叩く。すぐに頭を撫でる。
「難しく考えることが大事なこともあるだぁが、時間を決めてしないとずっと考えたままになるだあよ?悩みがあったらまず「考える」と「悩む」は分ける。悩むなら決まった時間に1日30分と決めて悩むだ。なんとなくずっと悩むよりいいだぁ」
ハッとした南は笑顔になり大ちゃんと握手する。
「ありがとうございます!私何故か急に悩むようになって。あーでもないこうでもないっていう人が近くにできたからかなぁ、でも悩まないことも駄目だってわかってて」
「おい!黙って聞いていたら俺の批判かよ。これは癖、趣味なの!悩む趣味を趣味が合わないなら一緒にしなくてもいいじゃねえか!お前は俺と合う趣味だけ楽しそうにしてたらいいの!!」
突然南が泣き出す。
「え?なになになに?!」
松本が動揺して大ちゃんに助けを求める。
「そりゃだめだぁ。かっこいいこと言っちゃったんだぁそりゃあ泣いちゃうよぉ」
にこにこと笑いながら食器を片付ける大ちゃん、まだ泣いている南、なだめる松本。
嬉しそうに泣く南を見て、松本は声を腹から出した。
「どっちかにしろ!泣くなら泣く!」
しばらく経ってから真、実、明子が部屋を訪れてきた。




