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悪い癖でも恋をする  作者: ココハル


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19/22

第19話 あんりかんな議事録

 「もう今年もそろそろ終わるわね〜…」

 「そうですね〜…あんりさんのケーキ一口ください」

 「えぇ……、あたしまだ一口も食べてないんだけど……。って環奈《かんな》もう食べ終わったの?!早過ぎない?」

 

 あたしと環奈は今日、二人でお出かけをしている。冬休みも始まって学校はないし、レストランの仕事も今日は休みだ。


 今はカフェの二階、窓際にあるカウンターに並んで座って休憩中。色々回って結構歩いて疲れた。

 

 「えー?普通ですよ。ね、くださいよー。あんりさんのケーキ美味しそうだし」

 「あんたねぇ。ならこっちのケーキ頼めばよかったでしょーが。まぁいいけど」

 「あんりさん、あーん」

 「ちょっ、えー……?まったく、しょーがないわね。はい、あーん」

 「あむ。うん、おいひーでふ」


 最近、環奈とあたしはすごく仲が良い。

 まぁ仕事中も同じホール係だし、終わったら一緒に帰るし、そりゃ仲良くもなるけれど。

 

 でもなんていうか、まだ出会って一ヶ月も経って無いのにすごく一緒にいて気が楽というか、波長?が合うというか。


 環奈といると高校時代に戻ったみたいな。

 ん?あれ、あたしの精神年齢が低いって事か?

 

 「さっき行った水族館、すごい良かったですね。クラゲがめっちゃ綺麗でした」

 「だよね。クラゲ、ライトアップしてあって見応えすごくあった」

 「あと熱帯魚も良かった!小ちゃくて可愛かったです。私小ちゃくて可愛いの好きなんですよー」

 「ふーん……小ちゃいのねぇ。なんだよー。私の顔見てニヤニヤするなっ」


 確かにあたしは、まぁあれかもだけど。

 熱帯魚と一緒にされるのはなんかムカつく。


 「誰もあんりさんが小ちゃいなんて言ってないですよ」

 「あたしもあたしが小ちゃいなんて一言も言ってないっての!」


 「でもあんりさん可愛いですよ、ホントに。こっち向いてください。ほら、よしよし」

 「なんで頭撫でてっ……まぁイイけど。環奈も美紀《みき》も、あたしの事なんだと思ってるんだか」


 美紀も私をよく子供扱いしてくるからな……。

 でも環奈は本気であたしのこと子供だと思ってそう。環奈は天然無神経人間だし。


 「美紀さんって、前言ってた大学のお友達ですか?どんな人なんですか?」

 「なんかギャルで、彼氏いて、面倒見が良くて、よく相談に乗ってくれる。あとあたしをよく揶揄《からか》ってくる」


 まぁ、美紀はなんだかんだ優しいんだけど。


 「へぇー……。私も大学に入ったら美紀さんに会ってみたいです」

 「そうなの?いいけど。なら大学に入ったら紹介するね。あ、でも、三人になったらあんた達あたしの事イジり倒すんじゃないでしょーね」


 環奈と美紀がタッグを組んだら本当に小動物扱いされそうだ。


 「いやいや、私はあんりさんの事、揶揄ったりしないですよ」

 「なに言ってんの。なんなら環奈が一番あたしの事馬鹿にしてるまであるからね」

 「それは心外です。私はあんりさんが可愛くてしょうがないだけです。あとケーキ食べないんだったら私にください」


 ホントこいつぅ……。

 

 「あのねぇ、なんでそんなに可愛い可愛いって。あたしはもう大人の女性なの。二十一歳なのっ!……まぁ、そりゃ可愛いって言われるのもちょっとは嬉しいけどさっ」

 「あーん」

 「あんた人の話聞きなさいよっ!もう。はい、あーん」

 「あむ。やっはりあんりひゃん優しいでふ」


 環奈の方こそ、餌やりしてるみたいで可愛い。

 背が高いし、動物で言うと……キリンかな?


 「それに、可愛いのは環奈でしょ。学校ですっごいモテるでしょ?」

 「え?私ですか?いやー、可愛くないですよ。モテるかどうかは分かんないですが、告白された事はまぁ、何回かあります」

 「やっぱり!あたし告白なんてされた事ない」


 まぁ、あたしは男性から告白されても応えられないんだけれど。

 

 「え?!それは意外です。あんりさん可愛いから絶対モテてると思ってました」

 「いや、モテた事なんてないよ。それより、恋人いた事あるんでしょ?どんな人だったの?」

 「私付き合った事ないんですよー。だから恋バナってできなくて」


 へぇーそれこそ意外、こんなに美少女なのに。

 誰も環奈を落とせなかったか。


 「ちなみにあたしも恋人いた事ないから、恋バナはできない」


 ……。

 なんて悲しい沈黙なんだろう。

 あたしの場合、恋人ができても不用意に話せないんだけどね。恋人いないけどね!


 「そーいえば環奈好きな人いるって言ってたじゃん。どーなったの?環奈だったらすぐ落とせるでしょ。美少女だし」

 「いやー……美少女じゃないですけど、中々難しい問題と言いますか。でも今どんどん好きになってます」


 ふーん、難しい問題ね。あたしも難しい問題を抱えてるから、まぁ分かるけど。


 「へぇー、いいね。どんな人なの?」

 「優しくて、頼り甲斐《がい》があって、なんだかんだ私のわがまま聞いてくれて。でもちゃんと厳しくしてくれる所もあって。好きです」


 めっちゃ惚れてるじゃん。

 この子にここまで思わせる人ってどんな人なんだろう。


 「あんりさんはどうなんですか?前に好きな人いるって言ってたじゃないですか」

 「まぁそうなんだけど。憧れの気持ちも強いって言うか。最近は環奈みたいに胸を張って好き好きって言えるほど関われてないっていうか」


 なんか言ってて悲しくなってきた。


 「そっかぁ……」

 「そうなの。まぁあたしも環奈と一緒で難しい問題があるのよ」

 「難しい問題って?」

 「それを説明できないのが、難しい問題なの」


 あんまり突っ込んで聞かれると困っちゃうな。

 美紀と会うって言うなら、いつかは環奈にもカミングアウトしなきゃなんだけど、今はまだこのままでいいよね。


 「そうなんですか。……あんりさん」

 「な、なによ」

 「あーん」

 「はいはい、あーん」


 結局ケーキはほとんど環奈に食べられたけど、可愛かったから良しとした。


 それからカフェを出て、ゲームセンターでUFOキャッチャーをしたり、洋服を見に行ったりしてあたし達は休みを満喫した。


 「あんりさん、夜ご飯どーします?」

 「そろそろお腹空いたね。どっか探そっか」

 「そうですね」

 

 そう言って環奈はカバンからあたしが貸したマフラーを取り出して首に巻いた。

 

 「そう言えばそのマフラーまだ使ってんの?まぁ良いけど」

 「えへへ、なんか気に入っちゃって。って、返した方がいいですよね、すみません」


 そんなに気に入ってくれたのなら、悪い気はしないけど。あたしのお古なのに良いのかな。


 「いーよ、使ってて。それともマフラーくらい新しいの買ってあげようか?」

 「いやいや、ダメです。これが良いんです」

 「そうなの?ならそれ環奈にあげるよ。あたしもう一個持ってるから」

 「えっ?!良いんですか?やったー!すごく嬉しいです。あんりさん、ありがとうございます」

 

 そう言って環奈が手を握ってきた。

 なんか……身長差で環奈がお姉さんみたいになっててちょっと気になるけど。


 「そんなに嬉しいの?ま、あたしはお姉さんだからね!環奈が喜んでくれたなら良かったわよ」

 「ね、あんりさん。ぎゅーってしても良いですか?」


 何言ってんだこの子……。

 ここは繁華街で人通りも多いし、さすがにちょっと恥ずかしい。でも変に断ってもおかしいかな。女性同士だし、まぁ普通の範囲か。

 ハグなんて誰ともした事ないけど。

 

 「いいよ。お姉さんが受け止めてあげるから」

 「じゃ、いきますね。ぎゅーー……」


 ……。

 …………。

 あ、あれ。これ、結構ヤバいかも。

 顔が熱くなってきた。なんか、環奈が背が高いから丁度顔が胸のところに……。


 「あんりさんも私をギュッてしてくださいよ、ぎゅーーって」

 「えぇ?う、うん。ぎゅーー……」


 これ、なんかちょっと思ってたより友達同士のハグっぽくなくない?あたしが意識し過ぎなのか?

 なんか……なんか環奈、良い匂いするし……。


 「ちょちょっ、ちょっとストップ!なんかこれ、思ったより恥ずかしいって言うか、なんて言うか……」

 「私も思いました。結構見られてましたし、恥ずかしいですね」

 「なぁっ、み、見られてたの?!それ早く言いなさいよ!」


 環奈の腕を叩いて離れた。

 なんか、なんかドキドキしてきたんですけど!

 

 「まったく、もう。じゃご飯食べに行こっ」

 「あんりさん寒いから手繋ぎましょー」

 「まぁ、それくらいなら良いけど」


 その後、色々歩き回ったけど結局チェーンのレストランに行って、二人ともお腹いっぱい食べて帰った。


 環奈と一緒にいると楽しい。

 これからもっと、仲良くなれると良いなぁなんて思った日だった。

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