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戦わずに世界を変えた男――教育と物流で“循環国家”を作ったら、いつの間にか大陸が一つになっていた  作者: 慈架太子


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84 アダムス・キンバリーという男 2 

ダンジョンでの教導を終えた一行は、帰還の準備を始めた。


いつもなら歩いてダンジョンを出るところだった。


しかし今日は違う。


ガイルが26人とアダムスを見回す。


「試してみるか」


「何をです?」


アンジェラが尋ねる。


ガイルは笑った。


「さっき覚えたやつだよ」


その言葉だけで意味が伝わった。


時空間属性。


転移魔法。


アダムスが短距離転移を実演し、その魔力の動きを観察したことで26人は時空間属性へ覚醒している。


ガイルは目を閉じた。


魔力循環。


体内へ魔力を巡らせる。


続いて魔力操作。


目的地を明確に思い浮かべる。


冒険者ギルドの訓練場。


何度も利用した場所だ。


位置も広さも覚えている。


「行くぞ」


空間が揺れた。


次の瞬間。


27人の姿がダンジョンから消えた。


そして。


冒険者ギルドの訓練場に現れた。


「……」


沈黙。


最初に周囲を見回したのはレオンだった。


「訓練場だ」


ガレスも振り返る。


「本当に帰ってきたぞ」


ミリアが自分の身体を確認する。


エリックは転移してきた場所と訓練場の入口を交互に見ていた。


アンジェラも目を丸くしている。


アレクサンドでさえ驚きを隠せなかった。


ダンジョンから冒険者ギルドまで、一瞬。


歩いていない。


飛行すらしていない。


空間そのものを越えて帰ってきた。


しかも転移を発動したのは、つい先ほど時空間属性へ覚醒したばかりのガイルだ。


「できた……」


ガイル自身が1番驚いていた。


自分の両手を見る。


「本当にできたぞ」


「ガイルさんが1番驚いてどうするんですか」


ミリアが笑う。


「いや、驚くだろ。今日覚えた魔法だぞ」


その場にいた26人から笑いが起こった。


ただ1人、アダムスだけは特に驚いていなかった。


「ちゃんと転移できましたね」


「お前はもう少し驚け」


ガイルが言う。


「成功すると思ってましたから」


「そういう問題じゃない」


再び笑いが広がった。


しかしアダムスはすぐに次の行動へ移った。


アイテムボックスを開く。


ダンジョンで討伐した魔物が訓練場へ並べられていく。


ゴブリン。


オーク。


ハイオーク。


ポイズンスパイダー。


アーマードリザード。


メタルリザード。


先ほどまで笑っていた26人の視線が魔物へ向いた。


アダムスは何でもないことのように言った。


「さあ皆さん、解体しましょう」


「もうやるのか?」


ガイルが聞く。


「素材は早めに整理した方がいいでしょう?」


正論だった。


昨日、25人は解体スキルと調理スキルを習得した。


素材を損壊しない。


価値を守る。


討伐した魔物を無駄なく利用するところまでが冒険者の仕事だと学んだばかりだ。


「やるか」


レオンが最初に動いた。


ガレス、ミリア、エリックも続く。


25人がそれぞれ魔物の前へ移動した。


そしてアレクサンドも袖をまくった。


アンジェラが少し驚く。


「アレクサンドさんも?」


「もちろんよ」


アレクサンドは教導全体を預かる立場にある。


しかし今は教官として見ているつもりはなかった。


自分も昨日、解体を学んだ1人だ。


「教える側だからって、教わらなくていい理由にはならないでしょう?」


そう言って魔物の前へ座る。


ウォーターカッター。


ウィンドカッター。


覚えたばかりの解体スキルを使いながら、それぞれが素材を分離していった。


皮。


肉。


骨。


魔石。


そしてポイズンスパイダーでは、さらに慎重な作業が必要になる。


アダムスが1体の腹部を開いた。


「ここですね」


取り出したのは毒腺と毒袋だった。


潰さないように慎重に分離する。


ガイルが覗き込む。


「それも素材なのか?」


「はい。使えますよ」


アダムスは毒腺と毒袋を容器へ移した。


そしてアイテムボックスから道具を取り出す。


「今度は何をするんだ?」


「ポーションを作ります」


26人の手が一瞬止まった。


アダムスは気にせず作業を始める。


毒をそのまま利用するわけではない。


成分を分離する。


必要な成分を抽出する。


ピュリフィケーションによって不純物を取り除き、魔力操作で状態を整えていく。


その手つきには迷いがなかった。


戦闘していた時と同じだ。


必要な技術を、必要な場所で使う。


しばらくすると液体の色が変化した。


透明感のある薬液が容器へ満たされていく。


アレクサンドが鑑定した。


「解毒ポーション……」


「はい」


アダムスは平然と答える。


ポイズンスパイダーの毒腺と毒袋。


普通なら危険物として慎重に扱う素材だ。


それをアダムスは解毒ポーションの材料へ変えた。


しかも1本ではない。


次々と薬液を調整し、容器へ移していく。


解毒ポーションが並び始めた。


ガイルはその光景を見ながら額へ手を当てた。


ダンジョンでは剣、槍、超能力、重力、雷鳴、金属、時空間。


ギルドへ帰ってきたと思えば、今度はポーション作成。


「お前、本当に何種類できるんだ?」


アダムスは作業を続けながら答えた。


「まだありますよ」


その一言で26人が黙った。


どうやらアダムス・キンバリーという男を理解するには、まだ時間が必要らしかった。




アダムスの前には、完成した解毒ポーションが次々と並んでいった。


ポイズンスパイダーの毒腺と毒袋。


危険な素材であるはずのものが、適切な処理を施すことで人の命を守る薬へ変わっている。


26人は解体を続けながら、その作業を注意深く見ていた。


魔力循環を止めない。


体内で魔力を巡らせ、魔力操作を続ける。


アダムスがどのように素材を扱い、どの段階で浄化し、どうやって必要な成分を残しているのか。


見て、感じて、理解しようとしていた。


その隣では、アンジェラがポイズンスパイダーの腹部から取り出された別の素材を見つめていた。


「これは……」


糸袋だった。


アンジェラの表情が変わる。


彼女は紡織教師だ。


魔物としてではなく、紡織素材として糸袋を見ていた。


指先で状態を確認する。


「使えそうですね」


「何に?」


ミリアが尋ねる。


アンジェラは答える代わりに、自分のアイテムボックスを開いた。


中から紡ぎ機を取り出す。


「ここでやるのか?」


ガイルが聞いた。


「素材があるのですから、試してみます」


アンジェラは当然のように答えた。


糸袋から素材を取り出し、状態を整える。


魔力循環を続けながら紡ぎ機を動かした。


細い繊維が束ねられていく。


絡まないように整える。


太さを揃える。


切れないように魔力操作で補助しながら、長い糸へ変えていく。


やがて光沢を持つ糸が巻き取られた。


エリックが近づいて鑑定する。


「かなり丈夫な糸ね」


「ええ。布にしてみます」


アンジェラは紡ぎ機を片付けた。


代わりにアイテムボックスから機織り機を取り出す。


ガイルはもう何も言わなかった。


訓練場で解体をしていたはずなのに、片方では解毒ポーションが作られ、もう片方では機織りが始まっている。


アンジェラは完成した糸を機織り機へ掛けた。


一定の速度で織っていく。


縦糸と横糸が組み合わされる。


細い糸だったものが、少しずつ面となって広がっていった。


紡織教師として積み重ねてきた技術に迷いはない。


しばらくすると、丈夫な布が完成した。


「できました」


アンジェラが布を広げる。


アレクサンドが鑑定した。


「魔布……」


普通の布ではなかった。


ポイズンスパイダーの糸を利用した魔布。


丈夫でありながら柔軟性もある。


「これなら衣服にも使えそうですね」


アンジェラは嬉しそうに布を確認した。


そして次の糸袋へ手を伸ばす。


紡ぐ。


織る。


また紡ぐ。


アダムスも毒腺と毒袋の処理を続けている。


訓練場の一角に解毒ポーションが増えていく。


その反対側では魔布が積み上がる。


魔物を倒しただけなら、そこで終わっていた。


解体すれば素材になる。


知識と技術があれば、その素材からさらに新しい価値を生み出せる。


昨日25人が学んだ「素材の価値を守る」という意味が、目の前でさらに先へ進んでいた。


素材を壊さない。


持ち帰る。


それだけではない。


何に利用できるのか考える。


加工する。


必要とする人へ届ける。


そこまで繋がれば、魔物1体から得られる価値は大きく変わる。


「なるほどな……」


レオンが魔布を見ながら呟いた。


「解体が上手くても、その後を知らなきゃ価値を活かしきれないのか」


ガレスも頷く。


「毒袋なんて、俺なら危険だから触らないようにして終わりだったな」


「私も糸袋を見ても、素材として売るくらいしか考えなかったと思う」


ミリアが言う。


アンジェラは手を動かしながら微笑んだ。


「私は紡織を知っているから、糸として見えるだけですよ」


その言葉にアレクサンドが反応した。


知っているから見える。


知らなければ価値に気づけない。


それはアークが教えてきたことと同じだった。


魔力を持っている者は以前からいた。


才能がなかったわけではない。


魔力循環を知らなかった。


魔力操作を知らなかった。


使い方を教わる機会がなかった。


だから使えなかった。


素材も同じなのだ。


価値がないのではない。


価値を引き出す方法を知らないだけだった。


アレクサンドは解体されたポイズンスパイダーを見た。


毒腺は薬になった。


糸袋は魔布になった。


では肉はどうなのか。


昨日習得した調理スキルがある。


浄化も使える。


アレクサンドの目が細くなった。


教導責任者として見ているだけでは面白くない。


アダムスはポーションを作った。


アンジェラは魔布を作った。


自分にもできることがある。


「よし」


アレクサンドが立ち上がった。


ガイルが嫌な予感を覚えたように振り向く。


「今度は何をするつもりだ?」


アレクサンドはポイズンスパイダーの肉を見ながら答えた。


「料理よ」


ガイルは肉とアレクサンドを交互に見た。


「それ、毒蜘蛛だぞ?」


「だから浄化するの」


アレクサンドは平然としていた。


アダムスが解毒ポーションを作る。


アンジェラが魔布を織る。


その横で、今度は王国騎士団の教導責任者がポイズンスパイダーを料理しようとしている。


26人は解体の手を動かしながら思った。


今日の訓練場は、もう何の訓練をしている場所なのか分からなくなり始めていた。




アレクサンドは解体されたポイズンスパイダーの肉を見つめていた。


アダムスは毒腺と毒袋から解毒ポーションを作った。


アンジェラは糸袋から糸を紡ぎ、機織り機を使って魔布を作っている。


教導責任者である自分が見ているだけという状況が、少しだけ面白くなかった。


「私もやるわ」


ガイルが振り向く。


「何をするんだ?」


「この肉を使うのよ」


アレクサンドは土属性魔法を発動した。


土が盛り上がり、大きな鍋へ形を変える。


そこへ水魔法で水を満たし、解体したポイズンスパイダーの肉を入れた。


レオンが鍋を覗き込む。


「それ、毒蜘蛛の肉ですよね?」


「だから処理するの」


アレクサンドは肉へ手を向けた。


「ピュリフィケーションバレット」


浄化の力が細かな光となって鍋へ降り注いだ。


肉に残っていた毒素が分解されていく。


1度で終わらせず、魔力操作で範囲を調整しながら繰り返す。


肉そのものは傷めない。


毒だけを取り除く。


最後に鑑定する。


毒性反応はなかった。


「これで食べられるわ」


「本当に食べるんですか?」


ガレスはまだ疑っている。


アレクサンドは気にせず調理を始めた。


火は使わない。


鍋へ両手を向け、魔力循環を続ける。


体内を巡る魔力を魔力操作によって鍋の水と肉へ作用させる。


ゆっくりと温度が上がった。


やがて水面から湯気が立つ。


さらに魔力を送り込むと、鍋の中で湯が静かに沸き始めた。


アンジェラが機織りの手を止める。


「火を使わないのですか?」


「ええ。魔力で直接煮込んでいるの」


アレクサンドは肉の状態を確認しながら魔力を調整した。


強く送りすぎない。


弱めすぎない。


鍋全体へ均等に作用させ、肉の芯までゆっくり熱を通していく。


昨日習得した調理スキルも働いていた。


時間が経つにつれて肉が柔らかくなり、旨味がスープへ溶け出していく。


訓練場に香りが広がった。


ミリアが鼻を動かした。


「普通においしそうね」


「毒蜘蛛だって考えなければな」


レオンが答える。


「もう毒はないわよ」


アレクサンドが少し不満そうに言った。


エリックが笑う。


「アレクサンドさん、かなり本気ですね」


「食材を無駄にしないためよ」


「教官としての意地じゃなくて?」


「違います」


即答だった。


その様子を見てガイルが笑う。


やがてアレクサンドが味を確認した。


鑑定も行う。


毒性なし。


問題なし。


「完成よ」


ポイズンスパイダーの薬膳スープだった。


器へ盛られたスープを前に、最初に手を伸ばす者はいなかった。


アレクサンドがガイルを見る。


「あなたからどうぞ」


「やっぱり俺か」


ガイルは器を受け取った。


一口飲む。


周囲から視線が集まる。


もう一口。


「うまいぞ」


「本当に?」


アンジェラが尋ねる。


「普通にうまい。肉も柔らかい」


それを聞いてレオンたちも食べ始めた。


ガレス。


ミリア。


エリック。


続いて他の者たちも器を受け取る。


「うまい」


「これがポイズンスパイダーか?」


「言われなければ分からないな」


次々と感想が出た。


訓練場の片側にはアダムスが作った解毒ポーション。


反対側にはアンジェラが織った魔布。


そして中央ではポイズンスパイダーの薬膳スープが振る舞われている。


1種類の魔物から3種類の価値が生まれていた。


毒腺と毒袋は薬になる。


糸袋は紡織産業で利用できる魔布になる。


肉は食料になる。


昨日学んだ「素材を損壊しない」という考え方が、さらに先へ進んでいた。


価値を守るだけではない。


知識と技術によって、新しい価値へ変えることができる。


26人は食事をしながらも魔力循環を止めていなかった。


アダムスのポーション作成を見た。


アンジェラが糸を紡ぎ、布を織る工程を見た。


アレクサンドが浄化し、魔力だけで肉を煮込む工程も見た。


その間も魔力操作を続け、それぞれの技術を理解しようとしていた。


やがてレオンの身体が淡く光った。


「またか?」


ガレスも光る。


ミリア。


エリック。


ガイル。


そして周囲にいた者たちにも同じ変化が起きた。


アレクサンドが鑑定する。


「紡織スキル……」


さらに確認する。


「ポーション作成スキル、薬師スキルまで」


アンジェラも自分を鑑定して目を見開いた。


26人が同じ3つのスキルへ覚醒していた。


魔物を倒す。


素材を守る。


加工方法を学ぶ。


そして学んだ技術が、また別の者へ伝わる。


アークが始めた教育は、戦闘術だけに留まらない。


誰かが持つ技術を誰かが学び、その知識が次の可能性を生み出す。


訓練場はいつの間にか、戦うためだけの場所ではなくなっていた。




訓練場には、解体を終えた魔物の素材が整理されていた。


その横にはアダムスが作った解毒ポーション。


アンジェラがポイズンスパイダーの糸袋から作った魔布。


そして中央には、アレクサンドが魔力だけで煮込んだ薬膳スープの鍋が残っている。


26人は食事を終え、それぞれ自分に起きた変化を確認していた。


紡織スキル。


ポーション作成スキル。


薬師スキル。


魔力循環と魔力操作を続けながら、アダムス、アンジェラ、アレクサンドの技術を見続けた結果だった。


レオンが自分を鑑定して苦笑する。


「昨日まで解体もまともにできなかった連中がな」


ガレスも自分の能力を確認する。


「今日は薬まで作れるようになった」


「私たち冒険者よね?」


ミリアが尋ねる。


エリックが笑った。


「剣も槍も使えて、格闘もできて、薬も作れて、布まで織れる冒険者ね」


その言葉を聞いたガイルが腕を組んだ。


今日だけでも変化が大きすぎる。


剣士スキル。


槍術スキル。


格闘術スキル。


重力属性。


金属属性。


雷鳴属性。


時空間属性。


そして紡織スキル、ポーション作成スキル、薬師スキル。


元々持っていた戦闘能力や魔法まで含めれば、もはや何が専門なのか分からない。


しかしガイルは、それを悪いことだとは思わなかった。


冒険者は魔物と戦うだけの仕事ではない。


生きて帰る。


素材を持ち帰る。


食料を確保する。


怪我や毒へ対応する。


装備を維持する。


それらも冒険者として生きるために必要な力だった。


「まあ、使えるものが増えるのはいいことだ」


ガイルが言う。


「戦えなくなった時でも食っていける」


アンジェラが頷いた。


「紡織を覚えていれば、冒険者を引退しても仕事がありますからね」


「ポーション作成も同じね」


アレクサンドも続ける。


「戦闘術だけが生きるための力ではないわ」


フェリクス、ロイド、ブラッドもその話を聞いていた。


3人もガイルと同じAランク冒険者であり、25人を率いる班長たちだ。


当然、ダンジョンで起きたことも最初から見ている。


フェリクスは改めてアダムスへ視線を向けた。


ゴブリン5体。


剣で瞬殺。


オーク5体。


槍へ持ち替えて瞬殺。


ハイオーク5体。


テレキネシスで首を撚り、瞬殺。


ポイズンスパイダー5体。


グラビティで拘束して仕留めた。


アーマードリザード5体。


サンダーボルトで殲滅。


メタルリザード5体。


体内の金属成分を利用して拘束具を生成。


さらに針で頭蓋を貫き、素材をほとんど損壊せず仕留めた。


それだけではない。


ダンジョンの壁を破壊。


そこから鉄、銅、銀、金、ミスリル、オリハルコン、アダマンタイトを取り出した。


精錬されたインゴットは純度99.99%以上。


しかも破壊したダンジョンの壁は再生した。


さらに時空間属性による短距離転移。


ギルドへ帰還すれば、今度はポイズンスパイダーの毒腺と毒袋から解毒ポーションを作っている。


フェリクスは長い冒険者生活を思い返した。


様々な冒険者を見てきた。


剣の達人。


槍の達人。


強力な魔法使い。


希少属性を持つ者。


優秀な錬金術師や薬師。


しかし、それらを1人で次々と使う人間など見たことがない。


フェリクスの口から言葉が漏れた。


「……人外だ」


隣にいたロイドも頷く。


「……人外だな」


ブラッドも真顔だった。


「俺もそう思う」


ガイルが勢いよく振り向いた。


「お前らも人外だよ!」


「俺たちも?」


フェリクスが自分を指差した。


「そうだよ!」


ガイルは笑いながら言った。


「今日だけでどれだけ覚醒したと思ってるんだ!」


3人が黙った。


剣士。


槍術。


格闘術。


重力。


金属。


雷鳴。


時空間。


紡織。


ポーション作成。


薬師。


そこまで考えたところで、ロイドが自分の手を見る。


「……確かに」


ブラッドも自分を鑑定した。


「俺たちも相当おかしいな」


「今さら気づいたのか?」


ガイルが笑う。


レオンたちも吹き出した。


アンジェラも笑い、アレクサンドは呆れたように肩をすくめる。


そんな中、アダムスだけが不思議そうな顔をしていた。


「皆さん、何を笑っているんですか?」


ガイルがアダムスを見る。


「お前のせいだよ」


「俺ですか?」


「そうだ」


アダムスは少し考えた。


しかし理由が分からない。


「俺は戦って、精錬して、ポーションを作っただけですけど」


再び沈黙。


そして今度は、先ほどより大きな笑い声が訓練場に響いた。


本人にとっては普通なのだ。


覚えた技術を使う。


使えるものを組み合わせる。


そして周囲の者は、その姿から学んでいく。


アークがアダムスへ渡したものは、強さだけではなかった。


学ぶこと。


使うこと。


そして使う姿そのものが、次の誰かの学びになること。


教えた者が、また誰かを育てていく。


その流れは、冒険者ギルドの訓練場でも確かに広がり始めていた。





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