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戦わずに世界を変えた男――教育と物流で“循環国家”を作ったら、いつの間にか大陸が一つになっていた  作者: 慈架太子


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42 王族たちと狩り

水属性魔法を習得して数日後。


早朝の王城前には王族一行が集まっていた。


国王オーキス・アルデバラン。


王妃バイオレット・アルデバラン。


側室ナターシャ、メロディー、アマンダ。


第二王女リヴィア・アルデバラン。


第一王子レックス・アルデバラン。


第二王子イヴァン・アルデバラン。


第三王子コール・アルデバラン。


教師を務める第一王女マーガレット・アルデバラン。


そして護衛兼見学役として近衛騎士十名が同行する。


マーガレットは王族たちを見回した。


「今日は初めての実戦教導です。」


「目的は魔物を倒すことだけではありません。」


「魔力循環を維持しながら戦うこと。」


「そして実戦経験を積み、成長することです。」


全員が真剣な表情で頷く。


アークも静かに口を開いた。


「魔力循環は止めないでください。」


「歩いている時も。」


「走っている時も。」


「戦闘中も。」


「常に続けます。」


「はい。」


王族たちは魔力循環を維持したまま身体強化を発動した。


「では出発します。」


マーガレットを先頭に、一行は王城を飛び出す。


身体強化された脚力は凄まじく、王都の街道を軽快に駆け抜けていく。


近衛騎士たちは王族の左右と後方を固めながら周囲を警戒した。


王都から魔の森までは決して近くない。


それでも魔力循環を維持した身体強化のおかげで、王族たちは息を乱すことなく走り続けることができた。


一時間ほどで魔の森へ到着する。


マーガレットは振り返った。


「皆様、疲れていませんか。」


国王が笑った。


「不思議だな。」


「以前ならここまで走るだけで息が上がっていた。」


王妃も驚きを隠せない。


「身体強化とはここまで違うのですね。」


弟や妹たちも笑顔だった。


「まだまだ走れます。」


マーガレットは満足そうに頷く。


「それでは狩りを始めます。」


右手を前へ向ける。


「ウォーターサーチ。」


魔力が森全体へ広がっていく。


しばらくすると反応が返ってきた。


「北東。」


「アイアンリザード三百体です。」


近衛騎士たちは驚いたように顔を見合わせた。


「三百体を一度に……。」


マーガレットは落ち着いた様子で説明する。


「群れを相手にするときは、一体ずつ探す必要はありません。」


「群れ全体を把握し、逃げ道を塞ぎます。」


王族たちは頷き、身体強化を維持したまま森の中を駆け出した。


十分ほどでアイアンリザードの群れを視認する。


灰色の硬い鱗に覆われた魔物が三百体。


木々の間をゆっくりと移動していた。


マーガレットは静かに指示を出す。


「私は指揮と回収を担当します。」


「皆様九人で討伐してください。」


「まずはウォーターバインド。」


「逃がさず拘束します。」


「その後、ウォーターマスクで無力化してください。」


「一体ずつ確実に。」


国王が力強く頷いた。


「分かった。」


「慌てず基本通りだな。」


王妃も魔力を集中させる。


側室たち。


リヴィア。


レックス。


イヴァン。


コール。


九人はゆっくりと包囲陣を築きながら魔物へ近づいていく。


初めての実戦とは思えないほど落ち着いた足取りだった。


その姿を見守るマーガレットは、小さく微笑んだ。


教導の成果が、いよいよ実戦で試されようとしていた。




「始めます。」


マーガレットの合図とともに、九人の王族が一斉に動いた。


国王オーキスを先頭に、王妃バイオレット、三人の側室、リヴィア、レックス、イヴァン、コールが魔力循環を維持したまま陣形を広げる。


マーガレットは一歩下がり、全体を見渡した。


「基本通りです。」


「まず拘束。」


「その後、無力化してください。」


九人は同時に魔法を放つ。


「ウォーターバインド。」


何本もの水の拘束が地面を走り、アイアンリザードたちの四肢へ絡み付く。


突然の拘束に魔物たちは暴れ始めた。


しかし、九人は慌てない。


国王が落ち着いた声で魔法を放つ。


「ウォーターマスク。」


一体の頭部が水で覆われる。


王妃も続く。


「ウォーターマスク。」


ナターシャ。


メロディー。


アマンダ。


リヴィア。


レックス。


イヴァン。


コール。


九人はそれぞれ狙いを定め、一体ずつ確実に無力化していった。


魔物は反撃することもできず、その場へ崩れ落ちる。


マーガレットは全員の動きを確認しながら助言を続ける。


「魔力循環を止めないでください。」


「呼吸と同じです。」


「魔法を撃つ瞬間も維持します。」


王族たちはその言葉通り、魔力を巡らせながら次々と魔法を発動する。


身体強化も維持されているため、位置取りも素早い。


拘束。


無力化。


次の標的へ移動。


同じ動作を何度も繰り返す。


十分ほどすると、三百体いたアイアンリザードは一体残らず動かなくなっていた。


マーガレットはすぐにアイテムボックスを発動する。


倒れたアイアンリザードが次々と収納され、戦場は瞬く間に元の森へ戻っていく。


回収が終わると、すぐに索敵を開始した。


「ウォーターサーチ。」


魔力が森全体へ広がる。


しばらくすると反応を捉えた。


「西へ約一キロ。」


「メタルリザード三百体です。」


「向かいましょう。」


王族たちは頷き、身体強化を維持したまま森の中を駆け出した。


近衛騎士十名も周囲を警戒しながら後方を追従する。


十分ほどで銀色の鱗を持つメタルリザードの群れが見えてきた。


三百体もの魔物が木々の間を移動している。


マーガレットは静かに指示を出した。


「先ほどと同じです。」


「基本を崩さないでください。」


「ウォーターバインドで拘束。」


「ウォーターマスクで無力化します。」


「はい。」


王族たちの返事には、先ほどよりも自信があった。


初戦で得た経験は確かな手応えとなり、動きにも迷いがない。


国王は群れ全体を見渡し、小さく頷く。


「落ち着いていけば負ける相手ではない。」


その言葉に王族たちは力強く頷いた。


九人は再び陣形を広げ、メタルリザード三百体へ向かって静かに前進を開始した。


実戦を重ねるたびに、王族たちの連携は着実に磨かれていった。




メタルリザード三百体との戦闘も、大きな混乱はなかった。


「ウォーターバインド。」


九人の魔法が一斉に発動する。


水の拘束が群れ全体へ伸び、逃げ道を塞いだ。


国王オーキスが落ち着いて指示を出す。


「慌てるな。」


「一体ずつ確実に。」


「ウォーターマスク。」


王妃バイオレットも続く。


「ウォーターマスク。」


側室ナターシャ。


メロディー。


アマンダ。


リヴィア。


レックス。


イヴァン。


コール。


九人は捕縛した魔物を順番に無力化していく。


初戦よりも魔法の発動は速く、連携も滑らかだった。


マーガレットは静かに頷く。


「皆様、上達しています。」


「魔力循環も乱れていません。」


国王は笑みを浮かべる。


「身体が自然に動く。」


「考える前に魔力が巡るようになってきた。」


マーガレットは答える。


「それが魔力循環です。」


「続ければ続けるほど身体に馴染みます。」


三十分ほどでメタルリザード三百体の討伐も完了した。


マーガレットはすぐにアイテムボックスを発動する。


三百体のメタルリザードが次々と収納され、戦場には何も残らない。


収納を終えると、間髪入れず索敵を行った。


「ウォーターサーチ。」


森へ広がった魔力が、新たな群れを捉える。


「南東。」


「ニードルリザード三百体です。」


「向かいます。」


王族たちは身体強化を維持したまま森を駆ける。


近衛騎士十名も周囲を警戒しながら同行する。


十分ほどで目的の群れへ到着した。


鋭い針のような棘を持つニードルリザードが三百体、木々の間を移動している。


マーガレットは戦場全体を見渡した。


「棘による攻撃があります。」


「正面から近づく必要はありません。」


「距離を保ったまま基本通り戦います。」


九人は落ち着いて頷く。


「ウォーターバインド。」


拘束。


「ウォーターマスク。」


無力化。


魔物が暴れる間もなく戦闘は進んでいく。


戦闘経験を重ねたことで、九人は互いの動きを見ながら自然に役割を分担できるようになっていた。


一人が拘束し損ねれば、すぐ隣の者が補う。


無理に前へ出る者はいない。


誰も焦らない。


マーガレットが教えた基本を忠実に繰り返していた。


近衛騎士たちは周囲の索敵と警戒を続けながら、王族たちの成長を静かに見守る。


アークも頷いた。


「教導の成果が出ています。」


「魔法だけではありません。」


「状況判断も落ち着いています。」


マーガレットも嬉しそうに笑う。


「皆様、自分で考えながら戦えるようになっています。」


その言葉どおり、ニードルリザード三百体も着実に数を減らしていった。


最後の一体が動きを止めると、マーガレットはアイテムボックスで群れを回収する。


そして休む間もなく、再び魔力を広げた。


「ウォーターサーチ。」


「次は東です。」


「アーマードリザード三百体を確認しました。」


王族たちは息を整えながらも魔力循環を止めることなく頷いた。


実戦教導はまだ終わらない。


この一日を通して積み重ねる経験が、王族たちをさらに大きく成長させようとしていた。




「東へ向かいます。」


マーガレットを先頭に、一行は身体強化を維持したまま森を駆け抜ける。


魔力循環は誰一人止めていない。


王族たちは呼吸をするように魔力を巡らせながら、次の群れを目指した。


十分ほどで目的地へ到着する。


そこには黒い鎧のような外殻を持つアーマードリザード三百体が群れを作っていた。


国王が静かに息を吐く。


「これが最後の三百体だな。」


マーガレットは頷く。


「はい。」


「ですが油断は禁物です。」


「最後まで基本を徹底してください。」


九人はゆっくりと包囲陣を築く。


十分な距離を確保すると、一斉に魔法を放った。


「ウォーターバインド。」


幾重もの水の拘束がアーマードリザードへ絡み付く。


硬い外殻を持つ魔物たちは暴れるが、水の拘束は緩まない。


「ウォーターマスク。」


九人が順番に無力化していく。


拘束。


無力化。


確認。


次の標的。


同じ動作を正確に繰り返す。


実戦を重ねたことで、九人の連携は朝とは比較にならないほど滑らかになっていた。


国王が左側を担当すれば、王妃が中央を支える。


三人の側室が空いた場所を補い、リヴィアと三人の王子が確実に数を減らしていく。


無理な攻撃を仕掛ける者はいない。


全員が教導通りの戦いを徹底していた。


やがて最後のアーマードリザードが倒れる。


マーガレットはすぐにアイテムボックスを発動した。


千二百体すべての魔物が収納される。


その後も教導は終わらなかった。


マーガレットはウォーターサーチを繰り返す。


「北西に六百体。」


「南に八百体。」


「さらに東へ五百体。」


群れを発見するたびに王族たちは身体強化で駆け、同じ手順で討伐を続けていく。


拘束。


無力化。


回収。


索敵。


その流れを何度も繰り返した。


魔力循環を止める者は一人もいない。


魔法を使うたびに魔力操作は洗練され、身体強化も自然なものとなっていく。


日が傾く頃。


討伐した魔物は一万体へ到達した。


マーガレットが全員の様子を確認した、その時だった。


国王オーキスの身体が淡い光に包まれる。


続いて王妃。


ナターシャ。


メロディー。


アマンダ。


リヴィア。


レックス。


イヴァン。


コール。


九人全員の身体から光があふれ出した。


近衛騎士たちは驚きながらも、その意味を理解していた。


マーガレットは鑑定を行う。


「おめでとうございます。」


「風属性、土属性、光属性が覚醒しました。」


国王は驚きながら両手を見つめる。


「一度に三属性もか。」


王妃も目を見開いた。


「頭の中へ知識が流れ込んできます。」


リヴィアは嬉しそうに声を上げる。


「風の流れが分かります。」


レックスも頷いた。


「土の性質も理解できます。」


イヴァンは拳を握りしめた。


「光属性の使い方まで分かる。」


マーガレットは笑顔で家族を見渡した。


「今日の成果です。」


「魔力循環を続け、実戦を繰り返した結果、皆様は新たな三属性へ覚醒しました。」


アークも静かに頷く。


「焦らず基礎を積み重ねたからこその成果です。」


「明日からは、新たに覚醒した三属性の教導を始めましょう。」


王族たちは喜びを分かち合いながら、大きく頷いた。


確かな実戦経験は、新たな力となって王族たちの中に根付き始めていた。





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