41 王族たちへの教導
翌朝。
王宮の訓練場には王族全員が集まっていた。
国王オーキス・アルデバラン
王妃。バイオレット・アルデバラン
三人の側室。 ナターシャ メロディー アマンダ
妹一人。 リヴィア
弟三人。 レックス イヴァン コール
そしてアークとマーガレット。
近衛騎士団も訓練場の周囲で静かに見守っている。
マーガレットは一歩前へ出た。
「今日から皆様へ教導を行います。」
国王が笑う。
「昨日までは教えられる側だった娘が、今日は教師か。」
「不思議なものだな。」
マーガレットも微笑み返した。
「私も昨日まではそう思っていました。」
「ですが教導スキルを覚醒しました。」
「皆様にも正しくお教えできます。」
アークは静かに頷く。
「まずは魔力循環です。」
「すべての基礎になります。」
王族たちは一斉に姿勢を正した。
マーガレットは国王の前へ立つ。
「父上。」
「私の魔力の流れを感じてください。」
「はい。」
国王は目を閉じた。
マーガレットは教導スキルを意識しながら、ゆっくりと魔力循環を行う。
自分の魔力の流れを見せるように。
伝えるように。
国王も同じように魔力を巡らせようとする。
しかし途中で止まってしまった。
「難しいな。」
「最初は皆そうです。」
マーガレットは穏やかに微笑む。
「焦る必要はありません。」
「もう一度やってみましょう。」
再び魔力を巡らせる。
今度は国王の魔力が少しだけ動いた。
「そうです。」
「その感覚です。」
三度目。
四度目。
五度目。
少しずつ流れがつながっていく。
やがて魔力は身体を一周した。
「できた。」
国王は思わず笑顔になる。
「本当にできたぞ。」
マーガレットも嬉しそうに頷いた。
「おめでとうございます。」
続いて王妃。
三人の側室。
妹たち。
弟たち。
全員へ同じように教導を行う。
最初は誰もが苦戦した。
魔力を感じることさえ難しい。
しかしマーガレットが魔力循環を繰り返して見せるたび、少しずつ身体が反応していく。
教導スキルが働いているのだろう。
一人また一人と魔力が巡り始めた。
王妃は感動したように胸へ手を当てる。
「身体の中が温かいです。」
側室の一人も驚いた表情を浮かべる。
「こんな感覚は初めてです。」
弟の一人は何度も頷いた。
「本当に魔力が流れている。」
妹たちも自然と笑顔になる。
「できました。」
「私もできています。」
マーガレットは全員を見回した。
「皆様、そのまま続けてください。」
「魔力循環は訓練の時だけではありません。」
「歩いている時も。」
「食事をしている時も。」
「仕事をしている時も。」
「眠っている時も。」
「常に続けます。」
国王は驚いた。
「寝ている間もか。」
「はい。」
「呼吸をするように続けてください。」
「それが普通になります。」
王族たちは真剣な表情で頷く。
マーガレット自身がそうしてきたように、二十四時間休むことなく魔力循環を続ける。
それが成長への第一歩だった。
アークは静かにその様子を見守る。
昨日まで教え子だったマーガレットは、今日から立派な教師となっていた。
教導は確かに受け継がれ、新たな世代へと広がり始めていた。
王族全員が魔力循環を身につけた翌日。
朝の訓練場には、昨日よりも明るい表情の王族たちが集まっていた。
国王が両手を見つめる。
「一晩中、魔力が流れていた。」
「途中で止まることもなかったぞ。」
マーガレットは微笑む。
「身体が覚え始めたのです。」
「これからは意識しなくても、呼吸をするように続けられます。」
王妃も頷いた。
「身体が軽く感じます。」
「目覚めも良くなりました。」
三人の側室たちも同じ感覚を口にする。
「疲れが残っていません。」
「以前より身体が温かいです。」
「不思議な感覚ですね。」
弟や妹たちも嬉しそうに笑っていた。
アークは静かに前へ出る。
「今日は魔力操作を教えます。」
「魔力循環が体内を巡らせる技術なら、魔力操作は魔力を自在に動かす技術です。」
王族たちは真剣な表情になる。
マーガレットが教導を始めた。
「まずは手のひらへ魔力を集めてください。」
国王はゆっくりと魔力を右手へ集める。
しかし途中で魔力が散ってしまった。
「思うように集まらんな。」
「焦らないでください。」
マーガレットは穏やかに微笑む。
「魔力循環と同じです。」
「繰り返せば必ずできます。」
教導スキルを意識しながら、手本を見せる。
手のひらへ魔力が集まり、小さな水色の光が生まれた。
「この感覚を真似してください。」
国王はもう一度挑戦する。
今度は途中で途切れない。
少しずつ魔力が右手へ集まっていく。
やがて淡い光が灯った。
「できた。」
マーガレットは嬉しそうに頷く。
「はい。」
「そのまま維持してください。」
続いて王妃。
側室たち。
弟たち。
妹たち。
全員が同じように魔力を集める訓練を繰り返した。
最初は誰もが苦戦した。
だが教導スキルの効果もあり、理解は驚くほど早い。
魔力を集める。
散らす。
再び集める。
場所を移動させる。
右手。
左手。
足先。
胸。
全身。
魔力を自在に巡らせる感覚を身体へ覚え込ませていく。
時間が経つにつれ、王族たちの動きは目に見えて安定した。
国王は感心したように笑う。
「昨日とは比べものにならん。」
「魔力が思うように動く。」
王妃も嬉しそうに頷く。
「身体の一部になったようです。」
マーガレットは一人ひとりの動きを確認しながら助言する。
「力まずに。」
「魔力を押すのではありません。」
「流れを整えるように。」
その言葉だけで、王族たちの魔力操作はさらに滑らかになっていった。
アークは静かに頷く。
「教導スキルがよく機能しています。」
「教え方が的確です。」
マーガレットは少し照れたように笑う。
「アーク様に教えていただいた通りにしているだけです。」
夕方になる頃には、王族全員が魔力を自在に身体の中で動かせるようになっていた。
アークは満足そうに全員を見渡す。
「魔力循環。」
「魔力操作。」
「これで基礎は完成です。」
「明日はいよいよ水属性魔法を教えます。」
王族たちは期待に満ちた表情で頷いた。
魔法を使える日が、すぐそこまで来ていた。
翌朝。
王宮の訓練場には王族全員が集まっていた。
国王オーキス。
王妃。
三人の側室。
妹一人。
弟三人。
全員が一晩中、魔力循環と魔力操作を続けている。
マーガレットは一人ひとりの様子を確認した。
「皆様、魔力循環は止まりませんでしたか。」
国王が力強く頷く。
「ああ。」
「眠っている間も自然に続いていた。」
王妃も微笑む。
「身体がとても軽く感じます。」
側室たちも同じように頷いた。
「疲れが残っていません。」
「朝から身体が温かいです。」
弟や妹たちも嬉しそうだった。
「昨日より魔力がはっきり感じられます。」
アークは静かに前へ出る。
「では今日から水属性魔法です。」
「まずは水属性を正しく理解してください。」
王族たちは真剣な表情になる。
マーガレットはゆっくりと説明を始めた。
「水属性は水を操る属性です。」
「攻撃だけではありません。」
「捕縛。」
「防御。」
「治療。」
「索敵。」
「生活。」
「多くの用途があります。」
王族たちは驚いたように頷いた。
国王が尋ねる。
「一つの属性でそこまでできるのか。」
「できます。」
マーガレットは右手へ魔力を集めた。
「ウォーターバレット。」
圧縮された水が一直線に飛び、訓練用の的へ命中する。
乾いた音が訓練場へ響いた。
「これが基本になります。」
「魔力を圧縮し、水を弾として撃ち出します。」
続いてマーガレットは右手を横へ払う。
「ウォーターカッター。」
細く鋭い水の刃が空気を切り裂き、木製の的をきれいに切断した。
「こちらは切断です。」
「用途に応じて使い分けます。」
さらに右手を前へ向ける。
「ウォーターバインド。」
水が縄のように伸び、別の的をしっかりと拘束した。
「逃がさず捕らえる魔法です。」
最後に静かに言った。
「ウォーターマスク。」
水が人形の頭部を包み込む。
「無力化するための魔法です。」
王族たちは目を見開いていた。
水属性だけで、これほど多くのことができるとは思ってもいなかったのである。
マーガレットは国王へ微笑みかける。
「父上。」
「まずはウォーターバレットから始めましょう。」
国王は深呼吸をした。
魔力循環。
魔力操作。
その二つを維持しながら、水属性を意識する。
「ウォーターバレット。」
何も起こらない。
マーガレットは優しく声を掛けた。
「焦らないでください。」
「魔力を圧縮することだけを意識してください。」
国王はもう一度挑戦する。
魔力をゆっくりと掌へ集める。
さらに圧縮する。
その瞬間、小さな水の弾が現れた。
「できた。」
国王は驚きながら自分の手を見つめた。
王妃も思わず笑顔になる。
「おめでとうございます。」
続いて王妃が挑戦する。
三人の側室。
妹たち。
弟たち。
最初は全員が苦戦した。
しかしマーガレットの教導は的確だった。
教導スキルによって、一人ひとりの癖を見抜きながら助言していく。
「魔力を集めすぎています。」
「もう少し自然に。」
「圧縮を意識してください。」
その助言だけで魔力の流れが整っていく。
やがて王妃の掌にも水の弾が生まれた。
側室たちも成功する。
妹たちも弟たちも次々とウォーターバレットを発動させた。
訓練場には歓声が上がる。
昨日まで魔法を一つも使えなかった王族たちが、確かに水属性魔法への第一歩を踏み出していた。
翌朝。
王族たちは再び王宮の訓練場へ集まっていた。
国王、王妃、三人の側室、妹二人、弟三人。
誰一人として魔力循環を止めていない。
魔力操作も自然に行えるようになっていた。
マーガレットは満足そうに頷く。
「皆様、おはようございます。」
「魔力循環は続いていますか。」
「もちろんだ。」
国王が胸を張る。
「眠っている間も自然に続いていた。」
王妃も微笑む。
「魔力操作も昨日より滑らかになっています。」
弟たちも手のひらへ魔力を集めて見せた。
「昨日より簡単にできます。」
アークは静かに言う。
「では、もう一度ウォーターバレットを発動してください。」
王族たちは一斉に魔力を集めた。
「ウォーターバレット。」
次の瞬間だった。
国王の身体が淡い青い光に包まれる。
「これは……。」
続いて王妃。
側室たち。
妹たち。
弟たち。
次々と青い光が身体を包み込んでいく。
訓練場にいた近衛騎士たちも息を呑んだ。
マーガレットは驚きながらも鑑定を行う。
「皆様、水属性が覚醒しました。」
国王は驚いた表情で自分の両手を見つめる。
「これが……覚醒。」
王妃も静かに息を呑んだ。
「身体の中へ知識が流れ込んできます。」
弟の一人が目を見開く。
「魔法の使い方が分かる。」
妹も頷く。
「水の動かし方が自然に理解できます。」
三人の側室たちも同じだった。
「魔力の流し方が分かります。」
「圧縮する感覚も理解できます。」
「昨日とはまったく違います。」
マーガレットは嬉しそうに微笑んだ。
「覚醒すると、水属性への理解が深まります。」
「ですが、覚えただけでは十分ではありません。」
「繰り返し使い、身体へ覚え込ませることが大切です。」
アークも続ける。
「知識と技術は違います。」
「知識を得ても、反復しなければ自在には扱えません。」
王族たちは真剣な表情で頷いた。
国王は再び的へ向き直る。
「ウォーターバレット。」
今度は昨日より速く、鋭く、水の弾が飛び出した。
的の中心へ正確に命中する。
王妃も続く。
側室たち。
妹たち。
弟たち。
昨日は苦戦していた魔法が、今では自然に発動できる。
王族たちは互いの成長を見て笑みを浮かべた。
「昨日とは別人のようです。」
「これが覚醒なのですね。」
「魔法を使うのが楽しいです。」
マーガレットは家族の姿を見渡した。
昨日まで魔法を知らなかった家族が、自ら魔力を操り、水属性魔法を使いこなし始めている。
その光景は、教導スキルを授かった自分にとって何よりも嬉しいものだった。
アークは穏やかに頷く。
「順調です。」
「この調子で六属性を習得していけば、王族全員が高い実力を身につけられるでしょう。」
国王は力強く頷いた。
「マーガレット。」
「明日も頼む。」
娘は深く一礼した。
「はい、お任せください。」
王族への教導は始まったばかりだった。
しかし、その第一歩は確かな成果となって実を結び始めていた。




