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戦わずに世界を変えた男――教育と物流で“循環国家”を作ったら、いつの間にか大陸が一つになっていた  作者: 慈架太子


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280 表彰

王宮へ帰還したカイゼル、アイゼル、マイケルは、すぐに会議を開いた。


議題は今回の作戦についてである。


最初に口を開いたのはアイゼルだった。


「アリー男爵を表彰しなければ、我が国の沽券に関わりますぞ」


マイケルもすぐに頷いた。


戦場で見たアリーの働きは、それほど強烈だった。


「アリー男爵の判断の早さは尋常ではありません。知見の深さもです。公爵の意見に全面的に賛同いたします」


数百体ものリッチを瞬殺。


アンデッドに匿われていた五十人を超えるネクロマンサーを捕縛、逮捕。


四百体の魔石回収ゴーレムを展開し、十万個を超える魔石を回収。


さらに戦闘の終わった場所へ広域浄化を行った。


何をするべきかを考えて立ち止まる場面がない。


敵が人間なのかアンデッドなのか。


倒すべきなのか、捕らえるべきなのか。


浄化するべきなのか。


すべての判断が早かった。


だが、カイゼルはすぐには同意しなかった。


「しかし、アリー男爵だけが活躍したわけではない」


アイゼルとマイケルがカイゼルを見る。


「七万人だった我が騎士団の拡充を提案してくれたアレクサンド侯爵の存在がなければ、此度の作戦、苦戦どころか敗北もあったぞ」


二百十万人への騎士団拡充。


アンデッドの存在を確認し、それまでの戦術が通用しないことを見抜いたのもアレクサンドだった。


騎士たちは十一属性を揃え、聖騎士を発現し、状態異常への耐性を身につけた。


オリハルコンの武器も用意した。


準備があったからこそ、今回の作戦を進めることができた。


カイゼルは続けた。


「それに教導して頂いたガイル子爵や、剣の教導をして頂いたイプシオ男爵、アダムス名誉侯爵、アリシア子爵も居る」


誰か一人だけの功績ではなかった。


今回の作戦が始まるまでに、多くの者がシュタインフェルト王国の騎士たちを教導している。


アイゼルはしばらく考えたあと、口を開いた。


「それでは、今回の応援団二百万人全員を表彰するとして、代表をアレクサンド侯爵にして神官新興貴族たち全員を表彰台に呼ぶのは如何でしょう」


「二百万人全員か」


「はい。全員を表彰するわけですし、アリー男爵だけが表彰されるわけではありません」


アイゼルは迷わず続けた。


「幸い、国庫にはふんだんの予算があります。二百万人全員の功績に報いることも可能です」


カイゼルは黙って聞いている。


「それに、シュタインフェルト王国の騎士たちもアリー男爵の姿を見て士気が上がっております」


自分たちより遥かに対アンデッド戦に慣れた者がいる。


実際にその戦いを見ることで、騎士たちは自分たちにもまだ先があることを知った。


カイゼル、アイゼル、マイケル自身も同じだった。


三人は今回の実戦で剣豪を発現している。


アイゼルはカイゼルを見た。


「陛下。これは我がシュタインフェルト王国が、アルデバラン王国に恩義を示すチャンスですぞ」


マイケルが頷いた。


「先ほどの発言を訂正します」


アイゼルがマイケルを見る。


「此度の意見に、公爵の意見に全面的に賛同いたします」


カイゼルは二人を見た。


アリーだけではない。


アレクサンド。


ガイル。


イプシオ。


アダムス。


アリシア。


そして今回、シュタインフェルト王国を助けるために動いた者たち。


二百万人もの応援を受けた。


それを当然のこととして済ませるわけにはいかない。


「それしか無いか。アイゼル、その案で行け」


「承知いたしました」


方針は決まった。


今回の応援団二百万人全員を、シュタインフェルト王国として表彰する。


代表はアレクサンド侯爵。


神官新興貴族たちも全員、表彰台へ上がってもらう。


会議は纏まった。




会議の方針は決まった。


今回の応援団二百万人全員を表彰する。


代表はアレクサンド侯爵。


神官新興貴族たちも全員、表彰台へ上がってもらう。


あとは準備を進めればいい。


だが、カイゼルにはもう一つ気になっていることがあった。


しばらく黙っていたカイゼルが呟いた。


「しかし、オーキス王とアイク団長、アッシュ団長、ロックウェル団長の強さは何だ?」


アイゼルとマイケルが顔を上げた。


三人とも、同じものを戦場で見ている。


カイゼルは続けた。


「我ら武の王国としての矜持が消し飛んだぞ」


冗談ではなかった。


シュタインフェルト王国は、もともと武を重んじる国である。


騎士たちは剣だけではなく、槍、メイス、ハルバード、グレイブなど、さまざまな武器を扱う。


カイゼルもアイゼルもマイケルも同じだった。


その自負があった。


ところが実際に戦場へ出てみれば、アルデバラン王国の三人の騎士団長は、デュラハンやデスナイトを相手に嬉々として斬り込んでいた。


アイク。


アッシュ。


ロックウェル。


大剣豪と剣聖の三人が剣を振るえば、強力なアンデッドがバターのように切り捨てられていく。


そしてオーキス王。


国王でありながら、自ら聖属性を付与した剣を振るい、豪剣でデュラハンやデスナイトを斬って浄化していた。


しかも四人とも楽しそうだった。


アイゼルも頷いた。


「我らも、もっと精進せねばなりません」


「まったくだ」


カイゼルは自分の手を見た。


今回の戦闘で、自分たち三人も剣豪を発現している。


教導を受ける前とは比べものにならない。


十一属性。


聖騎士。


各種耐性。


聖属性を付与したオリハルコンの武器。


さらに実戦を経験し、剣豪まで発現した。


それでも、あの四人との差ははっきりと分かった。


マイケルも否定しなかった。


「私も騎士団長を名乗っております。アイク団長たちの戦いを見て、まだ足りないと思い知らされました」


アイゼルが苦笑した。


「アリー男爵には経験が違うと言われましたしな」


三人が黙った。


その言葉は、今ならよく分かる。


力を持っていることと、使いこなせることは同じではない。


今回の戦場で三人は実際にデュラハンやデスナイトと戦った。


最初は苦戦した。


それでも戦い続けた。


やがて剣豪を発現し、剣の感覚そのものが変わった。


実戦を経験したことで、自分たちが強くなったことも分かる。


ならば、さらに経験を積めばいい。


「七万人だった騎士団を二百十万人まで増やした」


カイゼルが言った。


「教導も受けた。装備も揃えた。聖騎士も発現した。今回の戦闘で実戦も経験した」


アイゼルが頷く。


「そして陛下も私も、マイケルも剣豪を発現しました」


「ああ」


カイゼルは笑った。


「ならば、ここからだな」


武の王国だから強いのではない。


武の王国を名乗るなら、それに相応しいだけの力を身につければいい。


今回の作戦では、アルデバラン王国から多くを教わった。


騎士団の拡充。


教導。


対アンデッド戦。


そして実戦。


その結果として、自分たちがまだ強くなれることも知った。


マイケルが口を開いた。


「騎士たちも同じでしょう。アイク団長たちやアリー男爵の戦いを間近で見ています」


「ならば悪い経験ではなかったな」


カイゼルが答えた。


アイゼルも笑った。


「むしろ良い刺激になりました」


三人はもう一度頷いた。


表彰する相手から学んだものは、あまりにも多い。


恩義を示す。


それと同時に、自分たちもさらに精進する。


武の王国としての矜持が消し飛んだのなら、また積み上げればいい。


会議を終えた三人には、新しい目標ができていた。




表彰の準備はすぐに始まった。


対象は二百万人。


これまでシュタインフェルト王国が行ってきた表彰とは、規模そのものが違う。


だが、アイゼルが会議で話した通り、予算を心配する必要はなかった。


今回の表彰は、単に戦場で活躍した者へ褒賞を与えるためだけのものでもない。


シュタインフェルト王国が、アルデバラン王国から受けた助力に対して正式に感謝を示す。


その意味が大きかった。


代表はアレクサンド侯爵。


神官新興貴族たちも全員が表彰台へ上がることになった。


もちろんアリー男爵もその中にいる。


知らせを受けたアリーは首を傾げた。


「私もですか?」


自分が何をしたのか分かっていないわけではない。


リッチを浄化した。


ネクロマンサーを捕縛した。


魔石を回収した。


戦場を広域浄化した。


だが、アリーにとっては必要だったから行ったことだった。


周囲にアンデッドが残っていれば浄化する。


ネクロマンサーが人間なら捕縛する。


魔石が残っていれば回収する。


戦闘が終われば、その場所を浄化する。


それだけだった。


アレクサンドは表彰の知らせを聞いても、特に驚かなかった。


二百万人全員が対象だと聞けば、自分だけが何か特別なことをしたという話ではない。


今回の作戦には多くの者が参加している。


教導を行った者。


剣を教えた者。


実際に戦場へ入った者。


アンデッドを処理した者。


要保護民の保護を助けた者。


それぞれが必要なことを行った。


シュタインフェルト王国は、そのすべてに対して表彰することを決めたのである。


一方、王宮ではアイゼルとマイケルが準備を確認していた。


「二百万人ですからな」


アイゼルが言った。


「表彰台へ全員を上げるわけにはいきません」


「代表がアレクサンド侯爵。神官新興貴族の方々にも上がっていただく。それで十分でしょう」


マイケルが答えた。


残る者たちも表彰対象であることに変わりはない。


誰かの功績にまとめるのではなく、二百万人それぞれの働きをシュタインフェルト王国が認める。


そこが重要だった。


カイゼルも、その方針を変えるつもりはなかった。


今回の作戦で、自国の騎士団が受けた恩恵は大きい。


七万人だった騎士団は二百十万人になった。


十一属性を持つ騎士たちが揃った。


聖騎士を発現した。


状態異常への耐性も身につけた。


オリハルコンの武器を持ち、対アンデッド戦まで経験した。


その過程で多くの者から教導を受けている。


そして実戦では、アルデバラン王国から来た者たちの強さを直接見ることになった。


アイク。


アッシュ。


ロックウェル。


オーキス。


そしてアリー。


カイゼル自身も、そこから多くを学んだ。


ならば、受けた恩義を形にする。


それだけだった。


表彰の知らせはシュタインフェルト王国の騎士たちにも伝えられた。


異論を唱える者はいなかった。


特にアリーの戦いを目の前で見た騎士たちの反応は早かった。


数百体のリッチを瞬殺し、五十人を超えるネクロマンサーを捕縛し、十万個を超える魔石を回収する。


最後には戦場そのものを広域浄化した。


その姿を見た者ほど、今回の決定に納得していた。


だが、表彰されるのはアリーだけではない。


アレクサンドも。


ガイルも。


イプシオも。


アダムスも。


アリシアも。


神官新興貴族たちも。


そして応援に入った二百万人も。


シュタインフェルト王国は、そのすべてに感謝を示すことにした。


準備は進んだ。


二百万人を対象とする、これまでにない規模の表彰。


あとは、その日を迎えるだけだった。




表彰が始まった。


今回も式典の様子は百三十二か国へ生中継されている。


そして映像は教導管理システムへ保存される。


今回表彰されるのは、シュタインフェルト王国の作戦に応援として参加した二百万人。


アルデバラン王国から参加した者だけではない。


その中にはミストバルカス公国から参加した者たちもいる。


国を越えて集まった二百万人を、シュタインフェルト王国が正式に表彰する。


代表として表彰台に立つのはアレクサンド侯爵。


その周囲には神官新興貴族たちも並んでいた。


アリー男爵も、その一人として表彰台に立っている。


カイゼルが今回の功績を称えた。


七万人だったシュタインフェルト王国騎士団は二百十万人まで拡充された。


教導を受け、十一属性を身につけた。


オリハルコンの武器を揃え、聖騎士を発現し、状態異常への耐性も身につけた。


実戦では、二百万人の応援を受けながら人類の敵国家への作戦を進めることができた。


シュタインフェルト王国だけで成し遂げたものではない。


だからこそ、助けてくれた者たち全員を表彰する。


その決定に間違いはなかった。


百三十二か国で歓声が上がった。


アルデバラン王国でも。


シュタインフェルト王国でも。


ミストバルカス公国でも。


そして各国でも。


自国の者が表彰されている。


知っている者が表彰台に立っている。


今回の作戦を生中継で見ていた者たちも、その働きを知っている。


二百万人という規模の表彰にもかかわらず、誰か一人の功績として扱われることはなかった。


その中でも、ひときわ大きな声援を受けていたのがアリー男爵だった。


四百体の魔石回収ゴーレムを使い、十万個以上の魔石を回収。


高位アンデッドであるリッチを数百体瞬殺。


アンデッドたちに匿われていた五十人を超える人間のネクロマンサーを捕縛し、シュタインフェルト王国の騎士たちへ引き渡した。


そして戦闘が終わった場所には、広域のピュリフィケーションバレットレインを降らせて浄化した。


戦場でその姿を見ていたシュタインフェルト王国の騎士たちからも、大きな歓声が上がっていた。


アリーは表彰台の上で、その声援を受けている。


戦場でリッチを前にしたときとは違い、少し戸惑っているようだった。


その姿を見ていたオーキスは笑っていた。


隣にはアイク、アッシュ、ロックウェルがいる。


三人の騎士団長も嬉しそうだった。


四人とも、自分たちが表彰されることより、アリーをはじめとする者たちが他国で働きを認められたことが誇らしかった。


オーキスは表彰台を見ながら満足そうに頷いた。


シュタインフェルト王国は、受けた助力を当然とは考えなかった。


二百万人全員を表彰するという形で、きちんと感謝を示した。


それを百三十二か国の人々が見ている。


これで良かった。


オーキスはアイクたちを見る。


三人とも機嫌がいい。


ならば、このあとの予定も決まりだった。


オーキスが高らかに宣言した。


「よし! 今夜はカイゼル王たちも誘って飲むぞ!」


アイクが笑った。


アッシュも頷く。


ロックウェルにも異論はない。


戦場ではともに剣を振った。


今度は酒を飲めばいい。


百三十二か国から歓声が上がる中、表彰式は続いていた。





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