278 準備完了
準備は整った。
二百十万人の騎士たちは、対人戦と対アンデッド戦、それぞれの戦い方を確認していった。
人間を相手にする場合は、これまでと変わらない。
まず武器を回収する。
捕縛し、拘束する。
そのうえで鑑定を行う。
完全な悪人と鑑定された者は連行し、処刑する。
そうでなければ拘束したまま放置し、投降を促す。
必要以上に殺す理由はない。
そして戦闘中も索敵は常時発動する。
隷属民。
奴隷。
娼婦。
孤児。
要保護民の所在を確認し、順次保護していく。
必要な処置が終了すれば撤収する。
これまで繰り返してきた方法である。
だが、今回はアンデッドの存在が確認されている。
アンデッドが現れれば、対処を切り替える。
スケルトンやゾンビ。
レイス。
デュラハン。
デスナイト。
それらが出現した場合、騎士たちはアイテムボックスからオリハルコンの剣を取り出す。
聖属性を付与して戦闘。
倒したあとは浄化する。
ネクロマンサーへの対処も決まった。
人間であれば処刑。
すでにアンデッドとなっているなら浄化する。
相手を確認し、それぞれに適した方法で処理する。
ここまでの教導で、基本となる戦術は固まっていた。
最後に行われたのは、魔法の復習と確認だった。
光属性。
ヒールバレット。
ピュリフィケーションバレット。
ホーリーバレット。
いずれも騎士たちが元々知っている魔法である。
これまでは使う必要がほとんどなかったため、対アンデッド戦を前に改めて教導を受け、実際に使いながら確認していく。
アンデッドが少数ならば、聖属性を付与した剣で対応できる。
しかし多数が一度に出現すれば、一体ずつ剣で倒していくより魔法を使うほうが効率がいい。
二百十万人の騎士たちは、三種類のバレットを繰り返し使った。
続いて聖属性でも同じ教導を行う。
ヒールバレット。
ピュリフィケーションバレット。
ホーリーバレット。
こちらも新しく覚えるものではない。
使い方を復習し、問題なく発動できることを確認する。
光属性と聖属性。
それぞれ三種類のバレットを使い分ける。
近接戦闘ならオリハルコンの剣。
多数のアンデッドが出現すればバレット系の魔法。
人間ならば、これまで通り武器を奪い、捕縛、拘束、鑑定する。
戦う相手によって対処を切り替えるだけである。
最後の確認が終わった。
準備は整った。
騎士たちは広域索敵を開始した。
最初に探すのは武器の所在場所。
次に要保護民の所在場所。
隷属民、奴隷、娼婦、孤児がどこにいるのかを確認する。
さらに、人類の敵である為政者並びに貴族の所在場所も索敵していく。
作戦開始後に探す必要はない。
先に把握しておけばいい。
武器がどこにあるのか。
保護すべき人々がどこにいるのか。
処理すべき為政者や貴族がどこにいるのか。
二百十万人による広域索敵が続けられた。
対人戦の手順は決まった。
対アンデッド戦の手順も決まった。
武器もある。
魔法も確認した。
耐性も備わっている。
索敵も始まっている。
あとは作戦開始の号令を待つばかりだった。
広域索敵の結果が集まり始めた。
二百十万人の騎士が確認しているのは、作戦開始後に必要となる情報である。
武器の所在。
要保護民の所在。
そして、人類の敵国家を支配する為政者や貴族の所在。
アレクサンドたちも、その結果を確認していった。
「かなり広範囲に武器が保管されています」
マイケルの報告に、アレクサンドが頷いた。
「場所が分かっているなら問題ありません。作戦開始と同時に回収しましょう」
戦わせてから武器を奪う必要はない。
先に武器を回収してしまえば、それだけ抵抗する手段を減らせる。
騎士たちは索敵で確認した場所を共有していった。
次に重要なのが要保護民だった。
隷属民。
奴隷。
娼婦。
孤児。
各地にいることが確認されている。
彼らの所在を把握しておけば、戦闘に巻き込む危険を減らすことができる。
保護する順番を決める必要もない。
二百十万人の騎士がいる。
それぞれが担当する場所へ向かえばいい。
「これだけの人数がいれば、同時に動けるな」
カイゼルが索敵結果を見ながら言った。
アイゼルも頷く。
「武器の回収と要保護民の保護を並行できます。為政者や貴族の所在も分かっています」
「ならば、これまでと同じだ」
カイゼルの言葉通りだった。
規模が大きくなっても、基本となる行動は変わらない。
索敵する。
武器を回収する。
捕縛する。
拘束する。
鑑定する。
要保護民を保護する。
必要な処理が終われば撤収する。
違うのは、アンデッドが存在することだけだった。
その所在も索敵によって次々と確認されていた。
騎士たちはアンデッドを発見しても、まだ動かない。
今は索敵の段階である。
どこにいるのか。
どれほど存在するのか。
何がいるのか。
確認を続ける。
スケルトン。
ゾンビ。
レイス。
デュラハン。
デスナイト。
そしてネクロマンサー。
これまでの作戦とは異なる相手が存在していることは間違いなかった。
だが、そのために一か月以上を使って準備してきた。
騎士たちは自分のオリハルコンの剣を持っている。
聖属性を付与できる。
光属性と聖属性のヒールバレット、ピュリフィケーションバレット、ホーリーバレットも復習を終えている。
麻痺、毒、睡眠をはじめとする状態異常への耐性も身につけた。
聖騎士も発現している。
何より、相手によって戦い方を変えることが決まっていた。
人間なら、殺すことを前提にしない。
武器を奪えばいい。
捕縛し、拘束すればいい。
鑑定した結果、完全な悪人でなければ、そのまま投降を促す。
アンデッドなら違う。
剣へ切り替える。
聖属性を付与する。
多数ならバレット系の魔法を使う。
倒したあとは浄化する。
ネクロマンサーも、人間なのかアンデッドなのかで処理を変える。
騎士たちは、その手順を改めて確認していった。
カイゼル、アイゼル、マイケルも同じだった。
三人とも教導を受け、聖騎士を発現し、必要な魔法とスキル、耐性を身につけている。
剣だけではない。
槍。
メイス。
ハルバード。
グレイブ。
普段はアイテムボックスに収納している武器を、必要に応じて切り替えることもできる。
二百十万人の騎士と、その先頭に立つ三人。
広域索敵は続いた。
武器。
要保護民。
為政者と貴族。
そしてアンデッドとネクロマンサー。
必要な情報が揃っていく。
それでも誰も動かなかった。
準備は終わっている。
索敵も進んでいる。
あとは号令だけだった。
二百十万人の騎士たちは、作戦開始の時を待っていた。
作戦開始を前に、さらに応援が加わった。
アレクサンドをはじめとする新興貴族たちである。
これまで各地で教導や救済に携わってきた者たちも、今回の作戦に参加することになった。
二百十万人のシュタインフェルト王国騎士団。
カイゼル王。
アイゼル公爵。
騎士団長マイケル。
そして新興貴族たち。
準備は終わっている。
広域索敵も続いていた。
武器の所在。
要保護民の所在。
為政者や貴族の所在。
アンデッドやネクロマンサーの所在。
必要な情報は、すでに集められている。
アレクサンドが騎士たちを見渡した。
「始めましょう」
作戦が開始された。
二百十万人の騎士たちが一斉に動き出す。
最初に行うことは決まっていた。
索敵で確認していた武器の回収である。
武器庫。
兵舎。
騎士や兵士たちが持っている武器。
場所はすでに分かっている。
騎士たちはそれぞれの担当する場所へ向かい、武器を回収していった。
抵抗する者がいれば捕縛する。
拘束する。
そして鑑定。
完全な悪人であれば連行する。
そうでなければ拘束したまま投降を促した。
戦うために来たわけではない。
抵抗する手段を奪えば、それで済む者まで殺す必要はなかった。
作戦中も索敵は止まらない。
隷属民。
奴隷。
娼婦。
孤児。
事前に確認していた要保護民のもとへ、騎士たちが次々と向かっていく。
武器の回収と同時に保護が進んだ。
新興貴族たちもそれぞれ動いていた。
騎士たちだけに任せる者はいない。
索敵を続け、状況を確認し、必要な場所へ入る。
二百十万人という人数がいるため、一つの場所が終わるまで次を待つ必要もなかった。
各地で同時に作戦が進んでいく。
そして最初のアンデッドが索敵に反応した。
騎士たちの動きが変わった。
人間を相手にしていたときとは違う。
アイテムボックスへ手を伸ばす。
オリハルコンの剣へスイッチする。
刀身へ聖属性を付与した。
スケルトンが現れる。
騎士が踏み込み、剣を振るう。
聖属性を付与した刃がスケルトンを捉えた。
続いてゾンビ。
こちらにも同じように剣を振るう。
倒したアンデッドには浄化を行う。
教導で繰り返してきた通りだった。
別の場所では、複数のアンデッドが確認された。
剣だけに拘る必要はない。
騎士たちは距離を取った。
ホーリーバレット。
光属性と聖属性の魔法が放たれる。
数が多ければ魔法を使う。
近ければ剣へ切り替える。
騎士たちは状況に合わせて戦い方を変えていった。
レイスが現れた場所でも迷いはなかった。
捕縛しようとはしない。
拘束も窒息も使わない。
最初から聖属性で対処する。
これまでの戦術が通用しないからこそ、一か月以上を使って準備したのである。
デュラハン。
デスナイト。
索敵には、さらに強力なアンデッドも反応している。
ネクロマンサーの反応もあった。
だが、騎士たちは目の前の相手を処理しながら前へ進んだ。
人間なら捕縛。
アンデッドなら聖属性。
要保護民を見つければ保護する。
作戦中も索敵を切らさない。
カイゼル、アイゼル、マイケルも騎士たちとともに動いていた。
新興貴族たちも各地へ入っている。
二百十万人の騎士たちが、それぞれ自分の役割を果たしていく。
準備してきた戦術は、そのまま実戦で機能していた。
作戦は始まったばかりだった。
作戦は各地で進んでいた。
シュタインフェルト王国の騎士たちは、教導された通りに相手によって戦い方を切り替えている。
スケルトン。
ゾンビ。
レイス。
この程度のアンデッドであれば問題はない。
聖属性を付与したオリハルコンの剣で斬る。
数が多ければホーリーバレットを使う。
倒したアンデッドはそのまま浄化していく。
だが、デュラハンやデスナイトとなると話が変わった。
二百十万人の騎士たちは一か月以上の教導を受けている。
十一属性を持ち、聖騎士も発現した。
それでも実戦経験はまだ浅い。
強力な武器を持ち、剣技にも優れたデュラハンやデスナイトを相手にするには、やや荷が勝ちすぎていた。
そのとき、四人の男が転移してきた。
アルデバラン王国騎士団長アイク。
アッシュ。
ロックウェル。
そして国王オーキス。
四人は戦場へ到着すると、すぐに周囲を確認した。
シュタインフェルト王国の騎士たちが各地でアンデッドと戦っている。
その中にデュラハンやデスナイトの姿もあった。
アイクが笑った。
アッシュとロックウェルも剣を抜く。
三人とも嬉しそうだった。
大剣豪と剣聖。
剣を極めた三人にとって、デュラハンやデスナイトは避けるべき相手ではない。
むしろ自分から向かっていく相手だった。
三人は剣に聖属性を付与する。
最初に飛び出したのはアイクだった。
デュラハンが大剣を構える。
アイクは正面から間合いへ入った。
剣が走る。
デュラハンの大剣ごと、その身体が斬り裂かれた。
まるでバターでも切ったようだった。
アイクは止まらない。
次のデスナイトへ向かう。
一閃。
聖属性を付与された剣が鎧ごと切り裂く。
アッシュもデスナイトと剣を交えていた。
相手の剣を受け流し、そのまま踏み込む。
振り抜いた剣がデスナイトを斬り捨てる。
ロックウェルも同じだった。
デュラハンが振るった大剣をかわし、すれ違いざまに斬る。
三人の前では、強力なアンデッドが次々と切り捨てられていった。
聖属性を付与した剣で斬られたアンデッドは、そのまま浄化されていく。
オーキスも剣を抜いた。
その表情は国王として指揮を執るときのものではなかった。
一人の武人として戦場へ入っている。
剣に聖属性を付与する。
デスナイトがオーキスへ向かってきた。
オーキスは避けない。
真正面から豪剣を振るった。
激突する。
次の瞬間には、デスナイトの剣ごと身体が斬り裂かれていた。
聖属性を付与した豪剣による一撃。
斬られたデスナイトが浄化されていく。
オーキスはすぐに次の相手を探した。
その顔は楽しそうだった。
アイクも同じである。
アッシュも。
ロックウェルも。
強力なアンデッドを見つけるたびに、自分から向かっていく。
斬る。
浄化する。
そして次へ向かう。
四人とも完全に戦闘を楽しんでいた。
シュタインフェルト王国の騎士たちも、その姿を見ながら自分たちの役割を続けた。
無理にデュラハンやデスナイトへ挑む必要はない。
スケルトンやゾンビ、レイスを処理する。
人間なら武器を回収し、捕縛、拘束、鑑定する。
要保護民を見つければ保護する。
強力なアンデッドは、経験のある者に任せればいい。
アイク。
アッシュ。
ロックウェル。
オーキス。
四人が加わったことで、デュラハンやデスナイトへの対応も進み始めた。
その一角だけは、戦場とは思えないほど楽しそうだった。




