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戦わずに世界を変えた男――教育と物流で“循環国家”を作ったら、いつの間にか大陸が一つになっていた  作者: 慈架太子


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267 作戦開始

 作戦決行の日を迎えた。


 今回、シュタインフェルト王国騎士団に同行する者たちは、数々の経験を積んできた者ばかりだった。


 Aランク冒険者貴族。


 一班は班長ガイル、ライアン、アレックス、シェーン、カイル。


 二班は班長フェリクス、クリス、キーガン、アルバート、コリン。


 三班は班長ロイド、ランドン、アンソニー、キャム、ヤラミル。


 四班は班長ブラッド、キャメロン、ザック、トレバー、ケード。


 五班は班長レオン、ガレス、ミリア、エリック、アダムス・キンバリー。


 冒険者貴族からは、エース、レビン、トレノ、イプシオ、スレット、ベロニカ、ジリアン、ハーレイ、アレッタ。


 神官貴族は、アリシア、アリー、アレクサ、ゴルディ、ナターシャ、マックス、リッキー、トレイ、シュー、チャド。


 王国騎士団の若手男子は、アギト、ポール、ボーデン、スペンサー、パトリック、チェース、ブレンドン、ジェームソン、シェーン、コルネリズ。


 若手女子からは、アーウェン、ジェーン、ローラ、ビィナ、キラ、リア、アンナ、シンディ、ケイトリン、ギーナ。


 さらに一班のポリー、スカーレット、レベル。


 二班のアメリア、アドリアーナ、クリスティ。


 三班のフェビー、レキシー、アビー、イザベラ。


 ミストバルカス公国からも、シメオン、ジェーク、リッキー、チャド、ホセ、パトリック、シェーン、ラザロ、ブレイドン、コデイが参加していた。


 戦力を補うためではない。


 彼らには練度と経験がある。


 多数の人間が入り交じる状況で、誰を倒すのかではなく、誰を保護し、誰を無力化し、何を先に処理するべきなのかを経験してきた。


 作戦開始前には、対象国内の確認も終わっていた。


 最初に動くのは武器回収班だった。


 兵士が帯同している武器。


 王宮。


 兵舎。


 城壁。


 詰所。


 武器庫。


 貴族の屋敷。


 そして貴族の私兵が保有する武器。


 事前の索敵と遠隔確認によって、位置は把握されている。


 目的は敵軍との戦闘ではない。


 戦闘そのものを成立させないことだった。


 武器を先に回収する。


 武器庫も空にする。


 兵士も騎士も私兵も、武器を手にして抵抗する機会そのものを失わせる。


 武器回収の開始に合わせて、保護作戦班も動く。


 最優先は奴隷、隷属民、娼婦、孤児だった。


 彼らの所在もすでに調べられている。


 牢。


 奴隷収容施設。


 だが、それだけではない。


 鉱山で働かされている者。


 農地に拘束されている者。


 工房から出られない者。


 貴族の屋敷に置かれている者。


 娼館にいる者。


 自分の意思だけでは逃げられない者を、先に保護する。


 その後に自由国民保護班が動く。


 農民。


 商人。


 職人。


 普通に家族と暮らしている者たち。


 国家を倒すための作戦であっても、彼らの生活まで敵とみなす理由はない。


 そして抵抗者への対応も決まっていた。


 捕縛。


 拘束。


 それだけでいい。


 武器を失ったうえで拘束されれば、戦闘を続けることはできない。


 その場に放置し、保護作戦を優先する。


 保護すべき者を確保したあと、降伏勧告を行う。


 兵士でもいい。


 騎士でもいい。


 役人でもいい。


 降伏した者は保護する。


 抵抗を続ける者と、降伏を選んだ者を同じように扱う必要はなかった。


 ただし、為政者側は別である。


 人を奴隷として扱った者。


 隷属させた者。


 非人道的な国家体制を作り、それを維持してきた者。


 その責任は最後に取らせる。


 捕縛。


 拘束。


 連行。


 そして処刑。


 処刑を急ぐ必要はない。


 武器を回収し、保護対象を救い、自由国民を安全な状態に置き、降伏する者を受け入れてからでいい。


 経験者たちは作戦内容を確認すると、それぞれ担当する班へ入った。


 シュタインフェルト王国騎士団にとっては最初の非人道国家討伐。


 だが、同行する者たちにとっては、初めて見る状況ではない。


 勝つための準備ではなかった。


 勝てることは、すでに分かっている。


 どれだけ戦わずに終わらせられるか。


 どれだけ多くの人間を無事に保護できるか。


 それが今回の作戦だった。


 予定された時刻になった。


 最初に、武器回収班が動き始めた。




 武器回収班は、対象国の各地へ同時に移動した。


 すでに調査は終わっている。


 誰が武器を持っているのか。


 どこに武器が保管されているのか。


 王宮、兵舎、城壁、詰所、武器庫、貴族の屋敷。


 貴族の私兵が集まっている場所まで確認されていた。


 ステルス――隠蔽魔法を使った騎士たちが配置につく。


 予定された時刻になると、アポートが一斉に使われた。


 兵士が腰に下げていた剣が消える。


 門兵の槍も、騎士の剣も、私兵が持っていた武器も次々と消えていった。


 武器庫も例外ではない。


 剣。


 槍。


 弓。


 矢。


 予備として保管されていた武器まで回収される。


 王宮や兵舎だけではない。


 貴族の屋敷。


 倉庫の奥。


 地下室。


 兵舎の物置。


 事前調査で確認された武器は徹底して回収された。


 回収された武器はアイテムボックスへ収納される。


 何が起きたのか理解できない者も多かった。


 手にしていた武器が消えた。


 武器庫へ走っても空になっている。


 私兵を集めても、誰も武器を持っていない。


 戦闘を始めるための手段そのものが失われていた。


 武器の回収が進むと、保護作戦班も動き始めた。


 最初に向かったのは奴隷や隷属民がいる場所だった。


 牢。


 奴隷収容施設。


 鉱山。


 農地。


 工房。


 貴族の屋敷。


 娼館。


 所在はすでに確認されている。


 牢へ入った保護班は、閉じ込められている者を一人ずつ檻から出すようなことはしなかった。


 檻そのものが消えた。


 鉄格子。


 金属製の扉。


 錠。


 鎖。


 足枷。


 手枷。


 人を閉じ込め、拘束するために使われていた金属素材をアポートで回収していく。


 牢の中に並んでいた檻が次々となくなった。


 扉を開ける必要すらない。


 鍵を探す必要もなかった。


 回収された金属素材は、そのままアイテムボックスへ収納される。


 奴隷収容施設でも同じだった。


 鉄格子が消える。


 鎖が消える。


 足を拘束していた金属が消える。


 首や手を拘束する金属も残さない。


 再び誰かを閉じ込めるために使われる物を、その場に残しておく理由はなかった。


 鉱山でも保護が始まった。


 奴隷を監視していた者たちは、すでに武器を失っている。


 それでも保護を妨害しようとした者だけが捕縛された。


 続けて拘束する。


 動けなくなれば、それ以上相手にする必要はない。


 保護班は奴隷や隷属民の救出を優先した。


 農地や工房でも同じだった。


 逃亡を防ぐための鎖や枷があれば回収する。


 貴族の屋敷では、外からは分からない場所に閉じ込められていた者もいた。


 事前の索敵で所在は把握している。


 地下に隠されていても見落とさない。


 娼館からも女性たちが保護されていった。


 外へ出ようとする女性を止めようとした者は捕縛、拘束された。


 その者を相手に時間を使う必要はない。


 アリシアやアリーたち神官貴族も保護班とともに動いていた。


 衰弱している者を確認する。


 汚れた状態なら浄化する。


 傷や病があれば治癒する。


 孤児たちも順次、安全な場所へ移されていった。


 長期間閉じ込められていた者の中には、檻が突然消えても動こうとしない者がいた。


 自由になったことをすぐには理解できない者もいる。


 無理に急がせる必要はなかった。


 まず保護する。


 安全な場所へ移す。


 食事と水を用意する。


 事情を聞くのは、そのあとでいい。


 ガイルたち経験者は、救出が終わった場所でも索敵を続けた。


 見えている場所だけを確認して終わりにはしない。


 地下。


 隠し部屋。


 坑道の奥。


 離れた農地。


 閉じ込められている者が一人でも残っていないか確認する。


 シュタインフェルト王国騎士団も、その手順を見ながら同じように動いた。


 武器だけを奪えばいいのではない。


 人を閉じ込めるための設備まで消してしまう。


 武器回収状況と保護状況は、教導管理システムへ次々と登録されていった。


 大規模な戦闘は起きていない。


 武器を失い、抵抗を諦めた者も多かった。


 奴隷、隷属民、娼婦、孤児の保護は着実に進んでいる。


 そして、役目を失った檻や鎖まで消えていった。


 次に動くのは、自由国民の保護班だった。




 奴隷、隷属民、娼婦、孤児の保護が進むと、自由国民保護班も動き始めた。


 農民。


 商人。


 職人。


 家族とともに普通に暮らしていた者たち。


 彼らまで非人道国家の責任を負う必要はない。


 索敵によって住民の分布は確認されている。


 保護班は各地へ分かれ、住民の安全を確保していった。


 すでに武器の大半は回収されている。


 王宮も兵舎も詰所も武器庫は空になった。


 貴族の私兵も武器を失っている。


 牢や奴隷収容施設では、檻や鉄格子、金属製の扉、鎖、手枷、足枷まで回収されていた。


 そのため各地で混乱は起きていたが、大規模な戦闘にはならなかった。


 農村では、何が始まったのか分からず家から出てこない者もいた。


 保護班は無理に連れ出さなかった。


 周囲の安全を確認する。


 兵士や私兵が近くにいれば、その状態を調べる。


 武器を失ったまま何もしない者なら、それでいい。


 住民に危害を加えようとした者だけを捕縛し、拘束した。


 商人や職人が暮らす町でも同じだった。


 店や工房を壊す理由はない。


 商品を奪う理由もない。


 家から財産を持ち出させる必要もなかった。


 保護するとは、すべての住民を一か所へ集めることではない。


 危険から切り離せればいい。


 自宅にいる方が安全なら、そこで待ってもらう。


 移動が必要な場所では安全な場所へ移す。


 状況に合わせて判断された。


 経験者たちも、シュタインフェルト王国騎士団の動きを見ながら必要なところだけを補った。


 アギトたち若手騎士も、すでに作戦の意味を理解し始めていた。


 敵国へ来たからといって、目の前にいる者すべてが敵ではない。


 剣を持っていた兵士ですら、武器を失ったあと抵抗しないのであれば、急いで捕らえる必要はない。


 優先すべきは住民だった。


 やがて、奴隷や隷属民などの保護状況と、自由国民の安全確認が教導管理システムへ集まり始めた。


 アイゼルは各地から登録される情報を確認した。


「取り残されている者はいないか?」


 マイケルが索敵結果を確認する。


「確認を続けています。地下や離れた施設についても再確認中です」


「なら、急がなくていい。確実にやれ」


 武器を奪うことには成功した。


 保護も進んでいる。


 次に必要なのは、武装していた側への対応だった。


 兵士。


 騎士。


 貴族の私兵。


 役人。


 すでに武器を失っている者がほとんどだったが、なお抵抗しようとする者はいた。


 騎士団は事前に決めた手順を変えなかった。


 捕縛。


 拘束。


 それだけだった。


 魔法を使おうとした者も捕縛される。


 逃げながら抵抗を続けようとした者も拘束される。


 倒れた相手へ追撃することはない。


 拘束した者はその場に残し、次へ進む。


 殺す理由がなかった。


 ガイルは周囲を索敵し、抵抗できる者がほとんど残っていないことを確認した。


「そろそろだな」


 アイゼルにも同じ情報が届いていた。


 奴隷、隷属民、娼婦、孤児の保護はほぼ終了。


 自由国民についても安全の確認が進んでいる。


 主要な武器は回収済み。


 武器庫も空になっている。


 抵抗者は各地で拘束されていた。


 ここまで進めば、次の段階へ移れる。


「降伏勧告を行う」


 命令が伝えられた。


 対象は兵士だけではない。


 騎士も私兵も役人も同じだった。


 抵抗をやめ、降伏するのであれば保護する。


 これまで何をしていたのかは、その後に確認すればいい。


 降伏した者まで、その場で敵として扱う必要はない。


 勧告は各地へ伝えられた。


 すでに武器はない。


 周囲では抵抗した者たちが捕縛、拘束されている。


 それでも殺されてはいない。


 降伏すれば保護されることも伝えられた。


 一人が抵抗をやめた。


 続いて別の場所でも降伏する者が出た。


 兵士が降伏する。


 騎士も続く。


 役人の中からも保護を求める者が現れた。


 降伏した者は拘束されなかった。


 保護対象として分けられ、安全を確保されていく。


 ホセはその様子を静かに見ていた。


 武器を奪ったあとに、行き場まで奪ってはいけない。


 降伏という出口があるから、戦い続ける理由もなくなる。


 やがて抵抗する者は少数になっていった。


 残った者は捕縛され、拘束された。


 これで一般国民と、降伏を選んだ兵士や騎士、役人の保護は進められる。


 だが、まだ作戦は終わっていない。


 アイゼルは王宮へ視線を向けた。


 最後に残っているのは、この国をこの形にしてきた為政者側だった。




 降伏勧告のあとも、索敵は続けられていた。


 兵士や騎士、役人の中から降伏する者が相次ぎ、抵抗を続ける者は捕縛、拘束されている。


 自由国民の安全も確保された。


 奴隷、隷属民、娼婦、孤児も保護されている。


 残るのは為政者側だった。


 王宮と有力貴族の屋敷は、すでに包囲する必要すらない状態になっていた。


 武器はない。


 王宮内の武器庫も空である。


 護衛の騎士や兵士が持っていた武器も回収されている。


 貴族の私兵も同じだった。


 逃亡しようとしても、索敵から逃れることはできない。


 ステルスを使って姿を隠したところで、七万人の王国騎士団が使う索敵を抜けられるものではなかった。


 テレポーテーションまである。


 逃げるための時間も距離も、ほとんど意味を失っていた。


 アイゼルは為政者側の所在を確認した。


「始めよう」


 シュタインフェルト王国騎士団が動いた。


 抵抗した者には捕縛魔法が使われる。


 続けて拘束する。


 剣を交えることはなかった。


 武器を失ってなお魔法で抵抗しようとした者も、同じように捕縛、拘束された。


 逃亡を選んだ者もすぐに見つかった。


 王宮の裏から逃げた者。


 地下へ隠れた者。


 使用人に紛れようとした者。


 貴族の屋敷から離れようとした者。


 事前に人員まで確認している。


 誰が為政者側なのか分からなくなることはなかった。


 アギトたち若手騎士は、経験者とともにその手順を確認しながら動いた。


 捕縛。


 拘束。


 連行。


 必要なのはそれだけだった。


 王宮から為政者たちが次々と連れ出されていく。


 有力貴族も同様だった。


 ガイルたちは周辺を確認し、逃亡者が残っていないか索敵を繰り返した。


 一度見ただけで終わらない。


 地下。


 隠し部屋。


 別邸。


 離れた施設。


 確認できる場所を一つずつ潰していく。


 その間にも、保護された者たちの確認は続いていた。


 神官貴族たちは奴隷や隷属民の治癒と浄化を続ける。


 娼婦や孤児にも必要な処置を行う。


 自由国民は、それぞれの町や村で安全が確認されていた。


 降伏した兵士や騎士、役人も保護対象として分けられている。


 為政者側だけが切り離された。


 アイゼルは教導管理システムに集まる情報を確認した。


「保護対象は?」


 マイケルが答える。


「確認を続けています。現在までに大きな取り残しは確認されていません」


「為政者側は?」


「捕縛と連行が進んでおります」


 アイゼルは頷いた。


「最後まで索敵を続けろ。処刑を急ぐ必要はない」


「御意」


 倒すことが目的なら、とっくに終わっている。


 だが今回の作戦では、為政者の処刑は最後と決めていた。


 先に民を救う。


 降伏する者に道を残す。


 抵抗する者を無力化する。


 それらが終わってから責任を取らせる。


 やがて、為政者側の捕縛が完了した。


 連行された者たちは一か所に集められた。


 ここでも抵抗する者はいた。


 だが拘束されたままでは何もできない。


 アイゼルは彼らを見渡した。


 その背後には、長年隷属されてきた人々がいる。


 奴隷として使われていた者がいる。


 逃げる自由を奪われていた者がいる。


 娼館から出ることさえ許されなかった者がいる。


 その体制を維持してきた者たちを、一般の兵士や役人と同じように扱うつもりはなかった。


「処刑を行う」


 決定された手順どおり、為政者側の処刑が始まった。


 長くはかからなかった。


 処刑が終わったあとも、騎士団は仕事を止めなかった。


 再び広域索敵を行う。


 武器が残っていないか。


 閉じ込められた者が残っていないか。


 拘束されたまま忘れられている者はいないか。


 保護から漏れた者はいないか。


 最後の確認が続けられた。


 マイケルは一連の作戦記録を教導管理システムへ登録した。


 武器回収。


 金属製の檻や鉄格子、鎖、枷の回収。


 奴隷、隷属民、娼婦、孤児の保護。


 自由国民の保護。


 抵抗者の捕縛、拘束。


 降伏勧告。


 降伏者の保護。


 為政者側の捕縛、拘束、連行、処刑。


 最初の一国で、手順は実際の経験になった。


 アイゼルはシュタインフェルト王国の若い騎士たちを見た。


 もう説明を聞いただけの者ではない。


 一国を最初から最後まで経験した。


「次も同じだ」


 マイケルが頷いた。


「一国ずつですね」


「ああ。一国ずつだ」


 一つ目の非人道国家は消滅した。


 だが、救出を待つ人々はまだ大陸各地に残っていた。





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