167 ガレス
エミリアは悩んでいた。
男爵に叙爵されたことは、素直に嬉しい。
これまでの働きを王国が功績として認めてくれた。領地まで与えられ、新しい生活も始まろうとしている。
だが、一つだけ深刻な問題が残っていた。
パートナーである。
周囲を見れば、皆には相手がいた。
エースとアリー。
レビンとアレクサ。
トレノとゴルディ。
スレットとナターシャ。
ベロニカとマックス。
ジリアンとリッキー。
エミリーとトレイ。
ハーレイとシュー。
アレッタとチャド。
そしてイプシオとアリシア。
エミリアだけが一人だった。
「困ったわね……」
これは単に恋人が欲しいという話ではない。
エミリアはサキュバスだった。
相手がいなければ、いずれ死んでしまう。
だから誰かを見つける必要がある。
しかし、誰でもいいわけではなかった。
サキュバスの種族特性は強い。
弱い男では耐えられない。
自分は生きるために相手を必要とするのに、その相手が弱ければ殺してしまう。
実に厄介な種族だった。
男爵となり、領地まで持つことになった。
領民も集まり始めている。
人生が大きく動き始めた今だからこそ、いつまでも放置できる問題ではなかった。
そんなエミリアの相手として、一人の男が候補に上がった。
ガレス。
アレクサンドやガイルたちと行動する貴族冒険者の一人だった。
エミリアはガレスを鑑定した。
強い。
豪傑と呼んで差し支えない。
サキュバスである自分の相手としても、申し分なかった。
だが、エミリアが気にしたのは強さだけではない。
ガレスは無骨だった。
口数も少ない。
必要以上に自分を飾ることもしない。
エミリアは元々、そういう男が好みだった。
「……結構いいのよね」
改めて考えてみても、悪くない。
むしろ気に入っていた。
◇
エミリアはガレスをじっと見つめた。
視線に気づいたガレスが振り返る。
「何だ?」
「私、あなた結構好きよ」
「……そうか」
エミリアは眉を上げた。
「嫌?」
「嫌ではない」
「相変わらずね」
「何がだ?」
「そういうところよ」
ガレスには意味が分からなかった。
今度はガレスがエミリアを見る。
長身。
均整の取れた豊かな体つき。
整った顔立ち。
サキュバスらしい艶やかさもある。
美しい。
それは認めるしかなかった。
性格も知らないわけではない。
ガレス自身、文句はなかった。
「付き合ってみない?」
エミリアが聞いた。
ガレスは少し考えた。
「俺でいいのか?」
「あなたがいいから言ってるの」
「そうか」
「それで?」
「俺は構わない」
エミリアが笑った。
「決まりね」
話は驚くほどトントン拍子に進んだ。
◇
二人のことを知ったミリアは、目を輝かせた。
「ガレス! おめでとう!」
「まだ付き合い始めただけだ」
「それでもよ!」
ミリアは本気で喜んでいた。
エリックもやって来て、ガレスの肩を叩く。
「良かったな」
「お前まで……」
「同じパーティーで何年やってると思ってる。祝わせろ」
ガレスは言葉に詰まった。
ミリアとエリックは、同じパーティーで活動してきた仲間である。
気を遣うような間柄ではない。
エミリアが隣で笑っていた。
「いい仲間ね」
「ああ。それは否定しない」
「大切にしなさいよ」
「分かっている」
やがて話はイプシオたちにも伝わった。
「ガレス卿、おめでとうございます」
イプシオが祝福する。
「ありがとう」
「エミリアも良かったな」
「ええ。ありがとう」
エミリアとイプシオたちは、ダークライト魔導公国から一緒に亡命してきた。
その後、ともに冒険者になった間柄でもある。
だからエミリアには普段通り接する。
だが、ガレスはアレクサンドやガイルたちと並ぶ貴族冒険者である。
イプシオたちも、その礼節を崩すことはなかった。
アレクサンドたちにも二人の話は伝わった。
こちらも素直に祝福した。
人間とサキュバス。
本来ならば危険を伴う組み合わせだった。
弱い男なら、サキュバスの種族特性に耐えられない。
だが、ガレスは平然としていた。
エミリアも安心していた。
生きるために必要だから選んだだけではない。
自分の好みでもある。
ガレスもエミリアを気に入っている。
男爵となったエミリアが抱えていた大きな悩みは、無骨な一人の男との出会いによって解決しようとしていた。
エミリアとガレスが付き合い始めたという話は、仲間たちの間ですぐに広まった。
特に喜んでいたのは、ガレスと同じパーティーで活動してきたミリアとエリックだった。
「本当に良かったわね、エミリア」
ミリアが嬉しそうに言う。
「ありがとう」
「ガレスからこういう話が出るなんて思ってなかったもの」
「私から言ったのよ」
「やっぱり」
ミリアは納得したように頷いた。
少し離れた場所にはガレスがいる。
こちらで自分の話をしていることには気づいているはずだが、特に気にした様子もない。
「相変わらずね」
ミリアが苦笑する。
「私はああいうところが好きなのよ」
「なら安心したわ」
「無骨な男が好みなの」
「ガレスには聞かせない方がいいかもしれないわね」
「どうして?」
「もっと無口になるかもしれないから」
エミリアが笑った。
◇
そのガレスは、今度はエリックに捕まっていた。
「それで、どうなの?」
「何がだ?」
「エミリアよ」
「付き合っている」
「それは知ってるわ」
「なら、なぜ聞く?」
エリックが呆れたようにガレスを見る。
「あなた、本当に変わらないわね」
「何がだ?」
「もう少し嬉しそうにしてもいいでしょう?」
「嬉しいぞ」
「見えないのよ」
ガレスは黙った。
エリックは小さく息を吐く。
「エミリアのこと、気に入ってるんでしょう?」
「ああ」
「だったら、それくらい本人にも言ってあげなさいよ」
「聞かれれば答えている」
「聞かれる前に言いなさい」
「必要なのか?」
「必要よ」
即答だった。
ガレスは少し考える。
「分かった」
「本当に分かったの?」
「ああ」
エリックはまだ不安そうだった。
同じパーティーで活動してきただけに、ガレスが冷たい男ではないことは知っている。
仲間が危険なら助ける。
必要な時には前へ出る。
頼まれたことも黙ってやる。
ただ、とにかく言葉が少ない。
「エミリアも大変ね」
「何がだ?」
「何でもないわ」
エリックは諦めた。
◇
その日の夕方。
エミリアとガレスは二人で歩いていた。
付き合い始めたとはいえ、ガレスの態度はほとんど変わっていない。
エミリアはそんな横顔をしばらく眺めていた。
「ねえ」
「何だ?」
「私のどこが好き?」
ガレスの足が僅かに遅くなった。
「急だな」
「恋人なんだから聞いてもいいでしょう?」
「そうだな」
ガレスは真面目に考え始めた。
「綺麗だ」
「それから?」
「強い」
「それから?」
「自分で考えて動ける」
エミリアの表情が少し変わった。
「まだある?」
「よく笑う」
「結構見てるのね」
「見ている」
ガレスは平然と答えた。
エミリアが笑う。
「あなた、言葉が少ないだけなのね」
「よく言われる」
「ミリアとエリックに?」
「ああ」
「でしょうね」
今度はガレスが尋ねた。
「お前は、俺のどこがいいんだ?」
「無骨なところ」
「そこなのか?」
「そこがいいのよ」
ガレスにはよく分からなかった。
「強いし、変に自分を飾らないでしょう。それに私がサキュバスでも、態度を変えないわ」
「サキュバスなのは知っている」
「怖くない?」
「なぜだ?」
エミリアは一瞬黙り、それから楽しそうに笑った。
「そういうところも好きよ」
「そうか」
「だから、もう少し喜びなさい」
「喜んでいる」
「やっぱり分かりにくいわね」
◇
エミリアには確認しておかなければならないこともあった。
自分の種族特性である。
弱い男では相手にならない。
場合によっては殺してしまう。
好きになった相手だからこそ、そこだけは曖昧にできなかった。
「本当に平気?」
「ああ」
「無理はしてない?」
「していない」
エミリアはガレスを鑑定した。
問題はなかった。
ガレスは普段と何も変わらない。
豪傑と呼ばれるだけの強さは伊達ではなかった。
エミリアはようやく安心する。
「良かったわ」
「そんなに心配だったのか?」
「当たり前でしょう。好きになった男を殺したくないもの」
ガレスが黙った。
少しして口を開く。
「俺なら大丈夫だ」
「ええ」
エミリアは微笑んだ。
「そのようね」
人間とサキュバス。
普通なら命の危険さえある組み合わせだった。
だが、二人にとって種族の違いは、越えられない壁にはならなかった。
ガレスにはエミリアを受け止められる強さがある。
エミリアはそんなガレス自身を気に入っている。
生きるためだけに選んだ相手ではない。
好きになった男が、たまたま自分の種族特性にも耐えられる男だった。
エミリアにとっては、それが何より嬉しかった。
エミリアとガレスが付き合い始めたことは、アレクサンドたち二十七人にも伝わった。
皆が驚きはしたものの、反応は祝福一色だった。
アンジェラも二人のところへやって来た。
「ガレスさん、エミリアさん。おめでとうございます」
「ありがとう」
「ありがとう、アンジェラ」
アンジェラは穏やかに微笑んだ。
「お二人が幸せなら、それが一番だと思います」
「ええ。私もそう思っているわ」
エミリアも笑みを返した。
アンジェラはそれ以上、二人の関係について細かく聞かなかった。
本人たちが互いを選んだ。
それなら素直に祝えばいい。
「これからも、お幸せに」
「ああ」
「ありがとう」
アンジェラらしい静かな祝福だった。
その隣からガイルがやって来る。
「良かったな、ガレス」
「ああ」
こちらは普段通りだった。
ガイルとガレスは同格の貴族冒険者である。
「エミリアも、こいつでいいのか?」
「こいつがいいのよ」
「なら何も問題ないな」
「随分簡単ね」
「本人同士がいいと言ってるんだ。俺が何を言うんだ?」
「それもそうね」
ガレスも頷いた。
「俺もそう思う」
「あなたはもう少し何か言いなさいよ」
エミリアが笑う。
ガイルも笑った。
◇
イプシオたちにとっても、エミリアのことは他人事ではなかった。
ダークライト魔導公国から一緒に亡命してきた。
その後、ともに冒険者になった間柄である。
エミリアがサキュバスであることも知っている。
パートナーがいなければ生きていけない。
しかし弱い男では相手にならない。
本人にそのつもりがなくても、相手の命を奪ってしまう可能性がある。
だからこそ、ガレスとの関係は皆にとっても安心できるものだった。
「本当に良かったな」
イプシオがエミリアに声をかけた。
「ありがとう」
「ガレス卿なら、強さの面でも心配ありませんね」
エースが言う。
「ええ。私も確認したわ」
エミリアが笑う。
アリシアは少し違うところを見ていた。
「でも、それだけじゃないでしょう?」
「もちろんよ」
エミリアは即答した。
「強いだけなら、それだけで付き合ったりしないわ」
「そうよね」
「私、無骨な男が好きなの」
アリシアがガレスを見る。
少し離れたところで、ミリアとエリックに何かを言われている。
ガレスは困ったような顔をしていた。
「確かに無骨ね」
「でしょう?」
エミリアは楽しそうだった。
イプシオもその表情を見て安心する。
生きるために仕方なく選んだ相手ではない。
自分が気に入った男を自分で選んだ。
その男が、サキュバスの種族特性にも耐えられるほど強かった。
それなら何も心配することはなかった。
◇
アレクサンドも二人を祝福した。
「ガレス、おめでとう」
「ありがとう」
「エミリアも良かったわね」
「ええ」
エミリアは素直に頷いた。
「正直、かなり悩んでいたのよ」
「パートナーのこと?」
「そう。誰でもいいわけじゃないもの」
アレクサンドにも事情は分かっている。
サキュバスの種族特性は本人の意思だけではどうにもならない。
「ガレスなら大丈夫だったのね」
「ええ。鑑定しても問題なかったわ」
「なら安心ね」
アレクサンドはそれ以上踏み込まなかった。
以前なら、エミリアの将来まで考えて何か世話を焼こうとしたかもしれない。
だが今は違う。
エミリアが自分で選んだ。
ガレスも受け入れた。
問題がないことも確認した。
ならば二人に任せればいい。
「幸せになりなさい」
「ありがとう」
エミリアが笑った。
◇
祝われる側のガレスは、少し困っていた。
次々と仲間がやって来る。
「良かったな」
「おめでとう」
「うまくやれよ」
そのたびに、
「ああ」
「ありがとう」
と答える。
戦闘なら何時間続いても苦にならない。
だが、こうして自分の恋愛について話題にされ続けるのは慣れていなかった。
「疲れた?」
エミリアが聞く。
「少しな」
「魔物と戦うより?」
「比較にならん」
「どっちが大変なの?」
「こっちだ」
エミリアが声を上げて笑った。
「剣豪や聖より怖いのね」
「そういう問題ではない」
ガレスは真面目に答える。
エミリアはますます楽しそうだった。
「でも、嫌じゃないでしょう?」
「何がだ?」
「皆に祝ってもらえること」
ガレスは少し考えた。
「……嫌ではない」
「それなら良かった」
エミリアがガレスの隣に並ぶ。
少しして、ガレスが口を開いた。
「俺も、お前が相手で良かったと思っている」
エミリアが足を止めた。
「どうしたの、急に?」
「エリックに言われた」
「何を?」
「思っていることは、聞かれる前に言えと」
一瞬の沈黙。
エミリアが笑った。
「エリック、いいこと言うじゃない」
「そうなのか?」
「ええ。ちゃんと覚えておきなさい」
「ああ」
ガレスは真面目に頷いた。
無骨なところは何も変わっていない。
エミリアも、それを変えてほしいとは思っていなかった。
ただ少しだけ、言葉にしてくれればいい。
人間とサキュバス。
本来なら簡単ではない組み合わせだった。
それでも二人の関係は、仲間たちの祝福の中で穏やかに始まっていた。
エミリアとガレスが付き合い始めてから数日が過ぎた。
二人の生活が大きく変わったわけではない。
ガレスには貴族冒険者としての仕事がある。
エミリアには、新しく男爵として任された領地がある。
特にエミリアは忙しかった。
「移住希望者が十二万人を超えました」
文官から報告を受け、エミリアは教導管理システムを確認する。
「まだ増えているの?」
「はい。現在も希望者が来ております」
「なら、そのまま受け入れて」
「承知致しました」
十万人はあくまで目安である。
超えたからといって募集を止める理由はなかった。
農業経験者。
牧畜経験者。
建築職人。
料理人。
商人。
教師。
様々な人々が、新しい土地での生活を希望している。
エミリアはその情報を確認しながら、文官たちと相談していく。
「この辺りは農地にできそうね」
「はい。水源も近くにございます」
「住宅地は少し離しましょう。学校と公衆浴場も必要ね」
「すでに候補地を選定しております」
「仕事が早いわね」
エミリアが笑った。
一人で領地を作っているわけではない。
文官がいる。
代官がいる。
家令がいる。
領民の中にも様々な技能を持った者がいる。
自分は彼らの意見を聞き、判断すればいい。
少しずつ領主という立場にも慣れ始めていた。
◇
仕事が一段落すると、エミリアはガレスと並んで領地の地図を眺めていた。
「随分広いな」
「でしょう?」
エミリアが地図を指す。
「ここに最初の町を作る予定よ。川にも近いし、平地も広いわ」
「こちらは?」
「農地。もう少し先の草原は牧畜に使えると思う」
ガレスが頷いた。
「十万人どころではないな」
「ええ。もっと増えても大丈夫よ」
人が増えれば住宅が必要になる。
農地も必要になる。
商店も学校も増える。
そして、それを作るための雇用も生まれる。
「領主って大変だけど、面白いわね」
「向いているんじゃないか?」
エミリアがガレスを見る。
「本当にそう思う?」
「ああ」
短い返事だった。
だが、ガレスが適当に褒める男ではないことは分かっている。
「ありがとう」
エミリアは素直に笑った。
◇
「ねえ、ガレス」
「何だ?」
「私たち、これからどうする?」
「付き合っている」
「それは知ってるわよ」
エミリアが吹き出した。
「そうじゃなくて、その先」
ガレスも意味を理解した。
「結婚か?」
「例えばね」
「考えていないわけではない」
「あら」
「だが、付き合い始めたばかりだ」
「そうね」
「急ぐ必要もないだろう」
エミリアは少し考えてから頷いた。
「私もそれでいいわ」
パートナーが必要だからといって、何もかも急いで決める必要はない。
今は二人で過ごしてみればいい。
エミリアがガレスの腕に自分の腕を絡めた。
ガレスはそのままにしている。
「嫌?」
「嫌ではない」
「またそれ?」
ガレスが少し考える。
エリックから言われたことを思い出した。
「……嬉しい」
エミリアが目を丸くする。
「ちゃんと覚えてるじゃない」
「ああ」
「偉いわ」
「子供扱いするな」
エミリアが楽しそうに笑った。
◇
その笑顔のまま、エミリアはふと遠くを見る。
男爵になった。
領地を持った。
十万人を超える人々が、自分の領地で暮らすことを希望している。
そして隣には、自分が選んだ男がいる。
ほんの少しだけ、昔のことを思い出した。
ダークライト魔導公国にいた頃。
自分は娼婦だった。
そしてサキュバスだった。
魔族である。
それだけで警戒しなければならないことがあった。
亜人狩り。
自分が狩られる側になる可能性を、常に忘れることはできなかった。
それだけではない。
サキュバスは生きるために相手を必要とする。
だが、弱い男を相手にすれば、その命を奪ってしまう。
生きるために必要な相手を探しながら、自分自身も狩られないように生きる。
あの頃は、それが普通だった。
将来、自分が貴族になるなど考えたこともない。
自分の領地を持つことも。
十万人を超える人々が、自分の領地で暮らしたいと希望することも。
好きな男を、自分から選ぶことも。
「ガレス」
「何だ?」
「私、結構運がいいみたい」
「急にどうした?」
「昔を少し思い出しただけよ」
ガレスはエミリアを見る。
だが、詳しく聞こうとはしなかった。
「そうか」
「ええ」
それでよかった。
昔を忘れたわけではない。
忘れる必要もない。
あの頃があったからこそ、今の自分がどれほど恵まれているのか分かる。
逃げる場所を探しているのではない。
今では自分の領地がある。
しかも、そこへ暮らしたいと願う人々を迎える側になった。
エミリアは隣のガレスを見る。
「何だ?」
「何でもないわ」
「そうか」
「でも、あなたで良かった」
ガレスが少し黙る。
今度は聞かれる前に答えた。
「俺もだ」
エミリアが嬉しそうに笑った。
無骨なところは変わらない。
それでいい。
エミリアはガレスの腕を離さなかった。
ガレスも離そうとはしない。
二人は並んだまま、新しく始まる領地の地図を眺めていた。




