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戦わずに世界を変えた男――教育と物流で“循環国家”を作ったら、いつの間にか大陸が一つになっていた  作者: 慈架太子


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164 決着

 アダムスとアリシアの戦いは、熾烈を極めていた。


 剣神と剣神。


 互いに相手の動きを読み、僅かな隙を探す。


 アダムスが踏み込む。


 アリシアが受け流す。


 そのまま反撃。


 アダムスが身体を捻ってかわした。


 剣が交差する。


 一度離れる。


 再び踏み込む。


 何十合と打ち合っても決まらない。


 観客たちは声を上げることさえ忘れていた。


 アイクも、アッシュも、ロックウェルも黙っている。


 剣聖へ到達した三人だからこそ、二人がどれほど高い場所で戦っているのかが分かる。


 アダムスが大きく踏み込んだ。


 剣が走る。


 アリシアは受けた。


 激しい音。


 アダムスがさらに一歩出る。


 二撃目。


 アリシアが流す。


 三撃目。


 今度はかわした。


 そしてアダムスの身体が僅かに前へ流れた。


 アリシアが動く。


 剣を振り抜くのではない。


 最短の軌道で伸ばした。


 アダムスも反応する。


 だが、僅かに遅かった。


 アリシアの剣先が、アダムスの胸元で止まる。


 静寂。


 審判が確認する。


「勝者――アリシア!」


 一瞬遅れて、大歓声が爆発した。


 アリシアは自分の剣先を見た。


 そして小さく呟く。


「勝った」


 アダムスはしばらく動かなかった。


 やがて自分の剣を下ろす。


「……負けた」


 悔しくないわけではない。


 だが、その表情は穏やかだった。


 二人が向かい合う。


「ありがとうございました」


「こちらこそ、ありがとうございました」


 互いに頭を下げた。


 遺恨などなかった。


 勝者はアリシア。


 敗者はアダムス。


 ただ、それだけだった。


 次の瞬間。


 拍手が始まった。


 一人。


 二人。


 やがて会場全体へ広がっていく。


 誰も止めようとしない。


 アリシアだけに送られているのではなかった。


 アダムスにも送られている。


 二人の剣神が見せた戦いそのものへの称賛だった。


 ガイルも拍手していた。


 イプシオも。


 アレクサンドも。


 オーキスも。


 三騎士団長も。


 アルフレッド侯爵も。


 バイオレットは笑顔で二人を見つめていた。


 延べ一億人が参加した武闘大会。


 その最後の戦いが終わった。


 ◇


 しばらくして、オーキスが試合場の中央へ立った。


 王国中の空に巨大な映像が映し出される。


 王都だけではない。


 地方都市。


 農村。


 開拓地。


 かつて帝国や公国、宗教国家から逃れてきた人々が暮らす地域にも。


 同じ映像が生中継されていた。


 風魔法による拡声で、オーキスの声も届けられる。


 オーキスは長い演説を用意していなかった。


 国民を見渡す。


「皆、よく戦った」


 その一言から始めた。


「勝った者も、負けた者も、豪や聖に覚醒した者も、今日より明日を信じて精進しろ」


 国中が静かに聞いていた。


「余もそうする」


 その言葉に、多くの者が顔を上げた。


 国王自身も大会へ参加した。


 豪と戦い、剣豪へ覚醒した。


 上から努力を命じているのではない。


 自分も同じように進むと言っている。


「皆の者、ご苦労であった」


 オーキスが笑った。


「この戦いの記録は、冒険者ギルドへ行けば予選から全て見られるぞ。存分に楽しめ」


 それだけだった。


 短い閉会の挨拶。


 だが、その言葉は多くの国民の魂を射抜いた。


 遠く離れた地方。


 空に映るオーキスを見上げていた一人の男が、目元を拭った。


「俺……この国に亡命してよかった」


 隣にいた者も黙って頷く。


 別の町でも。


 別の村でも。


 すすり泣く声が聞こえていた。


 生まれた国ではない。


 それでも今、自分が暮らしている国の王が、


 勝った者だけを称えなかった。


 負けた者にも、明日があると言った。


 アレクサンドは、その光景を見ながら笑った。


「陛下は生粋の人たらしね」


 もう頭痛は起きなかった。


 以前なら何か一言言いたくなっていたかもしれない。


 だが、今は素直に認められる。


 オーキス・アルデバランという王は、こういう男なのだ。


 大会に参加した者たちの顔も晴れやかだった。


 勝った者。


 負けた者。


 豪へ届いた者。


 聖へ進んだ者。


 届かなかった者。


 それぞれ結果は違う。


 それでも多くの者が、すでに次を見ていた。


 バイオレットは、その光景を見ながら静かに笑っていた。




 武闘大会が終わっても、王国中の熱気はなかなか冷めなかった。


 むしろ閉会宣言の後から、人々は大会について盛んに語り始めていた。


「決勝を見たか?」


「もちろんだ。アダムス卿が勝つと思っていたんだがな」


「俺もだ。だが、アリシア殿は強かった」


「剣神同士だぞ。どちらが勝ってもおかしくなかった」


 酒場でも食堂でも公衆浴場でも、話題は武闘大会一色だった。


 だが、人々が見ているのは決勝だけではない。


「第三千四百ブロックの槍使いを覚えているか?」


「衛兵の男か?」


「違う。元農民の方だ」


「あいつか。槍豪になった奴だろう?」


 延べ一億人。


 一万か所の予選会場。


 そこで行われた膨大な試合は、教導管理システムに記録されている。


 オーキスが閉会宣言で話した通り、冒険者ギルドへ行けば予選から本選まで見ることができた。


 そのため大会終了直後から、各地の冒険者ギルドには人が集まっている。


「第六百二十一ブロックを見せてくれ!」


「どの部門でしょう?」


「槌だ!」


「承知しました」


 別の場所では、老人が自分の試合を見ていた。


「ここじゃな」


「何がです?」


「わしが負けた原因じゃ。踏み込みが遅い」


 老人は何度も同じ場面を確認する。


「次はここを直す」


 負けた試合を恥じているわけではない。


 次に進むための教材にしていた。


 その隣では、少年が父親の試合を見ている。


「父ちゃん、ここで負けた!」


「分かっとる」


「相手の槍、速いな」


「ああ。だから次は受け方を覚える」


「俺にも教えて」


「まずは基礎からだ」


 親子が笑う。


 オーキスが最後に言った。


 今日より明日を信じて精進しろ。


 国民は、すでにそれを始めていた。


 ◇


 大会本部では、アイク、アッシュ、ロックウェルの三人がようやく一息ついていた。


「終わったな……」


 アイクが椅子へ深く腰を下ろす。


「ああ」


 アッシュも疲れた顔をしている。


 ロックウェルは教導管理システムに保存された大会記録を眺めていた。


「とんでもない規模になったものだ」


「陛下は王国一の剣士を見たいと言っただけだったんだがな」


 アイクが笑う。


「お前も乗り気だっただろう」


「否定はせん」


 三人が笑った。


 延べ一億人が参加した。


 一次予選だけで四千五百六十三人の豪と、七百五十三人の聖が生まれた。


 二次予選と本選でも覚醒者は増え続けた。


 剣だけではない。


 槍。


 斧。


 槌。


 ハルバード。


 グレイブ。


 棍。


 様々な武器から豪と聖が生まれた。


 アリシアは剣神へ到達した。


 だが、大会で見つかったのは武の才能だけではない。


 審判が上手い者。


 参加者を滞りなく誘導できる者。


 会場設営を得意とする者。


 治癒を担当した者。


 大量の食事を供給した者。


 膨大な試合情報を整理した者。


 一万か所もの予選会場で、延べ一億人が参加する大会を動かすため、多くの人間が自分の得意分野を発揮していた。


「三千人で始めた実行委員会だったが、最終的にどれだけの人間が関わった?」


 アイクが尋ねる。


「数える気にもならん」


 ロックウェルが答えた。


「冒険者ギルド、食品ギルド、商業ギルド、治癒師、行政官。各地の住民も相当な人数が協力している」


「三騎士団だけでは到底回せなかったな」


 アッシュが言う。


「ああ」


 アイクは頷いた。


「大会そのものが、一つの巨大な教導だったのかもしれんな」


 選手だけではない。


 運営に参加した者たちも経験を積んだ。


 しかも、その経験は教導管理システムに残っている。


 次に同じ規模の催しを開くことになっても、ゼロから始める必要はない。


 ◇


 王宮へ戻ったオーキスを、バイオレットが迎えた。


「お疲れ様でした、陛下」


「ああ」


 オーキスは随分と満足そうだった。


「面白かったぞ」


「それは何よりです」


 そこへマーガレットもやって来る。


「お父様、剣豪への覚醒、おめでとうございます」


「ありがとう」


 オーキスが嬉しそうに笑う。


「だが、アイクたちは聖まで行ったからな」


 マーガレットの眉が僅かに動いた。


「……まさか」


「次は余も聖だ」


「もう次を考えているのですか?」


「当然だろう」


 バイオレットが口元を押さえて笑った。


「陛下らしいですね」


「そうだろう?」


 マーガレットも、もう止めなかった。


「せめて今日は休んでください」


「今日は休む」


「明日は?」


「訓練する」


「やっぱり……」


 三人の笑い声が王宮に響いた。


 国王自身が、今日より明日を実践している。


 だから国民も続く。


 武闘大会は終わった。


 だが、そこで得た経験まで終わったわけではない。


 六千六百万人の王国は、翌日からまた動き始める。


 昨日の自分より、ほんの少し先へ進むために。




 武闘大会は終わった。


 だが、混乱はまだまだ続いていた。


 原因は、冒険者ギルドに保存された大会映像だった。


「またです!」


「今度は何だ?」


「剣豪です!」


 大会終了後も、豪や聖を発現する者が増え続けていた。


 大会へ参加していなかった者まで含まれている。


 各地の冒険者ギルドでは、予選から決勝までの映像を見ることができる。


 自分と同じ武器を使う者の試合を見る。


 構えを見る。


 足運びを見る。


 間合いの取り方を見る。


 攻撃を受ける瞬間を見る。


 何度も繰り返す。


 そして実際に身体を動かしてみる。


 それだけで何かを掴む者がいた。


「光ったぞ!」


「鑑定!」


「槍豪です!」


 別の冒険者ギルドでも歓声が上がる。


「こっちは斧豪!」


「待ってください! 隣の端末でも覚醒者が!」


 大会そのものは終わっている。


 だが、大会で蓄積された経験が映像を通して王国中へ広がり始めていた。


 クレインのところには、各地から報告が殺到した。


「端末が足りません」


「映像を見たいという国民が冒険者ギルドへ押し寄せています」


「一つの端末に数百人が集まっております」


 クレインは報告書を確認した。


「増設しましょう」


「どの程度でしょうか?」


「全国の冒険者ギルドへ各一万台ずつ配布してください」


 行政官が一瞬だけ固まった。


「……各一万台ですか?」


「はい」


 クレインは平然としている。


「必要なのでしょう?」


「必要です」


「ならば配布しましょう」


「承知致しました!」


 行政官たちが動き出した。


 端末の確保。


 輸送。


 設置場所。


 冒険者ギルドとの調整。


 利用者の誘導。


 膨大な仕事が一斉に発生する。


 だが、今の王国行政は止まらない。


 六万人の行政官が役割を分担し、情報を共有しながら処理していく。


 その時だった。


 クレインの身体が光った。


「宰相閣下?」


 光はクレインだけではなかった。


 王宮の各部署。


 地方行政機関。


 各地で働いていた行政官たち。


 次々と光に包まれていく。


「何が起きている?」


「鑑定を!」


 結果が教導管理システムへ集まった。


 クレイン。


 宰相スキル。


 六万人の行政官。


 行政スキル。


 例外はなかった。


 エミリーも同じだった。


 自分の鑑定結果を確認し、目を丸くする。


「私も行政スキルです」


 クレインはしばらく結果を見ていた。


 そして静かに頷いた。


「これまでの経験が形になったのでしょう」


 人口六千六百万人。


 四千六百万人もの外来人口。


 亡命者の受け入れ。


 急速に拡大する都市。


 公衆浴場。


 学校。


 紡織。


 ダンジョン。


 ゴーレム。


 さらに延べ一億人が参加した武闘大会。


 行政官たちは、それらを止めることなく支えてきた。


 積み重ねた経験が、ようやく名前を得た。


 だが、覚醒したのは行政官だけではない。


「審判スキルを確認!」


「こちらは誘導スキルです!」


「イベント設営スキル!」


「情報管理スキルも出ています!」


 大会運営に関わった者たちが、次々と自分の得意分野に応じたスキルへ覚醒していた。


 審判を続けた者には審判スキル。


 膨大な参加者を動かした者には誘導スキル。


 会場を作り続けた者にはイベント設営スキル。


 試合結果を整理した者には情報管理スキル。


 大会運営のスタッフたちは、全員が何らかのスキルへ覚醒していた。


 報告を受けたマーガレットは笑った。


「王国の財産ね」


 クレインが頷く。


「左様でございます」


「次回からは、もっと順調に運営できるわ」


 一億人規模の大会を一度経験した。


 しかも、その経験者がスキルまで得た。


 次に大規模な催しを行う時、王国は今回以上の運営能力を持っている。


 大会が残したものは、豪や聖だけではなかった。


 そしてもう一つ。


 数字には表しにくい変化が起きていた。


 国民の愛国心だった。


「オーキス陛下、万歳!」


 王都から声が上がる。


 地方都市でも。


 農村でも。


 開拓地でも。


 亡命者たちが暮らす町でも。


「この国に来てよかった!」


「陛下についていくぞ!」


 生粋の王国民だけではない。


 旧帝国。


 公国。


 宗教国家。


 弱小王国。


 様々な土地から来た人々が、同じ王の名を口にしていた。


 勝った者だけではなく、負けた者にも明日を語った王。


 そして自分自身も剣を握り、豪へ到達した王。


 その姿を国民は見ていた。


 王国中で、オーキス・アルデバランを称える声が木霊していた。


 武闘大会は終わった。


 だが、それが王国へ残したものは、あまりにも大きかった。




 武闘大会が残した熱は、日を追うごとに別の形へ変わっていった。


 全国の冒険者ギルドへ教導管理システム端末の増設が始まった。


 各一万台。


 設置された端末には、すぐに人が集まった。


「剣神同士の決勝を見たい」


「俺は槍聖の試合だ」


「槌豪になった鍛冶職人の試合はどれだ?」


「予選の第三千二百ブロックです」


 職員が迷うことなく案内する。


 大会を運営した経験は、すでに日常業務にも生かされ始めていた。


 映像を見るだけの者もいる。


 だが、研究する者はさらに多かった。


 何度も停止する。


 戻す。


 別の角度から見る。


 自分と同じ武器を使う者を探す。


 豪と聖の違いを比較する。


「ここだ」


 一人の剣士が映像を止めた。


「聖になった後、踏み込みが変わっている」


「本当だ」


「身体能力だけじゃない。剣を出す前の動きが小さくなってる」


「やってみよう」


 冒険者ギルドの訓練場へ移動する。


 試す。


 失敗する。


 もう一度映像を見る。


 また試す。


 そして身体が光る。


「剣豪!」


 歓声が上がった。


 別の場所では槍豪。


 さらに別の場所では剣聖。


 大会が終わった後も、豪と聖は増え続けていた。


 もはや武闘大会の記録そのものが巨大な教材になっている。


 ◇


 王宮では、クレインが新しく覚醒した宰相スキルを確認していた。


「なるほど……」


 机の上には、各地から届いた報告が並んでいる。


 人口。


 食料。


 住宅。


 雇用。


 行政官の配置。


 学校。


 公衆浴場。


 冒険者ギルド。


 新たに増設する端末。


 以前から把握していた情報だった。


 だが、見え方が違う。


 何を優先すべきか。


 どこへ人員を配置すべきか。


 どの地域で不足が起こりそうか。


 情報同士の繋がりが、以前より明確に見える。


「便利なものですね」


 クレインが呟いた。


 エミリーが隣で頷く。


「行政スキルも同様です。情報の整理が格段に速くなっています」


 六万人の行政官も行政スキルを得た。


 一人の能力が上がったのではない。


 国家の行政を支える六万人が、一斉に底上げされた。


 エミリーが報告を確認する。


「端末増設に必要な人員配置が終わりました」


「早いですね」


「地方行政官から必要数が送られてきました。重複していた輸送計画も統合済みです」


「では、そのまま進めてください」


「承知致しました」


 クレインは少しだけ笑った。


 人口六千六百万人。


 さらに広大な土地の割譲提案まで受けている。


 行政が追いつかなければ、どれほど豊かな国でも混乱する。


 だが、その行政そのものが成長していた。


 武闘大会で強くなったのは、武人だけではない。


 ◇


 大会運営に携わった者たちにも変化が起きている。


「次はこちらへお願いします!」


 誘導スキルを得た男が、人の流れを整理する。


 以前なら何人も必要だった仕事を、周囲と連携しながら淀みなく進めていた。


 イベント設営スキルを得た者たちは、大会会場の撤去作業まで効率化している。


 情報管理スキルを得た者は、膨大な記録を整理する。


 審判スキルを得た者たちは、自分たちの判定映像を見直していた。


「ここは判断が遅かった」


「次ならもっと早く止められる」


「この角度からも確認するべきだったな」


 大会が終わっても、彼らまで今日より明日を続けている。


 その報告を読んだマーガレットは、思わず笑った。


「誰も止まらないのね」


「良いことではございませんか」


 クレインが答える。


「ええ。とても」


 マーガレットは頷いた。


「武闘大会を開いたら、武人だけじゃなく行政官も運営者も成長した。しかも大会の映像を見た国民まで成長している」


「陛下はそこまで考えておられたのでしょうか」


 エミリーが尋ねる。


 三人が少し黙った。


 やがてマーガレットが答える。


「たぶん、お父様は王国一の剣士を見たかっただけよ」


 クレインが目を閉じた。


 否定できなかった。


 エミリーも笑いを堪えている。


 ◇


 そのオーキスは訓練場にいた。


「陛下」


 アイクが呆れた顔をする。


「何だ?」


「大会が終わったばかりです」


「知っている」


「昨日は休むと仰いましたな」


「昨日は休んだぞ」


「……今日は?」


 オーキスが剣を構えた。


「今日は今日だ」


 アイクはしばらく黙った。


 やがて自分も剣を抜く。


「分かりました」


「手加減するなよ」


「もちろんです」


 剣豪となった王と、剣聖となった騎士団長が向かい合う。


 周囲では騎士たちが集まり始めていた。


 誰かに命じられたわけではない。


 王が努力する。


 騎士が続く。


 それを見た者が、自分もやってみようと思う。


 王国中で同じことが起きていた。


 国民の愛国心は高まっている。


 だが、それは王をただ崇めるだけのものではなかった。


 王が前へ進む。


 だから自分たちも進む。


 その空気が国全体へ広がっていた。


「始めますぞ、陛下」


「来い!」


 剣が激突する。


 今日より明日。


 昨日より一歩先へ。


 武闘大会は終わった。


 それでもアルデバラン王国は、止まらなかった。





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