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戦わずに世界を変えた男――教育と物流で“循環国家”を作ったら、いつの間にか大陸が一つになっていた  作者: 慈架太子


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161/311

161 剣神

 領土割譲に関する調査報告を終えた後、アレクサンドはクレインに声を掛けた。


「宰相閣下。一つ確認してもよろしいでしょうか?」


「何でしょうか、アレクサンド卿」


「ミストバルカス公国への正式な返事は、宰相殿からしていただけるんですよね?」


「もちろんでございます」


 クレインは即答した。


「割譲協定の作成、公国議会との確認、国境線の確定。その後の行政手続きも王宮で進めます」


「安心しました」


 アレクサンドは明らかにほっとしていた。


 現地へ赴き、調査を行い、公国側の意思まで確認した。


 ここから先は宰相の仕事である。


「では、お任せします」


「承知致しました」


 アレクサンドは満足そうに王宮を後にした。


 ◇


 その頃、王国騎士団の訓練場では、激しい剣戟の音が響いていた。


 中央で剣を交えているのは、アリシアとアダムス・キンバリーだった。


「一本!」


 審判役の騎士が声を上げる。


 アリシアの剣が、アダムスの首元で止まっていた。


「参りました」


「もう一度やりますか?」


「お願いします」


 二人が再び距離を取る。


 最初のうちはアリシアが圧倒していた。


 アダムスが攻めれば受け流す。


 守れば崩す。


 僅かな隙を見つけて剣を突きつける。


 何度繰り返しても結果は変わらない。


 だが、十戦、二十戦と続けるうちに様子が変わり始めた。


 アダムスがアリシアの剣を受けられるようになった。


 次第に受けるだけではなく、反撃まで繋げる。


「……速くなっていますね」


 アリシアが言った。


「そうでしょうか?」


「本人に自覚がないのですか?」


 再び剣が交差する。


 今度は簡単には終わらなかった。


 一合。


 二合。


 三合。


 さらに続く。


 見学していた騎士たちがざわめき始めた。


「互角になってきてないか?」


「最初はアリシア殿が圧倒していただろ」


 そして何度目かの模擬戦。


 アリシアの剣が弾かれた。


 アダムスの剣先が胸元で止まる。


「一本!」


 周囲から声が上がった。


「勝ったぞ」


「アダムス卿が勝った!」


 アダムス自身が驚いていた。


「勝てました」


「ええ」


 アリシアは笑った。


「でも、次は負けませんよ」


 模擬戦は続いた。


 まだアリシアの方が勝つ。


 それでも十回に一回だったものが、数回に一回へ変わっていく。


 開始から一時間ほど経った頃、二人は休憩に入った。


 アダムスが水を飲んでいると、その身体が淡く光った。


「何ですか?」


 アリシアがすぐに鑑定する。


 そして目を見開いた。


「アダムスさん」


「はい?」


「剣聖に覚醒しています」


「……本当ですか?」


 周囲の騎士たちが一斉に集まってきた。


「剣聖?」


「アダムス卿が?」


 本人まで信じられない様子だった。


 休憩を終えると、二人は再び模擬戦を始めた。


 最初の数戦はまだ競り合っていた。


 だが、少しずつ均衡が崩れていく。


「一本!」


 アダムス。


「一本!」


 またアダムス。


 アリシアも本気で攻める。


 それでも届かない。


 先ほどまで通用していた剣筋が読まれている。


 攻撃を受け流され、反撃を受ける。


 さらに続けると、アリシアは一度も勝てなくなった。


「待ってください」


 アリシアが模擬戦を止めた。


「どうしました?」


「おかしいです」


 もう一度、鑑定する。


 アリシアの表情が固まった。


「……剣聖じゃない」


「え?」


「剣神です」


 訓練場が静まり返った。


 イプシオも目を見開いている。


「剣神?」


「剣聖が進化しています」


 アリシアは何度確認しても同じだった。


 アダムス・キンバリー。


 剣神。


「そんなスキルがあるのか……」


 騎士の一人が呟いた。


 知らせを聞いたアイクが、訓練場へ飛び込んできた。


「アダムス卿が剣神ですとーっ!」


 団長の大声が響き渡る。


「本当なのか?」


「はい。私が鑑定しました」


 アリシアが答えた。


 アイクはアダムスを凝視した。


 その後ろからアッシュとロックウェルもやって来る。


「剣聖ではなく?」


「剣神です」


「……上があるのか」


 三団長まで言葉を失った。


 やがてアイクの視線がイプシオへ向いた。


「イプシオ殿」


「はい?」


「頼みがある。俺とも模擬戦をしてくれないか?」


「構いませんよ」


 二人が訓練場の中央へ移動した。


 今度はアイクとイプシオ。


 一時間近く剣を交え続けた、その時だった。


 アイクの身体が光った。


「団長!」


 鑑定した騎士が叫ぶ。


「剣豪です! 剣豪スキルに覚醒しています!」


「本当か!」


 アイクが満面の笑みを浮かべた。


 聖騎士。


 そして剣豪。


 長年剣を振り続けてきた王国騎士団長が、さらに一段上へ進んだ瞬間だった。


 少し離れた場所では、アッシュとロックウェルが羨ましそうにアイクを見ている。


「……いいな」


「ああ」


 二人の視線が、今度はイプシオへ向いた。


 イプシオは、その視線に気づいて苦笑した。


 どうやら今日の訓練は、まだ終わりそうになかった。




 剣豪に覚醒したアイクは、何度も自分の手を開いては握っていた。


「これが剣豪か……」


 身体そのものが急激に強くなったわけではない。


 だが、剣を握った時の感覚が明らかに違う。


 重心。


 間合い。


 相手の剣先。


 踏み込むべき瞬間。


 今まで経験によって判断していたものが、以前より鮮明に理解できる。


「もう一度お願いできるか?」


 アイクがイプシオを見る。


「もちろんです」


 二人は再び訓練場の中央へ立った。


 剣が交差する。


 先ほどまでとは違った。


 イプシオの攻撃にアイクが合わせる。


 受ける。


 流す。


 踏み込む。


 イプシオが剣を引いて防いだ。


「おお!」


 周囲の騎士たちから歓声が上がる。


 アイクが笑った。


「なるほど。これは面白い!」


 模擬戦を見ていたアッシュが腕を組む。


「……羨ましいな」


「ああ」


 ロックウェルも隠そうとしなかった。


 アイクだけが剣豪に覚醒した。


 三人とも長年、王国の騎士として剣を振ってきた。


 同じ三団長。


 しかも現在は三人とも聖騎士である。


 そこで一人だけ先へ進まれれば、何も感じない方がおかしい。


「イプシオ殿」


 アッシュが声を掛けた。


「はい」


「アイクとの模擬戦が終わったら、俺にも付き合ってもらえないか?」


「構いませんよ」


「待て」


 ロックウェルが割り込んだ。


「俺も頼みたい」


「もちろんです」


 イプシオは笑って答えた。


 その横では、アリシアがアダムスを見ていた。


「もう一度いいですか?」


「はい」


 二人も再び剣を構える。


 アリシアとしても、このまま終わるつもりはなかった。


「始め!」


 踏み込んだのはアリシア。


 剣を振る。


 アダムスが受け流す。


 すぐに二撃目。


 それも防がれた。


 三撃目へ繋げようとした瞬間、アダムスの剣先が首元で止まった。


「一本!」


「……参りました」


 アリシアが距離を取る。


 もう一度。


 結果は同じだった。


 さらにもう一度。


 またアダムス。


「全く勝てなくなりましたね」


「私自身、何が起きているのか……」


 アダムスは困惑していた。


「剣を振ると、どう動けばいいのか分かるんです」


 イプシオが二人の模擬戦を横目で見ながら笑った。


「それが剣神ですか」


「たぶん」


「たぶんって……」


 アリシアも苦笑するしかなかった。


 アダムスは剣を見つめる。


「ですが、これで終わりとは思いません」


「剣神より上を目指すんですか?」


「上があるのかは分かりません。ただ、スキルを得たから剣を振らなくていい、とはならないでしょう」


 イプシオが頷いた。


「その通りだと思います」


 周囲で聞いていた騎士たちの表情も変わった。


 剣神。


 聞いたことすらない領域だった。


 だが、アダムス本人はそれを終着点だとは考えていない。


 訓練をやめる理由にもしていなかった。


「では次、お願いします」


 アリシアが剣を構えた。


「はい」


 二人の模擬戦が再開する。


 少し離れた場所では、アイクとイプシオの打ち合いが終わった。


「ありがとうございました!」


 アイクは満足そうだった。


「こちらこそ」


 イプシオが一礼する。


 直後。


「次は俺だ」


 アッシュが前へ出た。


「いや、俺が先でもいいだろう」


 ロックウェルも譲らない。


「俺が先に頼んだ」


「大して変わらん」


 二人が睨み合う。


 アイクが笑った。


「二人とも必死だな」


 アッシュとロックウェルが同時に振り向いた。


「お前は黙ってろ」


「先に剣豪になった奴が言うな」


「ははは!」


 アイクの笑い声が訓練場に響いた。


 その様子を見ていた騎士たちも笑い始める。


 だが、彼らの目には別のものもあった。


 自分たちも強くなれるかもしれない。


 十一属性を得た。


 聖騎士にも覚醒した。


 それでも、まだ先がある。


 剣豪。


 剣聖。


 そして剣神。


 アダムスが、それを実際に示した。


 一人の騎士が隣の者を見る。


「俺たちもやるか?」


「ああ」


「模擬戦?」


「それ以外に何がある」


 別の場所でも剣が抜かれた。


 さらに別の場所でも二人一組になる。


 誰かに命令されたわけではない。


 団長が号令を掛けたわけでもない。


 騎士たちは自分から訓練を始めていた。


 アイクはその光景を見渡した。


「これは……しばらく訓練場が騒がしくなりそうだな」


 イプシオが笑う。


「良いことでは?」


「ああ」


 アイクは迷わず頷いた。


「実に良い」


 訓練場のあちこちで剣戟の音が響き始める。


 十一万人の聖騎士たちは、まだ自分たちの到達点を知らなかった。




 翌日。


 王国騎士団の訓練場は、朝から異様な熱気に包まれていた。


 昨日、アダムス・キンバリーが剣神へ到達した。


 さらに騎士団長アイクが剣豪に覚醒した。


 その話は、あっという間に騎士団全体へ広がっていた。


 訓練場のいたるところで模擬戦が行われている。


 剣士同士だけではない。


 槍を扱う騎士たちもいる。


 長年使い慣れた武器を手に、互いの技を磨いていた。


「始め!」


 剣がぶつかる。


 槍が交差する。


 防ぎ、受け流し、踏み込み、また距離を取る。


 魔法を使った訓練とは違う。


 純粋に武器を扱う技術を高めるための訓練だった。


 その中心では、今日もアダムスとアリシアが剣を交えていた。


「一本!」


 またアダムスだった。


「参りました」


 アリシアが剣を下ろす。


 昨日から何度挑んでも結果は変わらない。


 剣神へ進化してからのアダムスには、一度も勝てていなかった。


「もう一度お願いします」


「はい」


 アダムスも断らない。


 剣神になったからといって、訓練を終えるつもりはなかった。


 その近くでは、イプシオとアッシュが向かい合っている。


「お願いします」


「こちらこそ」


 二人が剣を構えた。


 アッシュは魔導騎士団長である。


 魔法だけを鍛えてきたわけではない。


 長年、騎士として剣も振り続けてきた。


 だが、イプシオとの打ち合いは簡単ではなかった。


「一本!」


「くっ……もう一度だ」


「はい」


 何度負けてもアッシュは止めなかった。


 昨日のアイクがそうだった。


 最初から勝つことが目的ではない。


 自分より高い技量を持つ相手と剣を交え続ける。


 その中で、自分に足りないものを掴む。


 一時間近く経った頃だった。


「一本!」


 またイプシオの剣がアッシュの胸元で止まる。


「参った」


 アッシュが大きく息を吐いた。


 直後。


 その身体が淡く光った。


「おっ!」


 近くで見ていたアイクが声を上げる。


「来たんじゃないか?」


 鑑定が使われる。


「剣豪です!」


 周囲から歓声が上がった。


「アッシュ団長、剣豪に覚醒!」


 アッシュが自分の剣を見る。


「……これか」


 剣を握り直した。


 先ほどまでとは感覚が違う。


 自分の姿勢。


 相手との距離。


 剣先の位置。


 これまで経験として積み重ねてきたものが、より鮮明に繋がっていく。


「やったな」


 アイクが笑いながら近づいた。


「ああ」


「これで俺と同じだ」


「昨日から随分嬉しそうだったからな」


「羨ましかったか?」


「かなりな」


 二人が笑う。


 その横で、一人だけ笑っていない男がいた。


 ロックウェルだった。


「……イプシオ殿」


「はい」


「次は俺だ」


 妙に低い声だった。


 アイクが吹き出した。


「怖いぞ、ロックウェル」


「黙れ」


 ロックウェルは既に剣を握っている。


「二人だけ先へ行かれてたまるか」


「では、始めましょう」


 イプシオが笑った。


 二人が訓練場の中央へ出る。


 ロックウェルは近衛騎士団長。


 王族の傍らを守る者たちの頂点に立つ男である。


 剣についても長年鍛え続けてきた。


 最初の一戦。


「一本!」


 イプシオ。


 二戦目。


 またイプシオ。


「もう一度」


 三戦目。


 四戦目。


 五戦目。


 ロックウェルは何度負けても挑んだ。


「意地になってるな」


 アイクが言う。


「昨日のお前と同じだ」


 アッシュが返した。


「そうだったか?」


「そうだった」


 模擬戦は続いた。


 そして一時間ほど経った頃。


 ロックウェルの身体も光った。


「来た!」


 アイクが叫ぶ。


 鑑定。


「剣豪です!」


 今度はロックウェルが剣豪へ覚醒した。


「……よし」


 ロックウェルが静かに拳を握る。


 アイクが肩を叩いた。


「これで三人とも同じだな」


「ああ」


 アッシュも満足そうに頷いた。


 三人の団長。


 三人の聖騎士。


 そして三人の剣豪。


 昨日今日、急に剣を握り始めた者たちではない。


 長い年月、王国の騎士として剣を振り続けてきた三人だった。


 教導によって新しい力を得ても、それまで積み上げてきた経験が消えたわけではない。


 むしろ今、その蓄積が新しい形で表れ始めていた。


 アイクが訓練場を見渡す。


 騎士たちはまだ模擬戦を続けている。


 その中には、剣だけでなく槍、ハルバード、グレイブを扱う者もいた。


「剣豪だけでは終わらなそうだな」


 アッシュが呟いた。


「ああ」


 アイクも同じものを見ていた。


 剣には剣の道がある。


 ならば槍にも、その先があるのかもしれない。


 誰にも分からない。


 だからこそ試す。


 訓練場には、今日も武器のぶつかる音が響き続けていた。




 三団長が揃って剣豪へ覚醒したという知らせは、その日のうちに王宮へ届いた。


 教導管理システムに新しい記録が追加される。


 アダムス・キンバリー。


 剣神。


 アイク。


 聖騎士、剣豪。


 アッシュ。


 聖騎士、剣豪。


 ロックウェル。


 聖騎士、剣豪。


 それを確認したクレインは、しばらく画面を見つめていた。


「……また増えましたか」


 隣にいたエミリーが頷く。


「はい。三団長については、イプシオさんとの模擬戦を一時間ほど続けた後に覚醒しています」


「アダムス卿は?」


「アリシアさんとの模擬戦中に剣聖へ覚醒。その後も訓練を続け、剣神へ進化しています」


「剣神……」


 クレインは小さく息を吐いた。


「初めて聞くスキルですね」


「教導管理システムにも、これまで記録はありません」


 そこへオーキスとマーガレットが入ってきた。


「聞いたぞ」


 オーキスは随分と楽しそうだった。


「アダムスが剣神になったそうだな」


「はい」


「三団長も剣豪か」


「その通りでございます」


 オーキスが腕を組む。


「面白い」


 クレインが嫌な予感を覚えた。


「陛下」


「なんだ?」


「騎士団訓練場へ行こうなどと考えておられませんよね?」


「まだ何も言っておらん」


「顔に出ております」


 マーガレットが父を見る。


「お父様」


「なんだ?」


「十一万人の騎士団に混ざって金属属性を覚醒した時と同じ顔をしています」


 オーキスは視線を逸らした。


「何のことだ?」


「覚えていないとは言わせませんよ」


「良いではないか。俺も聖騎士なのだぞ」


「国王陛下です」


 クレインが即座に返した。


「国王が剣を鍛えて何が悪い」


「悪いとは申し上げておりません」


「なら問題ないな」


「そういう意味でもございません」


 エミリーは黙って記録していた。


 マーガレットが苦笑する。


「どうせ止めても行くのでしょう?」


「分かっているではないか」


「怪我だけはしないでください」


「治癒魔法がある」


「そういう問題ではありません」


 結局、オーキスが訓練場へ行くこと自体は止められなかった。


 ◇


 その頃、騎士団訓練場では別の変化が起きていた。


 アダムスが槍を手にしていた。


 それを見たアリシアが尋ねる。


「今度は槍ですか?」


「はい」


「剣神になったばかりですよ?」


「だからこそです」


 アダムスは槍を軽く振った。


 剣だけが武器ではない。


 騎士団には槍を得意とする者も多い。


 ハルバードを使う者。


 グレイブを扱う者。


 それぞれが自分に合った武器を選んでいる。


「剣に剣豪、剣聖、剣神があるなら、槍にも何かあるのではないでしょうか」


 イプシオが笑った。


「確かめるんですか?」


「はい」


「アダムスさんらしいですね」


 近くでは三団長も騎士たちの訓練を見ていた。


 アイクが腕を組む。


「剣豪になって終わりではないな」


「当然だ」


 アッシュが答える。


「アダムス卿が一日で剣聖から剣神まで進んだんだ」


 ロックウェルも頷いた。


「なら俺たちにも、その先がある」


 三人の視線の先では、若い騎士と古参の騎士が剣を交えていた。


 別の場所では槍。


 さらに向こうではハルバード。


 訓練場全体が、昨日までとは違う熱気に包まれている。


 そんな中、一人の騎士の身体が光った。


「止めろ!」


 周囲が集まる。


 鑑定。


「剣豪です!」


 歓声が上がった。


「また一人か!」


 アイクが笑う。


 しばらくすると、別の場所でも光が上がった。


 今度は槍を使っていた騎士だった。


「鑑定を!」


 結果を確認した騎士が目を見開く。


「槍豪!」


 一瞬、静かになった。


「やっぱりあるのか!」


 槍使いたちが一斉に沸いた。


 アダムスまで目を輝かせる。


「槍豪ですか」


「次は槍聖、その先に槍神でもあるのか?」


 誰かが言った。


「分からん」


 アイクが答える。


「だから鍛えればいい」


 それで十分だった。


 剣だけではない。


 槍もある。


 なら、他の武器にも道があるかもしれない。


 教導管理システムには、新しいスキルが次々と記録されていく。


 誰か一人が発見する。


 記録される。


 他の者が知る。


 試す。


 そして次の者が覚醒する。


 アダムスが剣神へ到達したことは、一人の強者が生まれたというだけの出来事ではなくなっていた。


 十一万人の騎士たちが、自分にもまだ先があると知った。


 その日から、王国騎士団の訓練場では以前にも増して武器を交える音が絶えなくなった。


 剣神は一人。


 だが、その一人が開いた道を歩き始めた者は、すでに一人ではなかった。





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