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戦わずに世界を変えた男――教育と物流で“循環国家”を作ったら、いつの間にか大陸が一つになっていた  作者: 慈架太子


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147 新人冒険者教導

ダークライト魔導公国からアルデバラン王国へ渡ってきた者たちは、当初の百万人から増え続け、最終的には四百五十万人に達していた。


亡命した者。


保護された者。


そして自ら移民を選んだ者。


彼らを受け入れたアルデバラン王国の人口は、現在五千五百万人に達している。


新たな国民たちが選んだ仕事は様々だった。


農業へ進む者がいる。


紡織を学ぶ者もいれば、商人や職人を目指す者もいた。


その中には、冒険者として生きる道を選ぶ者もいる。


ある日、十人の若い男女がガイルを訪ねてきた。


男が五人。


狼獣人のエース、ドワーフのレビン、魔族のトレノ。三人は元奴隷だった。


人間のイプシオとスレットは貧困街の出身である。


女も五人。


エルフのベロニカ。


ダークエルフのジリアン。


人間のエミリー。


魔族のハーレイ。


そしてダークエルフのアレッタ。


五人はいずれも元娼婦だった。


種族も生まれも違う。


ただ一つ共通していたのは、ダークライト魔導公国で酷い目に遭ってきたことだった。


そんな十人が、自分の意思で冒険者を選んだ。


ガイルは十人を前にして確認した。


「冒険者になりたいんだな?」


エースが頷いた。


「はい。自分の力で生きていきたいです」


残る九人も同じだった。


「分かった。なら教える」


女性五人はアンジェラ。


男性五人はガイルとライアンが中心になって見ることになった。


ただし、最初から班を分けることはしない。


初日は十人一緒だった。


最初に教えるのは魔力循環。


そして魔力操作だった。


「魔法を使うことは考えなくていい。今日は魔力を動かすことだけ覚えろ」


ガイルたちは十人の体内にある魔力を意識させた。


感じる。


動かす。


全身へ巡らせる。


戻す。


再び巡らせる。


アンジェラも一人ずつ状態を確認していった。


「速さはまだ必要ないわ。自分の意思で動かせることの方が大切よ」


初日は朝から夕方まで、それだけだった。


剣も持たせない。


魔法も撃たせない。


ひたすら魔力操作と魔力循環を反復させた。


二日目。


十人全員が水属性を発現した。


だが、すぐに攻撃魔法の練習へ移ることはなかった。


最初に水属性の正しい理解を教える。


水がどう動くのか。


魔力によって何を変えられるのか。


理解した上で、基本魔法を一つずつ習得させていった。


ウォーターバレット。


ウォーターシールド。


ウォーターバインド。


さらに身体強化と筋肉強化。


索敵にはウォーターサーチを使わせた。


まだ水属性しか持っていない。


だからこそ、水だけで周囲を探る感覚を徹底的に覚えさせた。


三日目。


ガイル、ライアン、アンジェラを加えた十三人は森へ向かった。


実戦である。


フォレストウルフ五十体。


フォレストベア五十体。


フォレストボア五十体。


ガイルたちは危険がない限り手を出さなかった。


「魔力循環を止めるな。索敵を切るな」


十人がウォーターサーチを広げる。


敵を見つける。


身体強化。


筋肉強化。


そしてウォーターバレット。


最初は一体倒すだけでも慎重だった。


だが、狩りが進むにつれて十人の動きは変わっていった。


索敵する。


位置を共有する。


互いに死角を補う。


倒した魔物はその場で解体した。


皮。


骨。


肉。


魔石。


何が使えて、何が売れるのかも教える。


肉の一部は、その場で調理した。


自分たちで狩り、自分たちで解体し、自分たちで作った料理を食べる。


その日の終わりには、十人全員が解体スキルと調理スキルを発現していた。


そして四日目。


ガイルが十人を見た時には、昨日までとは様子が違っていた。


高速魔力循環。


誰に言われるでもなく、十人全員が続けていた。


歩いている時も。


話している時も。


休んでいる時でさえ止めない。


その成果はすぐに現れた。


風。


土。


光。


闇。


火。


残る五属性が次々に発現した。


六属性が揃った。


さらにアイテムボックス。


鑑定。


教導。


テレキネシス。


テレパシー。


レビテーション。


次々に能力が増えていく。


「……四日目だよな?」


ライアンが呟いた。


「ああ」


ガイルも十人の鑑定結果を見ながら答えた。


アンジェラは平然としていた。


「発現したなら、使えるようにすればいいでしょう?」


「まあ、そうなんだがな」


驚いていても仕方がない。


ガイルたちは六属性それぞれの正しい理解を教えた。


そして索敵も次の段階へ進める。


水だけで探るウォーターサーチではない。


六属性を混ぜる。


水、風、土、光、闇、火。


複数の属性を重ねて周囲を探ることで、単独属性では拾えなかった情報まで捉えさせる。


さらに鑑定の詳細な使い方。


レビテーションを基礎にした飛行魔法。


識字。


計算。


冒険者として生きていくなら、魔物を倒せるだけでは足りない。


依頼を読む。


報酬を確認する。


素材の価値を判断する。


自分で考え、自分で稼ぎ、自分で生きる。


そのために必要なものを、ガイルたちは一つずつ十人へ渡していった。




六属性を発現したところで、十人の教導は次の段階へ移った。


ここからは男女で班を分ける。


エース、レビン、トレノ、イプシオ、スレットの男五人をガイルとライアンが担当する。


ベロニカ、ジリアン、エミリー、ハーレイ、アレッタの女五人はアンジェラが担当した。


目的は同じだった。


狩ること。


そして、生き残ること。


冒険者が相手にするのは魔物だけではない。


盗賊や犯罪者と遭遇することもある。


だからこそ、倒すだけではなく、殺さずに無力化する方法も必要だった。


「最初に捕縛を徹底する」


ガイルは男五人を前にして言った。


「相手を倒せるからといって、殺していいとは限らない。生かして捕らえる必要がある相手もいる」


五人が頷いた。


まず基本となるバインド系の魔法を反復させる。


腕を止める。


足を止める。


身体を固定する。


属性を一つだけ使うのではない。


六属性を混ぜ、対象や状況に応じて拘束方法を変えていく。


次に窒息。


これも殺すためではない。


相手の意識を奪い、戦闘能力を失わせるために使う。


「加減を間違えるな。目的は無力化だ」


ガイルは何度も繰り返した。


女五人にも、アンジェラが同じことを教えていた。


「強い魔法を撃てることと、上手に戦えることは別よ」


ベロニカがバインドを作り直す。


隣ではジリアンが高速魔力循環を維持したまま、複数の拘束を同時に操っていた。


誰も魔力循環を止めない。


すでに十人にとって、それは特別な訓練ではなくなりつつあった。


呼吸するように魔力を巡らせながら、魔法を使う。


そして再び森へ入った。


今度は教師が横について狩るだけではない。


男班と女班。


それぞれが自分たちで索敵し、獲物を探し、判断する。


目標は一万体。


最初に聞いた時、十人とも言葉を失った。


だが、始めてみれば意味が分かった。


一万体を一度に相手にするわけではない。


索敵する。


見つける。


狩る。


解体する。


移動する。


そしてまた探す。


その反復だった。


魔物を見つけるたびに、六属性を混ぜた索敵の精度が上がっていった。


五人で情報を共有する。


テレパシーも使った。


声を出す必要がない。


《右、三体》


《確認した》


《後方にも二体》


《私が見る》


女班では、アンジェラが少し離れた場所から五人を見守っていた。


すでに細かな指示は必要なくなっている。


フォレストウルフの群れを見つけても、慌てない。


バインドで動きを封じる。


ウォーターバレットで仕留める。


別の個体が飛び込んでくれば、風と土を混ぜて進路を変える。


必要なら飛行して距離を取る。


男班も同じだった。


レビンが索敵する。


《前方、フォレストベア六体》


《捕縛を試そう》


エースの提案に四人が応じた。


六体を殺さず拘束する。


一体目。


二体目。


三体目。


途中で拘束を破られた。


もう一度。


今度は複数の属性を重ねる。


成功した。


「その感覚を忘れるな」


ガイルが声をかける。


教えるのは答えではない。


成功した理由と失敗した理由を理解させる。


それを何度も繰り返した。


一万体。


数字だけなら途方もない。


だが、高速魔力循環を続ける十人には魔力切れがない。


飛行できる。


索敵できる。


アイテムボックスもある。


狩りを続けるほど、むしろ効率が上がっていった。


捕縛。


拘束。


窒息。


各種バレット。


身体強化。


筋肉強化。


テレキネシスも戦闘へ混ぜる。


一つの方法だけに頼らない。


状況を見て選ぶ。


やがて男班も女班も、それぞれ一万体の討伐を終えた。


だが、そこで終わりではなかった。


狩った魔物は一体残らず解体する。


皮。


牙。


角。


骨。


内臓。


その他、商品になる素材を分けていく。


肉と魔石だけは売らなかった。


十人それぞれのアイテムボックスへ収納する。


肉はこれから旅をするための食料になる。


魔石には別の用途があった。


残る素材は冒険者ギルドへ持ち込んだ。


大量の素材を前に、職員たちが慌ただしく動き始める。


売却額を確認するのも十人自身だ。


計算を教えた意味が、ここで出る。


自分たちが狩った。


自分たちで解体した。


自分たちで売った。


そして自分たちで稼いだ。


エースは受け取った金額を何度も確認していた。


奴隷だった頃には、自分の働きで得たものが自分のものになることなどなかった。


ベロニカたちも同じだった。


ガイルは何も言わなかった。


金を稼げたことだけが重要なのではない。


この十人は、もう誰かに食わせてもらわなければ生きられない者たちではない。


だが、教導はまだ終わっていなかった。


ガイルは保管していた魔石を一つ取り出した。


「次は、こいつを使う」


レビンが魔石を見る。


「何をするんです?」


「ゴーレムを動かす」


十人の表情が変わった。


冒険者として生きる力。


その範囲は、彼らが考えていたよりもずっと広かった。




ガイルが取り出した魔石を、十人が興味深そうに見つめていた。


狩りで集めた魔石は大量にある。


これまで魔石は売却できる素材として見ていた十人だったが、今回は違った。


「魔石は売るだけのものじゃない」


ガイルは地面へ置いた魔石を指した。


「魔力を蓄えた素材だ。なら、動力としても使える」


最初に教えるのはゴーレムだった。


土属性を使って人型を作る。


形だけなら難しくない。


問題は、自律して動かすことだった。


ガイルとライアンが基本構造を教え、十人が一体ずつ作っていく。


最初に動いたのはレビンのゴーレムだった。


一歩。


二歩。


三歩目で倒れた。


「……難しいな」


「倒れた理由を考えろ」


ライアンは直さなかった。


レビン自身に観察させる。


脚の形。


重心。


関節。


魔力の流れ。


何度か作り直すうちに、ゴーレムは安定して歩き始めた。


他の九人も続いた。


高速魔力循環を維持しているため、失敗しても魔力を惜しむ必要がない。


作る。


動かす。


壊す。


作り直す。


繰り返しているうちに、十人全員がゴーレムスキルを発現した。


次は魔石を組み込む。


「今までは自分の魔力で動かしていた。今度は魔石を動力にする」


ゴーレムの内部へ魔石を収める。


魔石から必要な量だけ魔力を取り出し、全身へ送る。


最初は動かなかった。


次は動いたが、すぐに止まった。


別の一体は必要以上の魔力を流して腕を振り回した。


失敗するたびに十人で原因を考えた。


教導スキルも使う。


成功した者が、自分の感覚を隣へ伝える。


教師だけが教えるのではない。


十人同士でも教え合う。


やがて魔石を動力とした十体のゴーレムが並んだ。


「これなら自分の魔力を使わなくても動くのか」


スレットが感心したように言う。


「そういうことだ」


ガイルは頷いた。


「運搬にも使える。野営地を作らせてもいい。使い方は自分たちで考えろ」


次に教えたのは魔道具作成だった。


魔石を動力として使う考え方を、そのまま道具へ応用する。


魔力を流す。


機能を限定する。


必要な時だけ動かす。


十人はゴーレムで何度も失敗していた分、理解が早かった。


しばらくすると、全員が魔道具作成スキルを発現した。


冒険者になるためだけなら、ここまで必要ない。


魔物を狩れる。


素材を解体できる。


飛べる。


索敵できる。


アイテムボックスもある。


それだけでも十分すぎる。


だが、ガイルたちは教えられるものを惜しまなかった。


「次は剣だ」


ガイルの言葉に、十人が顔を上げた。


用意されていたのは十本のミスリル剣だった。


「必要なんですか?」


イプシオが率直に聞いた。


ライアンが笑った。


「いいところに気づいたな」


今の十人なら、魔物を倒すだけなら剣は必要ない。


各種バレットがある。


捕縛もできる。


拘束も窒息も使える。


テレキネシスもある。


飛行して距離を取ることもできる。


それでもガイルは一本を手に取った。


「冒険者だからな。一応、使えるようにしておけ」


「一応なんですね」


エミリーが小さく笑った。


「選択肢は多い方がいい」


剣だけに頼る必要はない。


だが、魔法だけに頼る理由もなかった。


構え方。


足の運び。


間合い。


斬る。


突く。


受ける。


身体強化と筋肉強化を使った状態でも、剣を振り回すのではなく制御する。


ガイルとライアンが男五人を見て、アンジェラが女五人を見た。


十人は高速魔力循環を続けながら、ひたすら基本動作を反復する。


魔法を覚えた時と同じだった。


まず理解する。


次に動かす。


失敗すれば修正する。


やがて鑑定結果に変化が現れた。


エースが最初だった。


「剣士スキルが出ました」


続いてレビン。


トレノ。


イプシオ。


スレット。


女五人も次々に発現していく。


最後にアレッタの剣士スキルが確認された。


十人全員。


ガイルはそれを確認して頷いた。


これで十分だった。


狩れる。


食料を確保できる。


解体できる。


素材を売れる。


文字を読める。


計算できる。


飛べる。


索敵できる。


自分たちを守れる。


必要なら人を捕らえることもできる。


ゴーレムを作り、魔道具まで作れる。


そして剣も扱える。


誰かに守ってもらわなければ何もできなかった十人ではない。


冒険者として、自分たちの力で生きていける。


ガイルは十人を見渡した。


「これで冒険者として生きる力は渡した」


エースたちは互いの顔を見る。


だが、ガイルは続けた。


「ついでだ。もう一つやるぞ」


「まだあるんですか?」


「金属属性だ」


十人が黙った。


ライアンが苦笑する。


「ついでで覚えさせる属性じゃないと思うんだが」


「覚えられるなら覚えておけばいい」


ガイルは平然としていた。


次に始まったのは、金属そのものを理解するための教導だった。




金属属性の教導は、剣を振るところから始まらなかった。


ガイルは一本の鉄剣を地面へ置いた。


「まず金属を理解しろ」


十人が鉄剣を見る。


「硬い、重い。それだけじゃ駄目だ。魔力を通して感じろ」


十人は高速魔力循環を続けながら、鉄剣へ魔力を流していった。


形を変える。


伸ばす。


縮める。


厚くする。


薄くする。


最初は誰も成功しなかった。


ガイルも急がせない。


魔力操作の基礎は、初日から徹底的に反復させている。


できないなら、理解が足りない。


触れる。


魔力を通す。


内部を感じる。


何度も繰り返した。


最初に変化を起こしたのはレビンだった。


「……動いた」


鉄剣の先端が僅かに曲がっていた。


ドワーフだからというだけではない。


初日から続けてきた魔力操作が、ここで形になった。


その感覚をレビンが教導で他の九人へ伝える。


エースが続いた。


ベロニカも鉄の形を変えた。


一人が理解すると、次の一人へ伝わる。


十人全員に金属属性が発現するまで、それほど時間はかからなかった。


「じゃあ、次は作ってみるか」


ガイルが言う。


「何をです?」


ジリアンが尋ねる。


「剣だ」


「剣なら、もう頂きましたけど」


十人の腰にはミスリル剣がある。


「今度は自分で作れ」


金属属性を使って金属を整える。


長さ。


厚さ。


重心。


柄。


自分が使いやすい形へ変えていく。


先ほどまで剣の扱いを教わっていたため、何が使いにくいのかも分かる。


エースは少し長め。


レビンは厚みを持たせた。


トレノは取り回しを優先する。


女性五人も自分の体格や腕力に合わせて形を調整した。


身体強化と筋肉強化があるとはいえ、扱いやすさを無視する理由はない。


ガイルは完成した十本を順番に確認していった。


「悪くない」


その一言に、十人の顔が緩んだ。


以前なら武器は誰かから与えられるものだった。


今は違う。


必要なら自分で作れる。


壊れても直せる。


材料さえあれば新しく作ることもできる。


「本当に何でも教えるんですね」


アレッタが自分で作った剣を眺めながら呟いた。


アンジェラが答えた。


「困った時に、自分で何とかできる方がいいでしょう?」


「はい」


アレッタは迷わず頷いた。


ガイルは十人を改めて鑑定した。


六属性。


金属属性。


アイテムボックス。


鑑定。


教導。


テレキネシス。


テレパシー。


レビテーション。


飛行魔法。


解体。


調理。


ゴーレム。


魔道具作成。


剣士。


それ以外にも、数日間の反復で身につけた技術がある。


捕縛。


拘束。


窒息。


複合索敵。


身体強化。


筋肉強化。


そして高速魔力循環。


最初にガイルを訪ねてきた時とは、比較する意味すらなかった。


「後は自分たちで決めろ」


ガイルが告げた。


十人が顔を上げる。


「どこへ行くのか。何を狩るのか。どんな依頼を受けるのか。俺たちが決めることじゃない」


エースが尋ねた。


「もう教導は終わりですか?」


「基本はな」


「基本……」


レビンが自分の能力を確認して苦笑した。


これが基本なら、いったい上には何があるのか。


ガイルは肩をすくめた。


「冒険者になってから覚えることの方が多い。知らない魔物もいる。知らない土地もある。失敗することもあるだろう」


少し間を置いた。


「だから十人で考えろ。教導スキルも持ってるんだ。誰かが覚えたら他の奴にも教えればいい」


十人が頷いた。


教師がいなくなれば成長が止まる。


そんな教え方をしたつもりはない。


互いに教えられる。


新しく知ったことを共有できる。


必要なら教導管理システムから情報を確認することもできる。


冒険者ギルドとも共有されている。


十人だけで知識を抱え込む必要もなかった。


アンジェラが女性五人を見る。


「食料は?」


「あります」


ベロニカが答えた。


狩った魔物の肉は、それぞれのアイテムボックスに大量に収納してある。


「魔石は?」


「あります」


「お金は?」


今度はエミリーが答える。


「素材を売った分があります」


「文字は読める?」


「はい」


「計算は?」


「できます」


アンジェラは微笑んだ。


「なら大丈夫ね」


かつて彼女自身も、誰かに生きる方法を教えられた。


今度は自分が教える側に立っている。


十人もやがて、誰かを教えることになるかもしれない。


その時だった。


ガイルの意識へ、念話が届いた。


《ガイル、聞こえる?》


聞き慣れた声だった。


ガイルはすぐに返す。


《聞こえてる。どうした、アレクサンド?》


少し間があった。


《冒険者ギルドに来てもらえるかしら》


《構わないが、何かあったのか?》


アレクサンドの声が僅かに変わった。


《外国の冒険者ギルドから情報が入ったわ》


ガイルの表情から笑みが消えた。


十人もそれに気づく。


《どこの国だ?》


返ってきた答えを聞き、ガイルは黙った。


次の仕事が始まろうとしていた。





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