137 仰せのままに
王国教導管理システムの稼働開始からしばらくして、王都では一つの噂が流れ始めていた。
最初に広がったのは、王国三騎士団だった。
「サーシャさんが叙爵されるらしいぞ」
「アーク侯爵の第二夫人の?」
「ああ。子爵になるとか」
「ミーナさんもだろう。男爵らしい」
休憩中の騎士たちがそんな話をしている。
二人ともアーク侯爵の弟子として知られていた。
だが今回の噂は、アークとは直接関係がない。
王国教導管理システム。
サーシャが設計し、ミーナが実装した王国全土を対象とする仕組みだった。
教導を受けた者。
教師。
習得した属性。
各種技能。
所属。
配置。
必要な情報を端末から確認できる。
騎士団も恩恵を受けていた。
「あれは助かるぞ。以前なら地方へ問い合わせていた情報がすぐ分かる」
「衛兵も同じことを言ってたな」
「門兵や自警団でも使ってるらしい」
噂に妙な反発はなかった。
むしろ、
「それなら叙爵されるだろう」
そんな反応が多かった。
実際、王宮ではすでに話が進んでいた。
宰相クレイン・レッドバルトの執務室には、王国各地から報告が集まっていた。
中央の文官だけではない。
地方の代官府。
各領の行政官。
騎士団。
衛兵。
門兵。
自警団。
王国教導管理システムの稼働によって業務が軽減されたという報告が次々と届いている。
そして文官たちから正式な推薦まで上がった。
クレイン自身も推薦者の一人だった。
報告を受けた国王オーキス・アルデバランは、マーガレットの意見も聞いた。
マーガレットにとってサーシャは、夫を同じくする第二夫人でもある。
だからこそ、オーキスは確認した。
「マーガレット。どう思う?」
答えは早かった。
「功績だけでご判断くださいませ」
「そうか」
オーキスはそれ以上聞かなかった。
サーシャがアーク侯爵の第二夫人だからではない。
ミーナがアーク侯爵の弟子だからでもない。
二人が王国のために成した仕事を評価する。
それだけだった。
オーキスはクレインを見る。
「王国で功を成した者には、褒美を与えなければならない」
クレインが静かに頷いた。
「王国の行政の根幹を改革してくれた。叙爵する。サーシャには子爵位。ミーナには男爵位を与える」
「異存ございません」
「クレイン。準備ができ次第、式典を行え」
クレインは頭を下げた。
「仰せのままに」
王宮でそんな決定が行われている頃。
王都では、まったく別の噂が男たちの間を駆け巡っていた。
場所は一軒の酒場。
「おい。聞いたか?」
「何をだ?」
「ダークエルフ街だよ」
男が杯を置いた。
「酒場に行くと、ダークエルフの女性が同じテーブルについて話し相手になってくれるらしい」
「なんだそれ」
「一対一だぞ」
隣の男まで会話へ入ってくる。
「俺も聞いた。酒がなくなったら酌までしてくれるらしい」
「本当か?」
「愚痴でも悩みでも、ずっと聞いてくれるとか」
男たちが黙った。
さらに別の男が声を落とした。
「しかも美人揃いらしいぞ」
「それは知ってる」
ダークエルフの女性たちは容姿の整った者が多い。
豊かな胸。
大きな尻。
引き締まった腰。
整った顔立ち。
そんな女性と酒を飲みながら一対一で話ができる。
楽しくないはずがなかった。
「……行くか?」
「いつ?」
「次の休み」
若い男だけではない。
少し離れた席にいた中年の男まで振り返った。
「その話、詳しく聞かせてくれ」
噂は瞬く間に広がった。
亜人街へ向かう男性客が増え始める。
そして当然、その動きを商業ギルドが見逃すはずもなかった。
すでに女性向けの亜人街周遊旅行は成功している。
ならば男性向けも作ればいい。
企画担当者たちはすぐに動いた。
酒場。
舞踏会。
料理店。
交流会。
ダークエルフ街を中心に、それぞれを巡る一泊二日の旅行商品。
企画書の表題には、
**『ダークエルフの街・交流旅行』**
と書かれた。
「これならどうだ?」
「悪くない。自由時間も入れよう」
「料理店も外せないな」
「酒場は?」
「当然だ」
企画はあっさり通った。
数日後、商業ギルドに新しい旅行商品の案内が並ぶ。
それを見た男たちが次々と足を止めた。
王国では行政改革が進んでいた。
同じ頃。
男たちは男たちで、新しい楽しみを見つけ始めていた。
商業ギルドが売り出した『ダークエルフの街・交流旅行』は、予想以上の反響を呼んだ。
受付には朝から男たちが並んでいる。
若い冒険者。
商人。
職人。
文官。
休日を取った衛兵。
中には白髪の混じった男までいた。
「年齢制限はないんだろう?」
受付の女性職員が頷く。
「ございません。ただし、相手の女性に迷惑をかける行為は禁止です」
「分かっている」
「酒場の女性は接客を仕事としております。交際を保証する旅行ではございません」
「もちろんだ」
返事だけは立派だった。
もっとも、商業ギルドも最初からそこは徹底していた。
酒を飲む。
会話を楽しむ。
料理を楽しむ。
舞踏会へ参加する。
交流会で新しい人と知り合う。
あくまで目的は交流だった。
だが参加者たちが何を期待しているのかは、職員にも分かっている。
「次の方」
男が受付へ進む。
「一泊二日で」
「承知しました」
「酒場は初日に行ける?」
「予定に含まれております」
「よし」
後ろの男が笑った。
「それが目的じゃないか」
「お前もだろう」
受付の女性職員は何も言わなかった。
その日の昼には、最初に用意した枠が埋まった。
追加便が決まる。
亜人街では、男たちの来訪がすぐ話題になった。
ダークエルフ街の酒場でも準備が始まる。
「王都から団体客が来るらしいわよ」
「また?」
「今度は男性中心だって」
一人のダークエルフの女性が笑った。
「分かりやすいわね」
「話を聞いてほしい人が多いんでしょう」
「だったら聞いてあげればいいじゃない」
彼女たちにとっても仕事だった。
酒を運ぶ。
杯が空けば酌をする。
客の話を聞く。
無理に話題を作る必要もない。
黙っていたい客には付き合う。
話したい客には話させる。
冒険の自慢をする者。
仕事の愚痴をこぼす者。
妻や娘への贈り物を相談する者までいる。
客の話は様々だった。
最初の旅行客が到着した日の夜。
酒場は賑わっていた。
「いらっしゃい」
一人の男が緊張した顔で席に着く。
向かいにはダークエルフの女性が座った。
「何を飲む?」
「え、ええと……エールを」
「分かったわ」
杯が運ばれる。
男は一口飲んだ。
だが何を話せばいいのか分からない。
女性が尋ねた。
「王都から来たの?」
「ああ」
「何の仕事?」
「木工職人だ」
「へえ。何を作ってるの?」
それだけだった。
男の緊張が少し解けた。
「最近は家具が多いな。王都じゃ新しい家が増えてるから」
「忙しい?」
「忙しい。ありがたいことなんだが……弟子がな」
そこから話が続いた。
覚えが悪い。
同じ失敗をする。
叱ると落ち込む。
褒めると調子に乗る。
「どうしたらいいと思う?」
女性は笑った。
「私に聞くの?」
「聞いてくれるって聞いたからな」
「そうねえ」
彼女は少し考えた。
「あなた、その弟子が嫌い?」
「いや」
「なら、まだ大丈夫じゃない?」
男は杯を持ったまま黙った。
「……そうか」
「たぶんね」
杯が空く。
女性が酒を注ぐ。
男は肩の力を抜いた。
別の卓では中年の商人が話し続けている。
「息子が商会を継ぐと言い出してな」
「いいことじゃない」
「それが心配なんだ」
「どうして?」
「俺より商売が上手い」
ダークエルフの女性が吹き出した。
「何がおかしい」
「だって、いいことでしょう?」
「そうなんだが、父親としては複雑なんだ」
そんな会話があちらこちらで続いていた。
男たちが期待していたものとは、少し違っていたかもしれない。
だが店を出る頃には、皆どこかすっきりした顔をしていた。
翌日は料理店と交流会。
舞踏会では、踊れない男たちがダークエルフの女性たちに教わっていた。
「右よ」
「こっちか?」
「それ左」
「難しいな」
「昨日、飛行魔法は簡単だって自慢してたじゃない」
「飛ぶ方が簡単だ」
笑い声が上がる。
旅行が終わる頃には、次の予約を考えている男までいた。
そして王都へ帰った彼らが酒場で話す。
「どうだった?」
待っていた友人たちが身を乗り出す。
男は少し考えた。
「良かったぞ」
「やっぱり美人だったか?」
「それもある」
「胸は?」
「でかかった」
「尻は?」
「でかかった」
男たちが沸いた。
だが参加者は杯を飲んでから続けた。
「でもな。話を聞いてもらうのも、結構いいもんだぞ」
一瞬、静かになった。
「……何の話をした?」
「仕事の愚痴」
「お前、何しに行ったんだよ」
酒場に笑い声が響いた。
その翌日。
商業ギルドでは、『ダークエルフの街・交流旅行』の追加便が正式に決定していた。
『ダークエルフの街・交流旅行』の追加便が決まった頃、王宮ではサーシャとミーナの叙爵式に向けた準備が進められていた。
宰相クレイン・レッドバルトの執務室には、王国各地から届いた報告書が積まれている。
クレインはその一枚を手に取り、国王オーキスへ差し出した。
「王国教導管理システム稼働後の報告でございます」
オーキスが目を通す。
教導を受けた人数。
教師の人数。
習得した属性や技能。
所属と配置。
各地の学校や専門学校の状況。
さらに映像による記録まで残されていた。
犯罪を行った者についても履歴が保存される。
衛兵や門兵は必要に応じて確認できるため、別の街へ移った者について一から調べ直す必要がない。
一方で犯罪履歴のない者についても確認できる。
余計な疑いをかける必要が減った。
「随分と広がったな」
オーキスが報告書を置いた。
「教導管理だけではありませんな」
クレインは苦笑した。
「王国中の文官から、仕事が楽になったと報告が届いております。私も同意見でございます」
「宰相までか」
「必要な情報を探すために、各領へ何度も問い合わせる必要がなくなりましたので」
オーキスが笑った。
そこへ三人の騎士団長が入室した。
騎士団長アイク。
魔導騎士団長アッシュ。
近衛騎士団長ロックウェル。
三人とも王国教導管理システムを実際に利用する側だった。
「率直に聞こう」
オーキスが三人を見る。
「二号機は役に立っているか?」
アイクが即答した。
「非常に助かっております」
迷いすらない。
「騎士団だけではありません。地方の衛兵、門兵、自警団からも同様の報告が上がっております。必要な技能を持つ者を確認するだけでも、以前とは比べものになりません」
続いてアッシュが口を開いた。
「魔導騎士団では属性の確認が特に有用です。必要な属性を持つ者を探すため、各地へ問い合わせる手間が大幅に減りました」
ロックウェルも頷く。
「近衛でも索敵、治癒、飛行、鑑定などを確認してから人員を編成できます。護衛任務の準備が早くなりました」
「文官も騎士も同じですな」
クレインが笑った。
「探す仕事が減った」
「その通りです」
アイクも笑う。
さらにアルフレッド侯爵が入室した。
オーキスが尋ねる。
「アルフレッドも使っているのであろう?」
「もちろんでございます」
アルフレッドは即答した。
ゴーレム開発には多くの専門家が関わっている。
ゴーレム魔導師。
鍛冶職人。
魔導具技師。
金属属性を持つ者。
専門学校で技術を学んだ者。
以前なら、必要な人材がどこにいるのか調べるだけでも時間がかかった。
「今では必要な技能から候補者を確認できます。本人の所属先へ相談するだけで済みますので、ゴーレムの開発も生産も随分と楽になりました」
オーキスが満足そうに頷いた。
最後に入室したのはアレクサンド侯爵だった。
彼女は国王へ一礼し、続いて室内の者たちへ挨拶する。
クレインが席を勧めた。
「ちょうど王国教導管理システムについて意見を聞いていたところです」
「そうでしたか」
アレクサンドが腰を下ろした。
アイクが彼女を見る。
「アレクサンド侯爵。一号機は閣下がお一人で作られたのでしたな」
「ええ」
「確か、設計から?」
「設計、実装、検証、修正、稼働まで一人で行いました」
アイクは苦笑した。
「何度聞いても、とんでもない話ですな」
アレクサンドは首を傾げた。
本人にとっては、必要だったから作ったという認識しかないらしい。
クレインが尋ねる。
「一号機を作った者として、二号機をどう見ますか?」
アレクサンドは少し考えてから答えた。
「用途が違います」
比較する言葉は使わなかった。
「一号機は帝国で必要になったため作りました。広い帝国内で教導を受けた人数、教師の人数、地域ごとの進行状況を把握する必要がありました」
アレクサンドは淡々と続ける。
「そして一号機は、帝国を倒しました」
部屋が静かになった。
誰も、その言葉を大げさだとは思わなかった。
実際に起きたことだからだ。
「武力ではありません。教導を受けた民が増え、自分で働き、自分で判断し、自立した。教師となった者が、さらに次の者を教えた。その流れを一号機で把握していました」
帝国軍を滅ぼしたわけではない。
皇帝を討ったわけでもない。
それでも帝国は維持できなくなった。
民が、支配されなければ生きられない存在ではなくなったからだ。
「二号機は違います」
アレクサンドがサーシャとミーナの名が記された書類を見る。
「国を倒すためのものではありません。王国で暮らす人々を支えるために使われます」
クレインが頷いた。
「一号機は帝国を終わらせ、二号機は王国を支える」
「ええ」
オーキスはしばらく黙っていたが、やがて笑った。
「十分だ」
机の上には、王国各地から集まった推薦書がある。
文官。
騎士団。
衛兵。
門兵。
自警団。
そして実際に二号機を利用している者たち。
オーキスは叙爵式の書類へ目を落とした。
「サーシャには子爵位。ミーナには男爵位」
クレインが頭を下げる。
「式典の準備を進めます」
「頼む」
「仰せのままに」
二人の叙爵に異論を唱える者は、一人もいなかった。
数日後。
王宮の大広間で叙爵式が行われた。
サーシャとミーナは並んで国王オーキスの前に立っている。
二人とも緊張していた。
特にミーナは、先ほどから何度も小さく息を吐いている。
「サーシャさん」
「どうしたの?」
「私、本当にここにいていいんでしょうか」
「今さら何を言っているの」
サーシャも平静を装っていたが、いつもより背筋が伸びていた。
少し離れた場所にはアークがいる。
その隣には第一夫人であるマーガレット。
王妃バイオレットも二人を見守っていた。
さらに宰相クレイン、三騎士団長、アルフレッド侯爵、アレクサンド侯爵をはじめ、多くの貴族や文官が列席している。
やがてクレインが進み出た。
「これより叙爵を執り行います」
大広間が静まった。
最初に読み上げられたのは、二人の功績だった。
王国教導管理システムの構築。
設計を担当したサーシャ。
実装を担当したミーナ。
教導を受けた者の情報だけではない。
属性。
技能。
所属。
配置。
各種履歴。
映像記録。
必要な情報を王国各地から確認できる仕組みが整えられた。
クレインは書面から顔を上げた。
「稼働開始後、王国各地の文官から多数の報告が届いております」
少し間を置く。
「業務が楽になった、と」
列席していた文官たちの間から小さな笑いが漏れた。
クレイン自身も笑う。
「私も助かっております」
今度は笑いが少し大きくなった。
堅い式典の空気がわずかに和らぐ。
続いてアイクが前へ出た。
「騎士団からも感謝を申し上げます。衛兵、門兵、自警団からも同様の報告が届いております」
アッシュも続く。
「必要な属性を持つ者の確認が容易になりました。魔導騎士団にとっても大きな助けとなっております」
ロックウェルが一礼する。
「近衛騎士団も同様です。任務に応じた人員配置が以前より迅速になりました」
アルフレッド侯爵も口を開いた。
「ゴーレム開発に必要な技師や技能を持つ者を探す際にも利用しております。私からも礼を申し上げます」
サーシャとミーナは黙って聞いていた。
自分たちが作ったものを、これほど多くの者が使っている。
分かっていたはずだった。
だが実際に利用者たちから言葉を向けられると、その重みは違った。
最後にアレクサンド侯爵が前へ出た。
「私からも一言よろしいでしょうか」
オーキスが頷く。
「許す」
「ありがとうございます」
アレクサンドは二人を見る。
「私は帝国で一号機を作りました。設計、実装、検証、修正、そして稼働まで行いました」
そのことを知る者は多い。
一号機によって広大な帝国内の教導状況が把握された。
教師が育つ。
その教師が次の民を教える。
不足している地域が分かれば、そこへ教師を送る。
教導の流れは止まらなかった。
「一号機は帝国を倒しました。武力ではありません」
大広間が静まり返った。
「教導を受けた民が自立した結果、帝国の旧い支配は維持できなくなりました」
アレクサンドはそこで一度言葉を切った。
「二号機は王国を支えるために作られました」
それだけだった。
一号機と二号機を比べることはなかった。
一号機には一号機の役割があった。
二号機には二号機の役割がある。
そして今、二号機は王国中で使われ始めている。
オーキスが立ち上がった。
「サーシャ。ミーナ」
「はい」
二人の声が重なった。
「王国で功を成した者には、それに応じた褒美を与えねばならぬ」
オーキスはまずサーシャを見る。
「サーシャ。王国教導管理システムを設計し、王国行政の礎を築いた功績により、そなたに子爵位を与える」
サーシャが深く頭を下げた。
「謹んでお受けいたします」
次にミーナを見る。
「ミーナ。同システムを実装し、王国全土で稼働させるに至った功績により、そなたに男爵位を与える」
ミーナも頭を下げる。
「謹んでお受けいたします」
拍手が起こった。
文官たち。
三騎士団。
アルフレッド侯爵。
アレクサンド侯爵。
王妃バイオレット。
マーガレットも笑顔で拍手している。
その中にアークもいた。
何も言わない。
ただ、二人の弟子へ拍手を送っていた。
サーシャが一瞬だけアークを見る。
目が合った。
アークが笑う。
それだけで十分だった。
ミーナも気づき、小さく笑った。
かつて教えを受けた二人が、自分たちで考え、自分たちで作り上げたものによって爵位を得た。
剣を振るった功績ではない。
魔物を何千体倒した功績でもない。
戦争に勝った功績でもなかった。
王国で働く者たちを助けた。
それが二人の功績だった。
式典が終わる。
クレインは新たに二人の貴族が加わった記録を確認し、満足そうに頷いた。
オーキスが声をかける。
「クレイン」
「はい、陛下」
「これで終わりだな?」
クレインは手元の書類を見る。
まだ仕事は残っている。
爵位に伴う登録。
各部署への通知。
記録の更新。
二人の新しい身分を王国教導管理システムにも反映しなければならない。
クレインは苦笑した。
「もう少々ございます」
「そうか」
「ですが、以前より遥かに楽でございます」
オーキスが笑った。
「ならばよい」
クレインも笑って頭を下げる。
「仰せのままに」




