121 生きる術
救済の行脚を始めてから、各班から届く念話は途切れることがなかった。
第二村に残ったアレクサンドは、その報告を一つずつ確認していた。
村によって困窮の形は違う。
人手が足りない村。
魔物によって畑へ出られなくなった村。
橋が落ちて物流が止まった村。
食料そのものは存在するのに、領主側が押さえて住民へ回していない街まであった。
だが、やることは同じだった。
原因を見つける。
そして、元から断つ。
『食料が足りないからといって、食料だけ置いて帰らないで』
アレクサンドは全班へ念話を送った。
『なぜ足りなくなったのかを確認して。畑が使えないなら畑を戻す。魔物が原因なら魔物への対処方法を教える。物流が止まっているなら道や橋を直す』
シメオンから返事が届く。
『こっちは順調だ。放棄されていた畑も使えるようになってきた』
『それなら、食料生産を優先して』
『分かった』
シメオンたちが入った村では、すでに変化が始まっていた。
土魔法を覚えた者たちが荒れた農地を耕し、水魔法を覚えた者たちが畑へ水を引いている。
四十人しか残っていない。
それでも魔法を使えば、以前と同じ人数は必要なかった。
老人も働いていた。
子供たちも魔力循環を続けている。
昨日まで人手不足だった村が、少しずつ自分たちだけで動き始めていた。
『原因を残したまま症状だけ抑えても、また同じことになるわ』
アレクサンドの言葉に、ガイルが隣で頷いた。
「病気と同じだな」
「ええ。悪い部分が残っているなら取り除くしかないわ」
原因が魔物なら、対処できる力をつける。
橋なら直す。
農地なら再生する。
そして、住民を食わせない領主や役人が原因なら、その者を排除する。
殺す必要はなかった。
戦う必要さえない。
武器を持っているなら没収する。
抵抗するなら拘束する。
それでも邪魔をするなら、その土地から排除する。
今の彼らには、それができる。
相手が報復しようとしても容易ではない。
武器を失い、兵も失えば何もできない。
何より、住民自身が教導を受けて力と知識を身につければ、以前のように命令するだけで従わせることはできなくなる。
その時、ホセから念話が届いた。
『アレクサンド、兵士について相談がある』
『どうしたの?』
『武装解除した連中だ。鑑定では大きな問題がない者がかなりいる』
アレクサンドは少し考えた。
『本人たちはどうしたいと言っているの?』
『軍には戻りたくないと言ってる奴が多い。ただ、兵士を辞めた後に何をすればいいのか分からないらしい』
その報告に、アレクサンドは黙った。
当然だった。
帝国兵だからといって、兵士として生まれたわけではない。
徴兵された者もいる。
生活のために軍へ入った者もいる。
剣を持って命令に従うことしか教えられていない者もいた。
武器を取り上げて放り出せば、それで問題が解決するわけではない。
『ホセ』
『何だ?』
『問題のない兵士には、心変わりを促して』
『心変わり?』
『帝国軍を辞めろと命令する必要はないわ。でも、選択肢は教えてあげて』
アレクサンドは続けた。
『武器もない。給金も出ない。それでも帝国軍へ戻るのか。それとも、別の生き方を選ぶのか』
ホセは黙って聞いていた。
『兵士を放り出すだけでは駄目なのね』
アレクサンドの声が少し低くなった。
『生きる術を持っていない人間を、武器だけ取り上げて放置したらどうなると思う?』
『……盗賊か』
『そうなる者も出るでしょうね』
食べなければ死ぬ。
だが、農業を知らない。
仕事もない。
金もない。
剣だけで生きてきた人間が追い詰められれば、残された方法は少ない。
奪えば犯罪になる。
人を傷つければ、いずれ罰を受ける。
それでも今日を生きるために奪う者は出る。
それでは何も解決していない。
『鑑定して問題がない者なら、教えてあげて』
『何を?』
『生きる方法よ』
アレクサンドは即答した。
『農業でもいい。建築でもいい。料理でも、鍛冶でも、商売でもいい。本人が自分で食べていける方法を一つ持てば、剣で奪う必要はなくなるでしょう』
しばらくして、ホセから短い返事が届いた。
『分かった』
アレクサンドは念話を切った。
兵士から武器を取り上げるだけなら簡単だった。
だが、それだけでは原因を一つ先送りするだけになる。
武器を持たなくても生きられる。
命令されなくても働ける。
誰かから奪わなくても食べられる。
そこまで身につけて、初めて兵士だった者は一人の生活者へ戻ることができる。
それもまた、帝国を壊すことなく帝国民を救う方法だった。
ホセは念話を終えると、広場に残った兵士たちへ目を向けた。
武器も防具も取り上げている。
鑑定も済ませた。
住民を積極的に害していた者は別に記録しているが、目の前にいる者たちは違う。
徴兵された者。
食べるために軍へ入った者。
上官の命令に従っていただけの者。
少なくとも、これ以上拘束する理由はなかった。
「帝国軍へ戻りたい者は止めない」
ホセが告げる。
「武器は返さないけどな」
兵士たちは顔を見合わせた。
誰も動こうとしない。
やがて、一人の若い兵士が尋ねた。
「戻らなかったら、俺たちはどうすればいい?」
ホセは男の顔を見た。
途方に暮れている。
その表情には見覚えがあった。
ほんの一月ほど前。
今日食べるものさえなく、明日をどう生きればいいのかも分からなかった頃の自分たちと似ていた。
考えろと言われても、考える材料そのものがない。
腹が減れば、さらに考えられなくなる。
ホセは周囲を見回した。
「仕事ならあるぞ」
「仕事?」
「お前たち、兵士だったんだろ?」
「そうだが……」
「野営地は誰が作ってた?」
男が怪訝そうな顔をする。
「俺たちだ」
「穴は?」
「掘る」
「道が崩れてたら?」
別の兵士が答えた。
「行軍できないなら直す」
「荷物は?」
「運ぶ」
「飯は?」
「炊事当番が作る」
「柵は作れるか?」
「簡単なものなら」
ホセは笑った。
「それだけできて、何ができないんだ?」
兵士たちが黙った。
どうやら本人たちは、それを仕事だと思っていなかったらしい。
兵士だからやっていた。
命令されたからやっていた。
それだけの認識だった。
「この街を見ろ」
ホセは周囲を指した。
傷んだ道。
壊れかけた建物。
手入れされていない水路。
街の外には荒れた農地もある。
「直すところだらけじゃないか」
「俺たちにやれっていうのか?」
「やりたくないなら別の仕事でもいい。でも、土木なら今すぐ始められるだろ」
年配の兵士が自分の手を見た。
「だが、道を直したところで食えるのか?」
「働いたら飯を食えばいい」
ホセは当然のように答えた。
「この街には食料がある。人手が足りない。だったら働ける奴が働いて、食料を受け取ればいいだろ」
難しい話ではない。
ホセは自分の手を開いた。
掌の上で小さな土の塊が浮かび上がる。
兵士たちの目が集まった。
「それに、お前たちも魔法を覚えればいい」
「俺たちが?」
「俺だって一月前には、こんなことできなかった」
土の塊が形を変え、細長い棒になった。
「今は六属性を使える」
兵士たちがざわめいた。
「土魔法を覚えれば、穴掘りも道の補修も今までとは比べものにならないくらい楽になる。水魔法を覚えれば用水路も作れる。火魔法があれば炊事にも使える」
若い兵士が恐る恐る尋ねた。
「教えてくれるのか?」
「鑑定で問題がないならな」
ホセは即答した。
「俺たちだって教えてもらったんだ」
ほんの一月前まで、自分たちも何も持っていなかった。
食べるものもない。
力もない。
どうすれば生活を変えられるのかさえ知らなかった。
それを教えてもらった。
なら、今度は自分たちが渡せばいい。
「兵士を辞めたからって、何もできない人間になるわけじゃない」
ホセは男たちを見渡した。
「むしろ、お前たちは結構いろいろできるぞ。自分で気づいてないだけだ」
何人かが苦笑した。
その中から一人が手を上げる。
「俺は橋も作ったことがある」
「先に言えよ」
「軍じゃ普通だったからな」
「だったら、チャドのところへ送ったら喜ぶぞ」
笑いが起きた。
別の男も口を開く。
「俺は馬を扱える」
「俺は荷車の修理ができる」
「炊事なら任せろ」
「文字なら読めるぞ」
次々と声が上がった。
ホセは一人ずつ聞いていった。
何も持っていない兵士など、ほとんどいなかった。
軍隊という場所で身につけた技能を、軍の外で使えると考えたことがなかっただけだ。
最後に若い男が一人残った。
「俺は……本当に何もない」
鑑定してみる。
十六で徴兵され、それ以前も家の手伝い程度しかしていない。
ホセは男の肩を軽く叩いた。
「なら今から覚えればいい」
「できるかな」
「できるかどうかは、やってみないと分からん」
少し考えてから続けた。
「でも、腹を空かせて何日も歩き回るよりはいい。あれはろくなことを考えられなくなる」
男がホセを見る。
「経験あるのか?」
「一月前まで死にかけてた」
ホセは笑った。
「だから、食えるうちに覚えよう。俺たちも手伝う」
男はしばらく黙っていたが、やがて頷いた。
「頼む」
「よし。まず魔力循環からだ」
広場では、元兵士たちへの教導が始まった。
武器を失った兵士を放り出すのではない。
武器がなくても生きられる術を渡す。
そうすれば、明日の食事を奪うために誰かを襲う必要もなくなる。
ホセ自身が受け取ったものが、また一つ次の人間へ渡されようとしていた。
元兵士たちへの教導は、ホセが思っていた以上に早く進んだ。
理由は単純だった。
彼らは何も知らない人間ではない。
軍で何年も身体を使い、集団で働いてきた。
「土を持ち上げろ。力任せにやるなよ」
ホセの指示を受け、一人の元兵士が地面へ手を向ける。
土が盛り上がった。
「おお……」
本人が驚いている。
「もう一回だ。今度は横へ動かしてみろ」
「こうか?」
盛り上がった土がゆっくり移動する。
形は崩れていたが、それでも十分だった。
「これ、穴掘りに使えるな」
元兵士が呟いた。
「だから言っただろ」
ホセが笑う。
その男は軍にいた頃、何度も野営地を作っていた。
穴を掘る。
排水溝を作る。
地面をならす。
柵を立てる。
やっていた作業そのものは変わらない。
道具の代わりに魔法が加わっただけだった。
別の場所では、水魔法を覚えた男たちが水路を掃除している。
詰まっていた泥を土魔法で取り除き、水を流す。
「こっちが低すぎるぞ」
「少し埋める」
「待て。水を流してから傾きを見よう」
誰かに命令されているわけではない。
自分たちで相談し始めていた。
ホセはその様子を眺めながら、少し不思議な気分になった。
昨日まで、この男たちは帝国兵だった。
武器を持ち、領主代理の命令に従っていた。
だが、剣を取り上げた途端に別の人間になったわけではない。
最初から持っていたものが見えるようになっただけだった。
『ホセ』
シメオンから念話が届いた。
『どうした?』
『こっちの村、畑がかなり戻った。土魔法を覚えた人が増えてる』
『早いな』
『元々農民だからな。やり方は知ってる。魔法の使い方を覚えたら勝手に進め始めた』
ホセは笑った。
『こっちも似たようなもんだ』
『街の方か?』
『兵士が土木屋になり始めてる』
一瞬の間。
シメオンの笑い声が念話から聞こえた。
『向いてるだろ』
『俺もそう思う』
兵士は戦うだけの職業ではなかった。
むしろ戦場で生きるため、様々な仕事を覚えている。
それを平時の仕事として考えたことがなかっただけだ。
『こっちはもう俺たちが畑に口を出さない方がよさそうだ』
シメオンが言った。
『農業なら向こうの方が詳しい』
『それでいいだろ』
ホセは答えた。
『魔法だけ教えて、使い方は本人たちに考えてもらえばいい』
『そうする』
念話が切れた。
ホセが振り返ると、先ほどの若い元兵士が魔力循環を続けていた。
まだ魔法は発現していない。
それでも諦める様子はない。
「焦るなよ」
「分かってる」
「分かってない顔してるぞ」
「早く使ってみたいんだ」
ホセは苦笑した。
一月前の自分も似たようなものだった。
できなかったことができる。
それだけで、見える世界が変わる。
その時、広場の端から声が上がった。
「ホセ!」
元兵士の一人だった。
「どうした?」
「ちょっと来てくれ!」
向かった先には、崩れかけた建物があった。
元兵士たちが五人ほど集まっている。
「ここ、直していいか?」
ホセは建物を見た。
「誰の家だ?」
「今は誰も住んでないらしい。持ち主は二年前に街を出たって」
隣にいた住民が頷く。
「使っていいと言ってる。住める場所が足りないんだ」
元兵士が続けた。
「だったら直せば、俺たちの寝る場所にもなるだろ?」
ホセは男を見た。
もう「何をすればいい」と聞いてきた顔ではなかった。
「俺に聞く必要あるか?」
男が一瞬黙った。
やがて笑った。
「ないな」
「ならやれ」
「おう」
五人が建物へ戻っていく。
誰かが壁の状態を確認する。
別の者が瓦礫を運び始める。
土魔法を覚えた者が、崩れた部分を補修していく。
まだ教導を始めて間もない。
それでも、自分たちで必要な仕事を見つけ始めていた。
ホセはそれ以上口を出さなかった。
分からない時には教える。
選択肢が見えないなら示す。
できるようになったなら任せる。
それでいい。
そこへ今度はアレクサンドから念話が届いた。
『ホセ、そっちはどう?』
『順調だ』
『兵士たちは?』
ホセは補修を始めた男たちを見る。
『もう元兵士って呼んだ方がいいかもしれないな』
『そう』
『今、勝手に家を直し始めた』
少し間を置いて、アレクサンドの声が返った。
『なら大丈夫そうね』
『ああ』
ホセは街を見渡した。
剣を取り上げたことで、彼らから何かを奪ったのではない。
戦う以外の道を見つけるきっかけになった。
生きる術は、一つではない。
それに気づけば、人は自分で次の道を選べる。
ホセはもう、彼らの行き先を心配していなかった。
元兵士たちが建物の補修を始めた頃、ホセは別の一団を広場へ集めた。
「土木を始める前に、もう少し教えておく」
先ほどまで作業をしていた男が首を傾げる。
「土魔法か?」
「それもやる。でも先に水だ」
ホセは右手を差し出した。
掌の上に水球が生まれる。
「水を出してみろ。量は少なくていい」
元兵士たちは魔力循環を続けながら意識を集中した。
最初は何も起こらない。
やがて一人の掌に、小さな水滴が浮かんだ。
「出た!」
「そこで止めるな。形を保て」
水滴が震えながら大きくなっていく。
それを見た別の兵士も水を生み出した。
一人、また一人。
教導を受けた者たちに水属性が発現していく。
歓声が上がった。
「喜ぶのはまだ早いぞ」
ホセが笑う。
「水を出せるだけじゃ、水属性を使えるとは言えない」
「他に何があるんだ?」
「いっぱいある。俺も教えてもらうまで知らなかった」
ホセは水球を細長く伸ばした。
鞭のように動かし、次には縄のように形を変える。
「弾、穿、刃、斬。攻撃にも使える。だが今のお前たちに先に覚えてほしいのは、こっちだ」
水が兵士の腕へ巻きついた。
「捕縛と拘束」
「水で捕まえるのか?」
「そうだ。殺さなくても止められる」
さらに水を魔力膜で包み、大きな寝具の形へ変える。
兵士が触れると、表面が柔らかく沈んだ。
「寝てみろ」
「これに?」
「いいから」
男が恐る恐る横になる。
水が身体に合わせて動き、全身を支えた。
「なんだこれ……」
「水の寝具だ。魔力膜があるから破れない。温度も調整できる」
周囲から羨ましそうな声が上がった。
ホセは水を消し、今度は氷を作る。
盾。
壁。
机。
椅子。
器。
食器。
鍋。
次々と形を変えていく。
少し離れた場所には簡素な氷の建屋まで作った。
「家まで作れるのかよ」
「寝台も牢も檻も作れる。滑らせることもできるし、圧力や重量を利用する方法もある」
元兵士たちの顔つきが変わった。
水属性を覚えた。
その意味を、ようやく理解し始めていた。
「熱湯や蒸気にもできる。弾、穿、炸、裂。蒸気なら爆発まである。危険だから攻撃への応用は制御を覚えてからだ」
ホセは自分の腕を示した。
「それから身体の中にも使える」
身体強化。
筋肉強化。
そして癒。
「怪我を治すこともできる。ただ傷が勝手に消えるんじゃない。身体が持っている治す力を魔力で強くするんだ」
「そんなことまで……」
「まだあるぞ。索敵と探索だ」
ホセがウォーターサーチを広げる。
「周囲に何がいるのかを探せる。危険を見つけてから戦うんじゃない。危険なら近づかないという選択もできる」
兵士たちは黙って聞いていた。
「これが水属性の正しい理解だ。水を出して終わりじゃない」
一人が自分の掌に浮かぶ水を見る。
先ほどとは見る目が違っていた。
ホセは地面を踏んだ。
「次は土だ」
地面から土が盛り上がる。
壁となり、板となり、机へ変わった。
「お前たちには、こっちも馴染みやすいはずだ」
土の盾。
鎧。
壁。
建屋。
寝台。
器。
鍋。
牢と檻。
さらに土を固め、石へ変える。
石板が地面へ並んだ。
「土でも弾、穿、刃、斬が使える。圧力や重量も使える。石にすれば強度も上がる」
元兵士の一人が呟いた。
「道を作れるな」
ホセが笑った。
「そういうことだ」
別の男が続ける。
「家も直せる」
「水路も作れるぞ」
「橋の土台にも使える」
今度はホセが教える必要すらなかった。
軍で土木作業を経験してきた男たちが、自分たちで用途を考え始めている。
「やってみろ」
その一言で十分だった。
土が動き始めた。
崩れた道の窪みが埋まり、地面がならされる。
水属性を覚えた者が水を流して傾斜を確認し、別の者が土を調整する。
身体強化と筋肉強化を覚えた者は瓦礫を運び始めた。
小さな傷を負った男には、隣の者が覚えたばかりの癒を試している。
ホセは何も言わず、その光景を眺めていた。
少し前まで、彼らは武器を失えば生きていけないと思っていた。
今は違う。
水を作れる。
家を作れる。
道を直せる。
身体を強くできる。
傷を癒せる。
危険を探すこともできる。
そして、それらを使って働ける。
剣などなくても生きていける。
「ホセ」
最初に水属性を発現した男が呼んだ。
「なんだ?」
「明日はあっちの水路を直したい。詰まってるところがある」
ホセはその方向を見る。
「俺に聞くなよ」
男が一瞬固まる。
ホセは笑った。
「もう自分で決められるだろ」
男も笑った。
「ああ。そうだった」
未来の犯罪者を捕まえたわけではない。
罪を裁いたわけでもない。
ただ、犯罪に走らなくても生きていける術を渡した。
それだけだった。
だが今の帝国には、それが何より必要だった。




