115 街道補修と橋梁復旧
翌日。
第二村では新しい作業が始まった。
盗賊団を壊滅させたことで、村の周辺から大きな脅威は消えた。
だが、人が安全に暮らすだけでは村は孤立したままだ。
第二村へ続く街道は長い間放置されていた。
雨で削られた路面。
崩れた斜面。
土砂に埋まった場所。
深い轍。
さらに索敵で調べると、橋が落ちて通行できなくなっている場所まである。
アンドリューは村の広場に千人を集めた。
「今日は街道を直す」
盗賊討伐に参加した二百人とは別の四十班、二百人を選んだ。
五人一班。
四十班。
今回は再編しない。
それぞれの班が街道の状態を確認しながら作業する。
アンドリュー。
レイラ。
ガイルたち二十七人。
さらにゴーレム魔導師二百人が同行する。
合計四百二十九人。
必要なゴーレムはアイテムボックスに収納した。
土砂運搬。
地面の締め固め。
倒木の撤去。
大きな岩の移動。
橋梁工事。
人間がすべてを力仕事で行う必要はない。
準備を終えると、一行は飛行して街道へ向かった。
第二村から伸びる街道は、およそ百キロメートル。
最初は比較的状態が良かった。
だが、数キロ進んだところから傷みが目立ち始める。
レイラが上空から索敵する。
「この先、かなり路面が削られているわ」
全員が地上へ降りた。
アイテムボックスからゴーレムを取り出す。
二メートル級。
五メートル級。
大小のゴーレムが街道へ並ぶ。
「ここから始めよう」
アンドリューの指示で作業が始まった。
二百人が土魔法を使う。
街道にできた穴を埋める。
深い轍を消す。
路面の高さを揃える。
雨水が街道へ溜まらないように勾配も整えていく。
両脇には排水用の溝を掘った。
ゴーレムは大きな石を運ぶ。
倒木を撤去する。
崩れた路肩へ土を運ぶ。
五メートル級は重量物を担当し、二メートル級は細かな作業を補助する。
二百人のゴーレム魔導師が、それぞれ作業内容に合わせて指示を変えていった。
ガイルたち二十七人も見ているだけではない。
昨日覚醒したゴーレムスキルを使う。
自分たちでもゴーレムを動かし、土砂を運ばせる。
アンドリューとレイラも同じだった。
街道の補修そのものが、ゴーレム運用の訓練にもなっていた。
補修が終わる。
移動。
次の破損箇所へ向かう。
穴を埋める。
路面を整える。
排水溝を作る。
崩れた路肩を補強する。
それを繰り返して進んでいった。
十キロ。
二十キロ。
三十キロ。
街道が次々と元の形を取り戻していく。
やがてレイラが前方を見た。
「止まって」
索敵に大きな崩落が引っかかった。
山側の斜面が崩れ、大量の土砂と岩が街道を完全に塞いでいる。
長期間放置されていたらしい。
木まで巻き込まれていた。
アンドリューが現場を見る。
「まず崩れた斜面を安定させるぞ」
二百人が土魔法を使う。
斜面を固める。
これ以上崩れないよう形を整える。
その間にゴーレムが動いた。
五メートル級が巨大な岩を持ち上げる。
二メートル級が倒木や小さな岩を運ぶ。
使える木材は切り分けてアイテムボックスへ収納する。
石も捨てない。
街道の補強材として使える。
土砂を除去する。
地面を整える。
路面を作り直す。
排水溝を通す。
数時間後。
完全に塞がれていた街道が再びつながった。
アレクサンドは少し離れた場所から、その一連の作業を記録していた。
ソートグラフィー。
崩落した状態。
補修の手順。
ゴーレムの使い方。
斜面の補強。
排水。
復旧後の街道。
すべて映像として残す。
この記録も、いずれ別の場所で使える。
一行は再び街道を進んだ。
その先で、今度は道そのものが途切れていた。
川が流れている。
そして両岸には、壊れた橋の跡だけが残っていた。
レイラが川を見下ろす。
「橋が落ちているわ」
アンドリューが頷いた。
街道補修は、橋梁復旧へ移ろうとしていた。
一行は川の手前へ降りた。
橋は完全に落ちていた。
両岸には石造りの橋台が残っているが、中央部分は川底へ沈んでいる。
レイラが索敵する。
水中にも大量の残骸があった。
木材。
石材。
金属部品。
長期間放置されたことで、流れてきた倒木まで引っかかっている。
アンドリューが言った。
「まず片付けるぞ」
二百人が川岸へ広がる。
ウォーターサーチ。
土属性を混ぜた索敵。
水中の状態を確認する。
ゴーレム魔導師たちも動いた。
五メートル級ゴーレムを川へ入れる。
水深を確認しながら一歩ずつ進ませる。
二メートル級は岸辺で待機した。
五メートル級が川底に沈んでいた大きな石材を持ち上げる。
テレキネシスも使う。
水中から石が浮かび上がった。
岸へ運ぶ。
次は木材。
折れた橋桁。
倒木。
次々と引き上げていく。
金属部品も見つかった。
金具。
鎹。
釘。
補強材。
回収した金属はアイテムボックスへ収納する。
再利用できる木材も収納した。
腐食して使えない木材は薪に回せばいい。
川底の残骸がなくなると、流れが元に戻った。
次は橋台を調べる。
レイラが鑑定する。
「このまま使うのは危ないわね」
長年の雨と増水で基礎部分が削られていた。
アンドリューが頷く。
「作り直そう」
既存の橋台を解体する。
使える石材は残す。
土魔法。
テレキネシス。
ゴーレム。
四百人を超える作業員が役割を分担した。
川岸を掘る。
基礎を深くする。
大きな石を組む。
隙間を土魔法で固める。
両岸に新しい橋台が作られていった。
川の中央にも橋脚を作る。
五メートル級ゴーレムが川へ入った。
大きな石材を運ぶ。
二百人が土魔法で川底を整える。
石を積む。
固定する。
水の流れを妨げない形に整える。
橋脚が立ち上がった。
次は橋桁だった。
近くの森へ数班が向かう。
ウィンドカッター。
太い木を選んで切り倒す。
枝を払う。
必要な長さへ切る。
切り株も掘り起こす。
材木は魔法で乾燥させた。
木工スキルを持つ者たちが加工する。
橋桁。
床板。
欄干。
必要な部材を次々と作っていった。
加工された巨大な橋桁を五メートル級ゴーレムが運ぶ。
一本。
二本。
三本。
橋台と橋脚の上へ渡す。
位置を調整する。
金属製の金具も作った。
盗賊団の拠点から回収して精錬した鉄の一部を使う。
金属属性で成形する。
橋桁を固定する金具。
補強材。
必要な形へ変えていく。
二メートル級ゴーレムが細かな部材を運んだ。
橋桁の上へ床板を並べる。
固定する。
欄干を取り付ける。
作業は止まらない。
やがて川の両岸が一本の橋でつながった。
アンドリューが橋の上へ立つ。
ゴーレムを歩かせる。
まず二メートル級。
問題はない。
次に五メートル級。
重いゴーレムが橋を渡る。
橋桁は揺れない。
床板にも異常はなかった。
レイラが鑑定する。
橋台。
橋脚。
橋桁。
床板。
金具。
一つずつ状態を確認した。
「問題ないわ」
アンドリューが頷いた。
「これで通れる」
アレクサンドは完成した橋へ魔道具を向けた。
崩落していた橋。
川底の撤去。
基礎工事。
橋台。
橋脚。
橋桁。
床板。
そして完成後の荷重確認。
工程はすべて記録されている。
誰か一人の技術ではなかった。
土木。
建築。
木工。
金属属性。
ゴーレム。
テレキネシス。
索敵。
鑑定。
これまで第二村で覚えてきたものを組み合わせて、一つの橋が復旧した。
だが、街道はまだ先へ続いている。
一行はゴーレムをアイテムボックスへ収納した。
アンドリューが前方を見る。
「続きを直すぞ」
全員が再び飛び上がった。
百キロメートルの街道復旧は、まだ途中だった。
橋を復旧した一行は、再び街道の補修を始めた。
移動するときはゴーレムをアイテムボックスへ収納する。
上空から街道を索敵し、破損している場所を見つければ降りる。
ゴーレムを展開。
補修。
終われば収納して次へ向かう。
その繰り返しだった。
四十キロ。
五十キロ。
街道を進むほど、長く放置されていた影響が目立つようになった。
路面が雨で削られている。
路肩が崩れている。
排水溝が土砂で埋まっている。
木の根が街道まで伸びている場所もあった。
アンドリューがテレパシーで四十班へ指示する。
「五班ずつ分かれろ。前後を索敵しながら補修するぞ」
二百人が八つに分かれた。
街道の各所へ飛行して移動する。
ガイルたち二十七人とゴーレム魔導師たちも分散して補助へ入った。
土魔法。
崩れた路面を戻す。
穴を埋める。
街道の高さを揃える。
ウォーター。
水を撒く。
ゴーレムを歩かせて路面を踏み固める。
重量のある五メートル級ゴーレムが何度も往復する。
柔らかかった地面が締まっていった。
二メートル級は排水溝の整備を担当する。
土砂を掻き出す。
石を運ぶ。
倒木を移動する。
作業を続けるうちに、第二村の二百人もゴーレムの使い方に慣れてきた。
前日に覚醒したばかりのゴーレムスキル。
だが、盗賊討伐とは使い方が違う。
昨日は盾。
進路封鎖。
拠点への先行。
今日は土砂運搬。
路面の締め固め。
石材運搬。
倒木撤去。
同じゴーレムでも、指示する内容が変われば仕事も変わる。
アレクサンドはその違いも映像に残した。
六十キロを越えたところで、再び大きな崩落が見つかった。
今度は街道そのものが半分なくなっている。
谷側の路肩が崩れ落ちていた。
レイラが地面を鑑定する。
「このまま埋めるだけでは、また崩れるわ」
アンドリューが周囲を見る。
「下から作り直そう」
五メートル級ゴーレムを谷へ降ろす。
二メートル級も続く。
まず崩れた土砂を除去した。
大きな岩を基礎へ使う。
五メートル級が岩を運ぶ。
テレキネシスで位置を調整する。
土魔法で固定する。
その上へさらに石を積む。
石。
土。
石。
土。
何層にも重ねて路肩を作り直した。
二百人が魔力を流す。
地盤を固める。
ウォーター。
水を撒く。
五メートル級ゴーレムが上を歩く。
何度も往復させる。
沈む場所があれば、そこへ石と土を追加した。
再び締め固める。
やがて失われていた街道の幅が戻った。
谷側には石を組んだ擁壁も作る。
雨水が擁壁の内側へ溜まらないよう、水抜きも設けた。
レイラが鑑定する。
「大丈夫よ」
一行は先へ進んだ。
七十キロ。
八十キロ。
ここまで来ると、作業速度は最初より上がっていた。
誰かが細かな指示を出さなくても動く。
索敵する者。
土を整える者。
排水を作る者。
ゴーレムへ指示する者。
資材を回収する者。
完成した場所を鑑定する者。
四十班が自分たちで役割を分けている。
九十キロ地点。
レイラが前方へ索敵を伸ばした。
「この先にも橋があるわ」
少し間を置く。
「二本。片方は壊れている。もう片方もかなり傷んでいるわ」
アンドリューは即座に答えた。
「両方直すぞ」
一行が飛び上がる。
アレクサンドも後を追った。
その手には記録用の魔道具がある。
街道百キロ。
最後の十キロへ入った。
一行は九十キロ地点を越え、二本の橋がある場所へ向かった。
最初に見つかった橋は、中央部分が完全に落ちていた。
二本目は残っている。
だが、橋台の一部が削られ、橋桁にも傷みがある。
レイラが鑑定する。
「こっちはまだ渡れるけれど、このまま使い続けるのは危ないわ」
アンドリューが頷いた。
「先に落ちた方を作り直す。終わったらもう一本だ」
二百人が動く。
ゴーレムをアイテムボックスから取り出した。
五メートル級が川へ入る。
二メートル級は岸辺で作業する。
ウォーターサーチ。
土属性を混ぜた索敵。
川底を調べる。
落下した橋桁。
石材。
木材。
金属部品。
流木。
五メートル級ゴーレムが大きな残骸を持ち上げる。
細かな物はテレキネシスで回収した。
金属はアイテムボックスへ収納する。
使える木材も残さない。
川底を片付けると、橋台を解体した。
石材は再利用する。
基礎を掘り直す。
土魔法で地盤を固める。
石を積む。
川の中央には新しい橋脚を作った。
作業の流れは、最初の橋で経験している。
誰かが一つずつ指示する必要はなかった。
木材を調達する班。
橋台を作る班。
橋脚を作る班。
金属部品を作る班。
ゴーレムを動かす班。
自然に役割が分かれていく。
ウィンドカッターで木を切る。
枝を払う。
製材する。
魔法で乾燥させる。
木工スキルで橋桁と床板を作る。
五メートル級ゴーレムが橋桁を運んだ。
テレキネシスで位置を合わせる。
金属属性で作った金具を取り付ける。
床板。
欄干。
補強材。
次々と組み上がった。
完成すると二メートル級ゴーレムを歩かせる。
続いて五メートル級。
何度も往復させる。
レイラが鑑定した。
「問題ないわ」
すぐに二本目へ移る。
こちらは作り直す必要まではなかった。
傷んだ床板を外す。
腐食した金具を回収する。
橋桁を補強する。
削られていた橋台へ石材を追加する。
川岸も土魔法で固め直した。
新しい床板を取り付ける。
金属属性で作った金具で固定する。
再びゴーレムを歩かせる。
五メートル級が橋を往復した。
異常はない。
レイラが鑑定する。
「これで大丈夫」
二本の橋が復旧した。
残る街道は十キロもない。
ゴーレムを収納する。
飛行。
破損箇所を発見。
降りる。
ゴーレムを出す。
穴を埋める。
路肩を直す。
排水溝を通す。
路面へ散水する。
五メートル級ゴーレムで踏み固める。
補修が終われば再び収納する。
作業を繰り返しながら進んだ。
そして最後の破損箇所が直った。
アンドリューが街道の先を見る。
「終わったな」
第二村へ続く百キロの街道。
崩落箇所。
寸断された場所。
埋まった排水溝。
落ちた橋。
傷んだ橋。
すべて補修した。
レイラは広域索敵を使った。
続いて飛行しながら街道を確認する。
二百人も各方向へ広がった。
補修漏れがないかを見る。
しばらくして報告が集まった。
問題はなかった。
アレクサンドは最後まで魔道具を向けていた。
街道の破損状況。
補修前。
土砂の除去。
崩落した斜面の処理。
路肩の再建。
排水。
ゴーレムによる締め固め。
橋梁の解体。
基礎。
橋台。
橋脚。
橋桁。
金属部品。
荷重確認。
そして百キロの街道が復旧するまで。
すべて映像として残っている。
盗賊討伐とは違う。
今回は誰も捕縛していない。
誰も裁いていない。
ゴーレムが相手にしたのは、人ではなく土と石と木だった。
それでも使われた能力の多くは同じだった。
索敵。
鑑定。
テレキネシス。
六属性。
アイテムボックス。
土木。
建築。
木工。
金属属性。
ゴーレム。
覚えたものを組み合わせれば、できる仕事が増える。
アンドリューが全員へテレパシーで伝えた。
「第二村へ戻るぞ」
ゴーレムをすべてアイテムボックスへ収納する。
四百二十九人が飛び上がった。
その下には、復旧した街道が伸びていた。
百キロ先まで、途切れることなく続いていた。




