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98話 シャイナの揺れる気持ち


「シャイナ、レオン様から手紙が来てるみたいだぞ?」

「レオンから?」


 自室で勉強をしていた私、シャイナ・ミクロライトは思わぬ人物からの手紙に身体が跳ねる。


 ヒカリちゃんの家でタルトを作ってからもう直ぐ一年。


 レオンは凄く忙しそうにしていると、お兄様の婚約者のエイ・オリスティナ第二王女様から聞いており、スーちゃんもヒカリちゃんも全然会えてないと聞いていた。


 そんなレオンから手紙が来たんだ。流石に勉強の手も離れてしまう。



「見て良いか?」

「お兄様! ダメに決まってます!」


 お兄様から受け取ったお手紙を気持ちが向くままに開いて読む。


「……なるほど」


 簡単に要約すると、忙しくて会えなかったお詫びと、私たち婚約者候補の入学祝いをしたいとのこと。


 場所は前回同様ヒカリちゃんの家で、ウィンガート伯爵の許可も得てるとのこと。


「一週間後ですわね?」


 もう学園入学の時期なのかと思うと、どうも気持ちが昂ってしまう。


「そういえば、スーちゃんのお母様、十二歳の社交界でドレスを見繕って下さるって言ってたけど……」


 覚えてくださっているかしら。二年前の口約束なんて覚えていない可能性もあるけど、実は私は凄く楽しみだったりする。


 採寸とか必要ならそろそろしないといけないけど、声がかからないから忘れていそうかも……。


 そういえばヒカリちゃんは社交界のドレス買ったのかしら? ヒカリちゃんは黒色のドレスが凄く似合いそうだ。



「あぁぁぁもう!」


 無性に三人に会いたくなってしまった。


 レオンは学園生活疲れてないかしら? スーちゃんはちゃんと勉強してるかしら? ヒカリちゃんは社交界の準備進めてるかしら?


「お兄様、レオン様学園ではどんな感じですか?」

「うーん」


 お兄様は顎に手を当てて必死に考える。


「流石に三つも歳が違うと見かけないんだよな?」

「そうなんだ……」

「嘘なんだけど」

「おにいさま!?」


 この兄、私を弄んで楽しんでますね?


 必死に頬を膨らませて怒りを表現する。


 しかし、反省どころか試作品の写真機を向けて勝手に撮られた。


「この写真エイが見たら飛びつくだろうな」

「お・に・い・さ・ま!!?」

「冗談だ、すまんすまん!」

「許しません!」


 もう勉強どころの気分ではなくなってしまい、椅子から降りてお兄様から写真を奪い取る。


「はい削除」

「あぁ勿体無い」


 記憶の端っこに残っていた写真の削除方法を思い出して削除する。


「あ、この写真」

「シャイナ? お、懐かしい写真だな?」


 そこに写ってたのは、ヒカリちゃんが頭の上で両手ピースをしている写真だ。


「まだ残ってたんだ」


 あれからヒカリちゃんは貴族に絡まれていないだろうか……。


「そういえば、写真の試作品作った会社が、どうやら『げんぞう』って言うのを使って写真を取り出せるようにしたらしいぞ?」

「『げんぞう』? 写真を取り出す? どうやって?」


 何やら理解が難しいことを言っているけど、一体なんなのだろうか。


 きっとまたお母様が伝を使って面白いことをしてくれるのかもしれない。


「そうだお兄様! 一週間後、レオンが私とスーちゃんとヒカリちゃんのために入学祝いしたいと手紙に書いていたのですけど、お兄様も来ませんか?」

「入学祝いか。久々にスティアちゃんにも会えるし、レオン様の顔も見たいし、良いかもな?」

「決まりですわね!」


 未来に楽しみが一つ増え、再び勉強を再開する。


 こうなったら、何がなんでも当日までに復習を終わらせないとーー


「って! そうだ!」


 そう言えば、学園から『スクールバッグ』が支給されているんだ。


 徐に立ち上がり、待ちきれない気持ちを抑えるように、机の下のスクールバッグを手に取る。


「これは?」


 中を覗くと、一年間のスケジュールのようなものが入っていた。


「……なるほど」


 どうやら学園は、五日の登校と二日休みのサイクルで、四十日の大きな休みが二回あるらしい。


 そしてーー


「これは……あまり関係なさそう」


 補充という、テストの点数が悪かった人のための勉強会があるのだとか。



「王妃教育もありますし、気を抜きすぎないようにしないとね!」


 学園生活、楽しいばかりではなさそうだが、それでも期待値は遥かに高いのだ。

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