95話 癒し
「それともう一つ」
「まだあるんですか……?」
まだ学園入学してないのに、すでにお腹一杯です。
「今日あったこと、ルージー嬢の件はレオンにーー」
「話さないで!」
「……」
何言われるか察知し、ユアン様の声に割り込んで言葉を刺す。
「あの人、ルージーさんは、私がわからせる! 貴女の居場所なんてないって。レオンに報告して罰を受けさせるんじゃなくて『貴女じゃレオンに釣り合わない』って、わからせてやる!」
「……ヒカリちゃんは意外と強気だね?」
「だって、スーちゃん……スティアちゃんならそう言いそうじゃない?」
「スティア嬢なら……確かに言いそうだな?」
このまま処分を下しても、恨みが大きくなるだけ。
だったら正面からぶつかってコテンパンにしてやる。
不器用なやり方だけど、遺恨を残したままより絶対に良い。
「だから今日あったことはレオンには内緒! 今は学園生活で忙しいし、気を使わせたくないわ?」
「わかった。でも何かあったら遠慮無く言えよ? でないとアリアが泣く」
「わかってるよ!」
アリアちゃんを引き合いに出されちゃなんでも相談するしかない。
それから話題を変えて世間話しながらケーキを食べて紅茶を飲み、時間はあっという間に過ぎていった。
そして帰る直前。
「ハネットさんロアさん、ケーキありがとうございます! 苺も一個サービスありがとうございます!」
「良いのよ! また来て頂戴!」
「はい!……」
「えっと……」
ロアさんは目を泳がせる。
まぁこの一回で昔の貴族のトラウマなんて解消されないよな。
「また、来てくれると嬉しい。俺も、嫁も」
「はい! ありがとうございました!」
ちょっと元気を貰い、ユアン様と退店。
「伯爵家まで送ろうか?」
婚約者候補の相手で慣れているのか、ナチュラルにそんな台詞が飛んできた。
「遠慮します。ユアン様の隣はアリアちゃんがお似合いなので」
「そうか。なら気をつけて」
「ありがとうございました!」
特に追求することなく、後腐れすることなく別れて互いの帰路を歩き出す。
「疲れたな……」
体力的には問題ないけど、精神的疲労がでかい。
「ちょっと……休もう……」
適当に見つけた公園のベンチに座り、疲れたメンタルを癒す。
ハネットさんやロアさん、ユアン様から元気は貰ったけど、全然気持ちが回復しきってなかった。
「あれ! ヒカリちゃん!」
「え?」
そんなこんなで公園でのんびりしていると、聞き慣れた大好きな人の声が聞こえた。
思わず声のする方を振り向くと、学生服姿で手を振っている女の子が一人。
「アリアちゃん!」
「ちょっとヒカリちゃん!」
僕は思わず立ち上がって思い切り抱きつく。
「どうしたのヒカリちゃん!」
「ちょっと、アリアちゃんにギュッとしたくなっちゃった」
もうグッドタイミング過ぎる。
「全く! いつのまに甘えん坊に戻っちゃったの?」
「今日はそういう気分なのっ!」
そんなことを言いながらも優しく頭を撫でて抱きしめてくれる。
「…………何かあった?」
「うん。でも大丈夫」
「本当に?」
「本当」
それ以上追求せず、満足するまでハグしっぱなしだった。
「よし! 元気出た!」
「うん、ヒカリちゃんは笑って方が可愛い!」
「えへへ! ありがとうアリアちゃん!」
一気に全ての疲れが吹き飛んだ。アリアちゃんは偉大だ。
「アリアちゃんは学園の帰り?」
「うん。今日は王妃教育もお休みだから家でゆっくり過ごそうかなって」
「王妃……あ……」
「ヒカリちゃん忘れてたなぁ?」
「あはは〜……」
そういえば僕も来年から王妃教育が始まるんだ。
学園生活に気を取られ過ぎてましたね……。
「まぁヒカリちゃんなら大丈夫だと思うけど、頑張らないと置いていかれるからね?」
「それはもうとっても頑張る!」
「よろしい! それじゃあ帰ろっか!」
「うん! アリアちゃんありがとう!」
そんなこんなで心を癒し、偶然出会ったアリアちゃんとお喋りしながらのんびり帰った。




