89話 婚約者候補勢揃い
三人で話しているうちに最後の魔法授業の時間が迫ってきていた。
「おねちゃん! おうじさまきた!」
「わかった! わかったよコウ!」
『パタン』とドアを開けたコウがいそいそと入ってきて、僕の手を引く。
「ヒカリちゃん、この子は?」
「凄く可愛いね! 絶対ヒカリちゃんの弟よね!」
元気が戻った二人はコウに興味深々。
「うん、後でちゃんと紹介するね! それより魔法の練習最終日だけど、二人は来る?」
「私も行きたいわ! 見てみたいもの!」
スーちゃんは有無を言わさず返事をする。
「なら私も行こうかしら! 弟くんはどうする?」
「いく!」
「じゃあ四人で行こっか!」
「ありがとうシャイナちゃん!」
シャイナちゃんはコウも気にかけてくれ、四人で王妃様とレオンの待つ庭まで大移動。
*
「これは……今日は随分と多いね?」
四人で魔法の練習の庭まで訪れると、早速困惑した様子のレオンが目に入る。
「あらあら、今日は生徒さんが多いのね?」
一方トワ様は何故かとてもニコニコしている。
大方『レオンの婚約者候補勢揃いだわ?』とでも思ってるんだろう。
「こんにちは、今日もよろしくお願いします!」
とりあえず説明の仕方がわからないので何事もなく挨拶。
「えっと……スティアとシャイナは、参加する?」
レオンはどうすればいいのかわからず、ぎこちなく声をかける。
「王妃様がいるわ……」
「私たちどうすれば……はっ! 先にご挨拶を!」
一方スーちゃんとシャイナちゃんもトワ様の姿にタジタジ。
「なんか、二人とも面白い!」
「ヒカリちゃんって意外と小悪魔さんなのかしら?」
「トワ様だって面白そうにしてるじゃないですか!」
「あら?」
そんな中でも僕とトワ様は世間話。
そりゃ、しっかりしてる友人たちがオドオドしてる姿なんて誰がみても面白いぞ?
「しょうがないわね?」
トワ様は咳払いを一つ。
「二人とも、今日はプライベートで来てるんだし、そんな堅くならないで? 王妃様じゃなくて『トワさん』って呼んでくれていいのよ?」
「「……」」
そして二人は沈黙。
「お、王妃様の命令よ! 今日はトワさんって呼ばないといけないわ!」
「そうねスーちゃん! 王妃様がそういうなら無礼覚悟で呼ばないといけないわ!」
「二人とも……?」
そしてトワ様困惑。
「絶対楽しんでるよ二人とも」
だってちょっと笑ってるもん。オドオドしてるのにニヤニヤしてるもん。
全く、悪い公爵令嬢だよ!
「お、お母様! とりあえず魔法の練習を……!」
「あらそうだったわね!」
「トワ様、よろしくお願いいたします!」
唯一蚊帳の外に飛ばされたレオンが軌道修正を図り、わちゃわちゃした空気を切り替える。
「スーちゃんとシャイナちゃんは参加するの?」
レオンが聞きそびれた問いを僕が再び投げかける。
「私は基礎すらわからないからやめとくわ?」
スーちゃんはアッサリとした声で不参加。
「私もやめておくわ? スーちゃんと同じで基礎もわからないので」
シャイナちゃんは少し名残惜しそうだったが、今無理にやって勉強が嫌いになっても困る。
「わかった。二人とも、申し訳ないんだけど、コウのことお願いできる?」
「勿論よ!」
「頑張ってねヒカリちゃん!」
「ありがとう!」
そんなわけでスーちゃんとシャイナちゃんはコウと一緒に庭の花壇付近で遊んでおり、こっちはこっちで最後の魔法の練習が始まる。




