87話 ミスから始まるお手紙
アリアちゃんとのお泊まり会から四日後。
今日は魔法の家庭教師の最終日。
あらかじめ手紙でスーちゃんとシャイナちゃんに『入学祝いやろう!』と手紙で送っており、今日がその日なのだが。
「本当にごめん!」
二人を応接室へ招いて早々、ヒカリちゃんこと僕は両手を合わせて頭を下げていた。
「初めての手紙だったから許してぇ!」
どうにか言い訳をしてみるが、スーちゃんとシャイナちゃんは呆れた目で見ている。
「初めての手紙であんなミス……」
「流石ヒカリちゃんね……?」
起きた出来事自体は単純。
スーちゃんの手紙をシャイナちゃんへ、シャイナちゃんの手紙をすーちゃんへ送ってしまった。
それだけ。
だけど、伯爵の娘が公爵家にそんなことをしたんだ。
しかも初めての手紙で!
『レオン様の入学祝いやろう!』とかいうラフ過ぎる手紙で!
「お兄様大爆笑してましたわ?」
「私のお母様も笑い転げてたわね!」
スーちゃんとシャイナちゃんは、鏡合わせのように頭を抱えて呆れている。
「だってだってぇ……!」
正直、遣いのせいにしたいけど、封筒はそれぞれの主に届いて、手紙の中身だけ入れ違いだから、疑う余地なく僕のミスなんだよな……。
「まぁ面白いものが見れましたし、私は許しますわ?」
シャイナちゃんはお淑やかに口に手を当てて笑っている。
「私、許さないって言ったらもう少し遊べるかしら!」
「スーちゃん許してぇ!」
あと何回醜く泣き喚けば許してくれるんだ一体!
「ウリウリ〜!」
「スーちゃんやめてぇ〜!」
なんか両手で頭ボサボサに撫で回されてる!
「これで許してやろう!」
「うえ〜ん……」
特別セットしてなかったけど、髪が飛んだり跳ねたりした無惨な姿になってしまった。
「おのれ許すマジ、いつかやり返してやる!」
「あはは! ヒカリちゃんじゃ無理無理!」
「わかんないよ!」
高笑いするスーちゃんを睨みつけることしか出来ない。
「そ、それはそうと、レオン様を祝うんだよね? 具体的に何するの?」
「え? おめでとーって言うだけ?」
「…………なんかヒカリちゃん、スーちゃんに似てきたね?」
「え、褒めてる?」
「…………」
やばいどうしよう、シャイナちゃんが黙っちゃった!
僕変なこと言った?
「ケ、ケーキとか作る?」
辛うじて口を開いて声を出し、ベターな案を提案する。
「ケーキかぁ、材料あるのかな? どうやって作るんだろう」
「ヒカリちゃん……」
「大丈夫よ! 今から買いに行けば間に合うわ!」
「確かに! 買いに行きましょ!」
スーちゃんの機転に乗っかり、応接室を出ようとする。
「ちょっと待って二人とも!」
「わわっ!」
「どうしたのよシャイナ!」
しかしシャイナちゃんが手を掴んで止め、胃が痛そうな表情で見つめる。
「こういうのって、手作りするものだと思ってたんだけど、違ったのかしら?」
「ヒカリちゃんどう?」
「私はするものだと思ってたけど、材料買って無いし、メイドにも伝えて無いし、多分無いわよね?」
「じゃあ買うしか無いわね!」
再び意見が一致して応接室を出ようとする。
「待って! お願い待って! 聞いてみよう? あるかもしれないわよ!」
しかしシャイナちゃんが必死に僕らを止める。
「私ね、今日凄く楽しみだったの! 初めてヒカリちゃんから誘ってくれたし、入れ間違いとは言えすーちゃんも来るんだってわかったし、お兄様が『学園では数人で料理を体験した』って言ってたの!」
「シャイナちゃん……!」
「学園って料理体験出来るのね! 凄いわ!」
ちょっと僕とスーちゃんで感動ポイントズレてた気がするけど、僕とスーちゃんの足を止めるには充分だった。
「もしかしたらそういうことが出来るのかなって思ってたの! だから……買うんじゃなくて、一緒に作りたい……」
「シ……シャイナちゃん超可愛い」
「ヒカリちゃん!!」
よし変更だ。今から材料を買いに行こう。
「シャイナがここまで言うのも珍しいし、買いに行くのは材料にしましょうか!」
「スーちゃん……! ありがとう!」
シャイナちゃんの純情で方向が纏まりかけた時『コンコン』とノック音と共に気まずそうな顔のお父様が入ってきた。
「失礼するよ。盛り上がってるところ申し訳ないけど、昨日シャルにケーキ用の買い出し頼んじゃって……。今から作れるけど、どうだい?」
「お父様!」
「か、買ってあるんですか!」
「……ヒカリちゃんのお父様凄いわね?」
どうやら手作りするかもと予想を立ててくれていたらしい。
「作ります! 私やってみたいわ!」
シャイナちゃんはお菓子作りに余程興味があるようで、凄く目がキラキラしている。
「買いに行く手間が省けたわね?」
「うん! お父様、厨房はーー」
「許可なら取ってあるよ?」
「ありがとうございます!」
何もかも先打ちしてくれていたらしい。
出来る大人だ。
「なら早速作りに行きましょう!」
「「おー!」」
シャイナちゃんの音頭に声を上げ、お父様に導かれて厨房へと向かった。




