85話 何気ない夜
「はい王様だーれだ!」
聞いたことないのによく知っている掛け声がアリアちゃんから上がる。
「はい!」
「カルラ、どうぞ!」
うーんと少し悩んだ仕草をする。
「ヒカリちゃんって何番?」
「言わないよ!?」
ルール聞いてなかったのか? 番号言っちゃダメなんだよ?
「うーん…………」
「カルラ、早く」
「わかってるけど……」
凄い頭を悩ませた末ーー
「一番、僕にハグして!」
「はいはい、そんなにお姉ちゃんが好きなのね?」
「なんでぇぇぇ!」
「知ってた」
おおよそ予想通り、姉を引き当ててハグされていた。
「もうやめたいこのゲーム」
番号札を回収し、既にへこたれたカルラが再び引き、それを皮切りに全員番号札を手に取る。
「はい王様は私です! 三番さん、私の膝の上にいらっしゃい!」
「あい!」
「コウくんおいでぇ!」
アリアちゃんが一瞬でこのターンを終わらせたけど、凄い幸せそうな顔してる。
わかるよ、コウ可愛いもんね?
「それじゃあもう一回!」
再び札を回収して、再度引き直す。
「はい僕です!」
「またカルラ?」
「良いでしょ別に! 一番さん、頭を撫でさせて!」
「カルラ……」
カルラくんは完全に一点狙いで楽しんでるな。
こういう暴挙に出る人がいると途端に面白くなるから不思議なんだよね。
まぁ三人しかいないし一点狙いのある程度しやすいんだけど。
「で、一番さんは誰?」
前世の合コンだったらカルラくんは相当場回しが上手なムードメーカーになってただろうな。
「……私です」
「やったぁ!」
「カルラ……」
まぁ、狙われた側はちょっと複雑な気持ちだけどね!
「はいどうぞ?」
そんなわけで少し俯いて頭を差し出す。
「…………本当にいいの?」
「カルラ早く!」
突然ひよるな阿呆!
そんなわけで覚悟を決めて僕の頭を撫で始める。
「や、やばい、もう終わる」
「腰抜け」
「もっと触る!」
「終わるって言ったからお終いです!」
この腰抜けめ、乙女に恥をかかせるんじゃない!
「はい次!」
テンポよくいきましょう。
再び番号札を全員手に取り「あい!」という声と共にコウが手を上げる。
「いちばんのとこいく!」
「コウ、おいで!」
「おねちゃん!」
アリアちゃんの膝から立ち上がり、トテトテと僕の元へ歩いてきて、そのまま膝の上に座る。
「コウくんいいなぁ?」
「カルラ……」
一体この時間でアリアちゃんは何回カルラくんに呆れたのだろう。
そんなこんなで王様ゲームは一時間ほど続けーー
「コウ? 大丈夫?」
「すー……すー……」
気付けばコウは眠りに落ちていた。
「コウくん寝ちゃったね?」
「だね? 時間も時間だし、私たちも寝よっか!」
「だね?」
ちなみにベッドは二つあるので、男子と女子で分かれて眠ります。
流石にカルラくんと一緒には寝れないかな……。
「カルラくん、コウのことお願いね?」
「勿論です」
「ありがとう! おやすみ?」
「おやすみなさい」
眠っているカルラを抱えてベッドに寝かせ「おやすみ」と一言かけて、僕とアリアちゃんはもう一方のベッドへ。
「私、友達が家に泊まるの初めてだわ?」
「私は……魔力測定で倒れた時と、男爵に絡まれた時に……ちゃんとお泊まりするのは初めてかも」
「あはは……ヒカリちゃんって結構トラブルに巻き込まれてるね?」
「確かに、アリアちゃんと下町で遊んだ時もそうだったね?」
思い返してみれば、意外と事件に遭遇してる。
「もう少し平和に過ごしたいな……」
「私もよ? 学園は騒がしくて仕方ないもの」
「でも楽しそうだよね?」
「楽しい…………そうね、凄く楽しいわ?」
大きく伸びをして、気の抜けたにこやかな表情でそう答える。
「公爵家のアリアとして接してくる子もいるけど、身分気にせず接してくる人もいるから、凄く楽しい」
「……やっぱり身分って、窮屈?」
「そんなことないわよ? 平民より未来は広いし、どんな人とも関われるもの。でも……」
「でも?」
「ヒカリちゃん見たいに、身分とか気にせずに話せる子が増えたら良いなって思うわ? 学園に入ってなおのことね?」
「そう……なんだね?」
正直『自分は偉いんだ』というか発想にならなかったアリアちゃんは凄く偉い。
だからこそ、わけ隔たりない関わりを求めているのかもしれない。
「ヒカリちゃんは、このままでいてね?」
「勿論だよ? アリアちゃんの良いとこもちょっとおバカなところも全部好きだから!」
「おバカなところ?」
ゆっくり僕の方を見てぷくりとほっぺを膨らます。
「えっと……私のこと好き過ぎて時々ポンコツなところ?」
「あんま変わってなぁい! このぉ!」
「きゃぁぁ!」
そんな風にワイワイしている中なのに、カルラくんは眠りについており、気付けば僕とアリアちゃんも疲労に任せて瞼を閉じていた。




