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82話 カルラの心境


「の……のぼせました……」

「ヒカリちゃんごめん、やりすぎちゃった」

「だ……だいじょうぶ」


 あれからアリアちゃんの気が済むまでくすぐられ、僕は湯船の温度とはしゃぎ過ぎの結果、大いにのぼせてしまいました。


 あぁ……身体に力が入らない……。


「まさか公爵様以外の方を抱き抱えるとは」

「ご……ごめんなさい」

「良いんですよ。ヒカリ様はアリア様の大切なご友人です」


 ゆっくり椅子に下ろされて、ドライヤーで髪を乾かす。


「それ、どうやって動いてるの?」

「魔力ですよ。少し魔力を流すだけで温かい風が送られる便利な品です」

「それも魔力なんだ」


 もしかして、魔力って思ったより日常に溶け込んでいるのだろうか。


「なんだか、ヒカリ様が初めて公爵家に来た日のことを思い出しますね」

「初めて?」

「一緒に絵本の文字を読んだ日です。覚えていますか?」

「勿論! もしかしてあの時一緒にいてくれたメイドさん?」

「はい。ハンナと申します。覚えて頂けると幸いです」

「ハンナさんね、よろしくね!」


 そんな雑談をしている間に髪が乾き、当然雨で濡れた服はまだ着れないので、アリアちゃんのパジャマを一着借りることになった。


「ヒカリちゃん超可愛い!」

「アリアちゃんも可愛い!」


 僕の髪色の、ピンクのワンピースのパジャマ。


「カルラとコウくんもお外で冷えちゃっただろうし、早いうちに戻りましょ?」

「承知いたしました」

「すみません、お願いします」


 まだ力が抜けて歩けない僕をハンナが横抱きで抱え、三人で応接室へ向かう。



「カルラ、コウくん、お待たせ!」


 応接室に互いの両親の姿はなく、相談事や趣味の話し合いに夢中なことが伺える。


「お姉ちゃん遅い……ヒカリちゃんお姫様みたい!」

「あはは、どうも〜」


 ただただのぼせて力が入らないだけなんだよね。



「じゃあ僕たちも行こうかコウくん!」

「うん! かるらくんとはいる!」


 コウは元気にカルラくんの後を追い、二人で浴槽に向かう。


「コウ、カルラくんと何かあったのかな? 凄い打ち解けてたけど……」


 ハンナは有無を言わさず僕をソファに寝かせ、急いで二人の後を追う。


「カルラも遠慮しなくて良い友達出来て嬉しいのかもね?」


 アリアちゃんはアリアちゃんでカルラの心配をずっとしていたらしく、そんな言葉が漏れたのだ。


 やっぱり、アリアちゃんも立派な姉だ。



「ヒカリちゃんまだ熱いね?」

「だいぶのぼせちゃったからね?」


 アリアちゃんはソファの前で膝立ちして僕のおでこに手を当てる。


「今ならお仕置きし放題だよ?」


 僕が少しイタズラっぽく舌を出す。


「するわけないでしょ! して欲しいならやってあげるけど?」

「イヤー!」

「はいはい!」


 そのまま頭を撫で、僕の頭を持ち上げて隣に座り、気づけば膝枕されていた。


「眠くなってきちゃった……」

「少し寝て良いわよ? カルラはヒカリちゃんの寝顔喜んで見ると思うし!」

「あはは……」


 迷子の子のお母さんを探して身体が冷え、お風呂場で温まってそのままアリアちゃんとじゃれあい、のぼせて力が抜けてそのまま横になり。


 流石に眠くなるのは許して欲しい。


「私もヒカリちゃんの寝顔堪能したいし?」

「アリアちゃんもなの?」


 勢いよくツッコむ元気も残っておらず、その言葉を皮切りに僕の意識は眠りへと落ちていった。





「カルラ様、早く行きますよ」

「嫌だ! 女性に裸を見られるなんて!」

「いつも見られてるじゃないですか……」


 私、ハンナは若干呆れていた。


 カルラ様はヒカリ様を好きになってから、一気に女性というものを意識し出した。


「だいたいなんで執事じゃないんだ!」

「今日は旦那様とオズワルド様の経営相談で大忙しです」


 メイ様のお手伝いは、今日はフィリア様が嬉々とやってくださっている。



「メイドの裸なんて……」

「裸ではありませんよカルラ様? 入浴着です。なんでこのやり取り毎日してるんですか!」


 黒の半袖半ズボンのどこに裸要素が詰まっているのだろう。


「初心というか、初恋の恐ろしさというか……」


 見ている分には可愛いけど、お世話の立場になると少し面倒に感じてしまう。


 死んでも口には出せないけど。


「あ……」

「どうしたハンナ、ようやく執事と交代する気になったか?」

「いえ、そうではなく……」


 だいぶ大人気ないことを思いついてしまった。


 カルラ様には申し訳ないけど、少しおちょくってやろう。

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