81話 乙女トーク
「ヒカリ様はおとなしくて洗いやすいですね」
「そうなの?」
「えぇ。カルラ様は凄くよくはしゃぎますから」
「あはは……」
浴槽を借りて公爵家のメイドに頭を洗って貰っている中、ヤンチャなカルラくんの話題が出てきた。
「ヒカリ様を好きになってから『女の人の裸なんて直視出来ない!』って騒ぐことが増えて、異性を意識しだしたんですよ」
「生々しいですね?」
現在七歳のカルラくんだけど、あと五年で思春期突入だ。
というか洗ってくれてるメイドも裸じゃないし、前世で言うルームウェアっぽい服だし。
「……じゃあ私が雨で濡れた時って」
「カルラやばかったと思うよ?」
話を聞いていたアリアちゃんが横から答える。
「ヒカリちゃんならどう? 好きな人が雨に濡れて、少し色っぽくて、それでも笑ってくれるの!」
「………………」
やっっっっっばい! テンション上がるどころじゃない。
もしかしてカルラくん、私を壁に寄せた時抱き寄せるの相当我慢してた?
でも七歳にそんな発想浮かぶ? 寧ろ七歳という幼さだから積極的に行けた?
うわぁ、どうなんだろう。
「私、カルラくん拗らせた?」
「そんなことないわよ? 同い年の女の子と関わってるのにヒカリちゃんが好きなんだし! 私もそうだけど、身分気にせず関わってくれるヒカリちゃんが好きなんだよ!」
「うん……」
それは今日話を聞いて知った。だからカルラくんは本気で僕に恋してるんだ。
お互い洗い終わり、大きな浴槽に身体を沈める。
「温かい……」
ずっと冷えてた身体が、温かさが表面からどんどん内側に浸透していく。
「ちょっとしてみたかったお話があるんだけど、良い?」
「良いけど、どうしたのアリアちゃん?」
重くなっていく瞼に身を任せ、耳だけ澄ませて身体が溶けていく。
「ヒカリちゃんって、胸大きいよね?」
「なんてこと言うの!?」
反射的に身体が起き上がって瞼がカッ開く。
「学園の浴槽でさ、そういう話で盛り上がってるの聞いちゃって、ヒカリちゃんに話したら面白そうだなって!」
「アリアちゃん!」
「ごめんごめん!」
まるで乙女みたいに両手で胸を隠す。いや今は実際に乙女なんだけど。
「そういうアリアちゃんだって……大きいの? 基準がわかんない」
「どうなんだろうね? でもヒカリちゃんは二つも歳下なのに私と同じくらいだから」
「…………ねぇアリアちゃん」
「何?」
ここで僕は不意にシャイナちゃんの教訓を思い出した。
今が使いどきだと言わんばかりに、思い出した。
「私の友達がね『バカなお友達にはお仕置きしないと』って言っててね?」
「ヒ……ヒカリちゃん?」
手をワキワキさせてアリアちゃんに近づく。そして徐々に下がっていくアリアちゃん。
「こうしてやるぅ!」
「待ってヒカリちゃん! あはははは!」
「アリアちゃん! ごめんなさいしなさ〜い!」
「ヒカリちゃんごめん! ごめんなさい!」
必死に手を振り払おうとするが、力が入らないくすぐりだと簡単に払えない。
「全く、何やってるんですか?」
洗ってくれたメイドは呆れているが、そんなことお構いなし。
「はいお終い!」
頭から湯気を上げて浴場で倒れているアリアちゃん。
(…………見ないようにしよう)
普通にいけない扉を開きそう。
そんなわけで再び浴槽に浸かり、身体を温める。
しかし、あのままアリアちゃんを野放しにしたのがいけなかった。
「ハンナ、命令よ。ヒカリちゃんの両手を抑えて」
「承知いたしました。すみませんヒカリ様」
「え……へ……ええぇぇぇ!?」
何故かメイドに両手を掴まれ、手を挙げた状態から動けなくなった。
「ヒカリちゃんの言う通りだわ。『バカなお友達にはお仕置き』しないとね?」
「アリアちゃんちょっと待って、私が悪かった! ごめんなさいアリアちゃん! だから止まって!?」
ゆっくりお湯をかぎ分けて、まるでラスボスの風貌で迫ってくる。
「アリア……ちゃん……!」
「覚悟なさい!!」
「キャアアアァァァァ!!?」
それからボロッボロになるまでくすぐられ、アリアちゃんには二度と逆らえないと誓えるほど、コテンパンにされたのだった。




