75話 コウのお披露目
翌日。
家族全員でセルライト公爵家に向かう準備をしている最中、お父様がミューゼとシャルに一言。
「今日は全員仕事休みなさい。これは命令だ」
「旦那様、正気ですか?」
「一日くらい構わん。働きすぎだ」
「……承知いたしました」
シャルの返事に合わせてミューゼも頷く。
メイド長と執事長が承諾したからか、徐々に屋敷中のメイドや執事にも伝達され、ウィンガート家は今日、やけに賑やかな声で溢れ出した。
そして家族全員でセルライト家に到着。
「いらっしゃいオズワルドさん、待ってましたよ!」
「メロードさんこんにちは。今日はよろしくお願いします」
家族団欒で訪れたが、お父様とメロード様は経営の相談なんだ。
うるさくし過ぎないようにしないと。
「ヒカリちゃんもいらっしゃい」
「こんにちはメロード様!」
「こちらの子は初めましてかな?」
腰を低くしてコウを見つめる。
コウはお母様の手を強く握って、少しおどおどしているが、意を決したようにお父様の礼を真似する。
「はじめまして『コウ・ウィンガート』ともうします!」
「初めまして『メロード・セルライト』と申します。礼儀正しくていい子だね?」
「ありがとうございます!」
(コウ、偉い!)
僕は心の中でガッツポーズ。
「さっ、メイも待ってるし、上がりましょう。アリアとカルラは知らないから、そーっとね?」
いつもより静かにセルライト家の廊下を歩いて応接室へ。
「あらいらっしゃいオズワルドさんフィリアさん!」
「メイさんこんにちは。服贈ってくださりありがとうございます! 二人とも凄く喜んでました」
「それは良かったわ!」
先にお父様とお母様が応接室へ入り、ソファに腰掛ける。
「フィリアさんオズワルドさん、こんにちは!」
「アリアちゃんこんにちは」
「カルラくんも、こんにちは?」
「こ、こんにちは」
どうやらセルライト一家が応接室に揃っているようで、カルラくんは少し緊張した声音をしている。
そして、僕はコウを抱き上げ、ヒョイと扉から顔を出す。
「こんにちは!」
「こ、こんにちは……」
「こんにち……ヒカリちゃん!?」
「え、あ、ヒカリちゃん!」
「私たちも来ちゃいました!」
アリアちゃんは目を見開いて驚き、カルラくんは緊張した顔から一転、キラキラした笑顔を見せてくれた。
コウを下ろして応接室に入り、少し開けた空間へ誘導。
「コウ、アリアちゃんとカルラくんと、メイ様とメロード様に挨拶して?」
「はい! はじめまして『コウ・ウィンガート』ともうします!」
お父様の礼を真似して頭を下げる。
「初めまして『アリア・セルライト』です!」
「『カルラ・セルライト』です!」
二人も一礼を済ませる。
「コウ、こちらのメイ様が、今日着てる服を作ってくれた人よ?」
「はい! ありがとうございます!」
「うふふ! いいのよ? 凄く似合ってるわ!」
メイ様は物凄い笑みでそう返す。
しかし、コウの姿初めて見るはずなのによくピッタリで採寸出来たな……。
「ヒカリちゃん……凄く可愛い」
「本当? ありがとねカルラくん!」
「はわわ!」
そしてカルラくんはお手本のような照れ方をしている。
「お母様、私とカルラに新しい平民服作ったのって、もしかして……!」
「あらアリア、察しがいいわね? そうよ、私が四人のペアルックを見たかったからよ!」
「お母様!」
「どういうことアリアちゃん?」
アリアちゃんはキラキラした瞳でメイ様を見ているが、僕とコウは何もわかっていない。
「少し前に、お母様が私とカルラ用に平民服を見繕ってくれたんだけど、それが今ヒカリちゃんとコウくんが着てる服と入り違いなのよ?」
「え、凄い! メイ様!」
「どうせなら並んで着てみて欲しいわね?」
「あら、私も気になるわ?」
趣味全開のメイ様だ。そしてお母様もウズウズしている。
因みにメイ様が贈ってくださった服はーー
ヒカリちゃんには白のポロシャツと、アリアちゃんと同じ髪色、空色のチェックスカート。
コウにも同様白のポロシャツと、空色のチェックズボン。
そしてどうやら、アリアちゃんとカルラくんは、同じポロシャツと、僕とコウの髪色と同じピンク色の、それぞれスカートとズボンを見繕ったらしい。
とんでもなく粋なことをしたメイ様である。




