表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
73/75

72話 昔話


 こんにちは、ヒカリちゃんです。


 気付けばもう直ぐ十一歳。


 時々アリアちゃんや、スーちゃんシャイナちゃんと遊んだり、コウのお勉強を見たりしていたら、あっという間に学園入学まで約一年。


 おおよそ週一でトワ様監修の元、レオン様と魔法の勉強を始めて既に大詰め。


「そういえばトワ様」

「どうしたのヒカリちゃん、またレオンと町に行きたくなった?」

「お母様!?」

「違います!?」

「違うの……?」

「もう!」


 超面倒臭いやり取りは全部スルーしてそのまま話し出す。


「もう家庭教師で習える魔法も大詰めですよね?」

「そうね……今日か来週でお終いかしら? レオンの入学準備もあるから、これ以上は少し難しいわね?」

「ならーー」


 下手したら今日が最後の日なら、初日に聞きそびれたことを聞いておきたい。



「トワ様の……昔の話、聞きたいです」

「あ〜、そういえば魔法教え終わったら教えてあげるって言ってたわね?」

「……」


 いや忘れないで! あの時の僕からしたら魔法より重要だったよ!


「じゃあ、長い話だし、今から教えてあげるわ? レオンも聞いてなさい。きっとこれは、人としての在り方を左右する話よ?」

「わかりました」


 皆んなで庭の芝に腰掛け、トワ様はゆっくり話し出す。




 その日、私の家は炎に包まれ、全てを無くした。


 この頃の私『トワ』は、まだ五歳にも満たない子供だった。


 自分の名前しか覚えていない、両親も『パパ』『ママ』と呼んでいて、名前すらわからない。


 ただ一つ、二人は自分の身を犠牲にして私を火の手から守り、何気ない日常は灰になった。


「ママァァ! パパァァァ!?」


 家がパチパチと燃える音より大きく泣き叫んでも、私の鳴き声は夜に掻き消されて届かない。


 後から知った話だけど、両親は『貴族至上主義』の男爵の怒りを買ったらしく、制裁の意を込めて放火に及んだらしい。


 私が一人彷徨っている中、知らない男性に声をかけられた。


「どうしたんだい?」


 その優しい男性は、未来の義理の父『セカイ・テンライト公爵』。


「ママとパパがぁぁ!? 燃えちゃったぁぁぁ!」


 説明なんてロクに出来ない。だけど事件を知っていたセカイ様が私の頭を撫で「辛かったね、苦しかったね」と何度も何度も優しい声をかけてくれた。



 その後セカイ様に引き取られ、家族全員に事情を話して『家名すら覚えていないトワ』から『トワ・テンライト公爵令嬢』へとなった。


 屋敷は『セカイ・テンライト公爵』『ヒカリ・テンライト公爵婦人』『フィリア・テンライト公爵令嬢』『ロード・テンライト公爵子息』の四人家族の公爵と、沢山のメイドと執事で溢れてた。




「……え、ヒカリって」


 思わずトワ様の話を遮る。


「そうよヒカリちゃん。貴女の名前はお母様から繋いだ名前なのよ?」

「繋いだ……?」

「もう亡くなられてしまったわ。少し働きすぎてしまって、無理が祟ったのよ」

「……」


 過労死。こっちの世界にもあったなんて……。


「私はテンライト公爵家の養子になって、死に物狂いで勉強したわ? 勉学も、淑女教育も、音楽教育も」

「お母様……」


 懐かしいな〜、と言わんばかりの顔をしているけど、そんな優しい世界じゃないことくらいわかってる。


「でもね、幾ら公爵家の人間になっても『連れ子』ってだけで、虐めの対象になっちゃうのよ。侯爵家の人間は本当に面倒くさかったわね? ことある毎に『元平民のくせに』『公爵のひっつき虫』とかね?」

「うわぁ……」


 いつの時代も悪口のレパートリーって変わらないんだな。


 そういえば『こうしゃくの名を持たないのに婚約者が〜』とか色々言われたな〜、あのお茶会で……。


「だからね、魔法が必要だったのよ」

「……なんでそこから魔法に?」

「ふふっ、魔法は気持によって左右される、気持ちを作るのが大事って言ったわよね?」

「はい……」


 それのおかげで、初日は魔法が十五分も保たなかったからよく覚えている。


「だからね、魔法を使って気持ちを鍛えるの。『なんて言われようが気にしない。私は私だって』」

「……」

「ヒカリちゃんは確実に侯爵家に絡まれるから、自分の気持ちを強く持って欲しいの。全てを失った後、ちゃんと幸せを手に入れた先輩からのアドバイスよ?」


 他人の評価は気にしない。この世界にその考えがどれだけ浸透しているのかわからないけど、僕の場合は人一倍その考えを強く保たないといけないっぽい。



「これが私の昔話。ちょっと難しかったかしら?」

「そんなことありません。ありがとうございます、話してくれて」

「良いのよ? ヒカリちゃんにならなんだって話してあげるわ? レオンがヒカリちゃんのことどれだけ好きかとかね?」

「お母様!?」

「あはは……」


 この王妃様、人としてちゃんと芯の通った強い人だ。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ