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71話 写真機


 シャイナちゃんが持ってきたのは、僕が良く知るあの両手で収まる写真機。


「てっきりもっと大きいのかと」


 日本の初代写真機なんてこんなメカニックじゃなかったはずだ。


「私も使い始めてからあまり時間経ってないからわからないけど、これ以上大きく作ると魔力使い過ぎて危険って書いてあるわ? 一日三回までしか取れないみたい」

「なるほど」


 一日三回までは流石に少ないどころの制約じゃない。


 そもそも現代日本では魔法で動くなんて概念がないから、同じカメラでも完全に別物と考えた方が良さそうだ。


「シャイナちゃん、これ」

「ヒカリちゃん?……あ!」


 説明書的なものの表紙に堂々と『試作品』と書いてあった。


 この様子だとまだ販売すらされていないものっぽい。


 そしてシャイナちゃんが『買って頂いた』と言っていたものは『買った』じゃなくて『試作品使用を買って出た』なのだろう。


「使って良いものなの?」

「それは大丈夫! お父様が良いって言ってたわ! 使ったこともあるのよ?」

「なら大丈夫ね!」


 三回までのか制約があるにしろ、シャイナちゃんが実際に使ったことがあるなら大丈夫だ。


 そんなわけでシャイナちゃんが写真を持ち、僕は少し離れて棒立ち。


「ヒカリちゃん、何かポーズ取ってみて?」

「ポーズ……」


 どうしよう、前世から蓄積がなさ過ぎてわからない。


 今世でも写真なんて初めて見たからヒカリちゃんとしての蓄積もない。


「じゃあ……」

「……味気ないわね?」

「シャイナちゃん!?」


 頑張って捻り出した片手ピースになんてことを言うんだ!?


「ヒカリちゃん可愛いんだから、もっと色々出来そうだよ?」

「もっと色々……あざといポーズ……」


 ぶりっ子なんて性に合わないけど……。


 頭の上で両手ピースをして笑顔を作る。


「かっ!」

「か?」

「可愛い!」

「シャイナちゃん早く撮って!?」


 なんかもう凄い恥ずかしい!


 ようやく『パシャリ』と音が聞こえて一枚撮り終わる。


「すごい……!」

「どれどれ?」


 自分の写真だけどヒカリちゃん自体は凄く可愛いから気になる。


 シャイナちゃんの持つ写真を覗くと、頭上で両手ピースしている笑顔のヒカリちゃんがいた。


 それだけ。はい、以上。


「こん……な!」


 一方シャイナちゃんは悶絶している。


「…………」


 まさか写真文化で無双経験するの? ちょっと嫌なんだけど。


 雑誌なんて見たことないし、写真なんてロクに撮ったことも撮られたこともないのに。


「これ、どうしようかしら」

「……」


 いやどうするつもりなの!? というか何に悩んでるの? 試し撮りじゃないの?


「……売れるかしら」

「売らないでぇぇぇ!!?」

「流石に冗談よ? 国が傾いちゃうわ?」

「傾城傾国の美女扱い……」


 持ち上げられると嬉しいけど、遥か天上まで上がると逆に怖い。


「でも三回しか撮れないのは少し不便ね?」

「試作品だから……あ!」

「どうしたの?」

「そういえば私『筒』って体質だった」

「……もしかして、ヒカリちゃんなら沢山撮れる?」

「かも!」


 今日の今日まですっかり忘れていたが、非常に便利な体質を持っていた。


 そんなわけでシャイナちゃんから写真をを受け取り、少し離れて写真機を向ける。


「シャイナちゃん、笑って〜!」

「笑う……うーん……」


 凄く照れくさそうに俯いている。


 そんな風に覚悟を決めてる瞬間が可愛かったので、そのままパシャリと一枚。


「え! ヒカリちゃん今撮った!?」

「シャイナちゃん超可愛い!」


 白髪の女の子(十歳)が頬を赤らめて俯いている写真。


 前世だったらエグいぐらい需要高そう。


「ヒカリちゃんそれは消して!」

「えぇ〜どうしようかなぁ?」


 写真機を握りしめて一歩引く。


 絶対スーちゃんにも見せたい写真だ。


「ふーん、そう言うことするんだ? バカなお友達にはお仕置きしないとね?」

「ヤ〜ダ! これは消さないもん!」

「ヒカリちゃーんっ!」

「逃げちゃうもんね!」


 前回みたいに思い切りくすぐられるのは勘弁、だけどこの写真は残しておきたい。


「待てぇ!」


 ソファを跳ね、椅子に乗り、卓を挟んで逃げ回る。


 お互い淑女とは程遠い駆け回りを演じる。


「捕まえた!」

「きゃっ!」


 気付けばソファにうつ伏せで捕まり、どうにかカメラをソファから落とさないよう腕を伸ばして力を込める。


「ヒカリちゃん、お覚悟を!」

「きゃあああぁぁぁ待って! あははは待って! ごめんなさい!」


 カメラを持ってるせいで、抵抗出来ずに脇と脇腹をくすぐられる。


「絶対許してあげないんだからぁ!」

「あはははは! ごめん!」


 力が抜けてカメラがコトリと落ちる。


「返す! 返すから許して!」

「どうしよう……楽しい!」

「シャイナちゃん! あははは! 離してぇぇ!」


 なんか、明らかに開いちゃダメな扉が開いてる。



 そんなどんちゃん騒ぎを聞きつけたのか、勢いよく扉が開く。


「二人とも静かに! ってカメラ落としてるぞ?」

「お、お兄様!? それは!」


 入ってきたブラインさんがカメラを拾い、丁度撮りたてのシャイナちゃんと僕の写真をみる。


「あはは、二人とも可愛くて良いじゃん!」

「あはは……」

「おにいさま!!?」


 結局、シャイナちゃんの強い要望により、今日はもう写真を触らせてくれなかった。



 筒体質、活かせる場面は来るのだろうか……。

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