65話 いざ実践へ
「それじゃあ、今から二人にはデートしてもらうわ?」
「はい……え?」
「え……え!?」
僕とレオン様は同時に困惑。
どこからそんな突飛な話になったんだ?
「二人ともビックリした表情ね? それで良いのよ!」
「え……なんで!?」
「言ったでしょ? 魔法をかける時の気持ちが大事なのよ?『一緒に遊ぶのが楽しみ』って気持ちに切り替えて魔法を使うのか『なんでいきなりそんなこと言うの』って気持ちで魔法を使うのか……ね?」
「ぐぬぬ……」
言いたいことは理解したけど、それにしたって唐突過ぎやしないか?
「あ……あの」
「どうしたのヒカリちゃん?」
「魔法はどうやってかければ……」
「あぁそうね!」
気持ち云々は一旦置いておくにしても、魔法の使い方がわからない。
使い方を知らなければトワ様のやりたい事もやれない。
「簡単よ? 髪を何色に染めたいかイメージして『◯色に染まって』って頭に触れて念じるだけ!」
「そんな簡単にーー」
「お母様、こんな感じですか?」
「そうよレオン!」
レオン様の金色の髪は、見事に黒色に染まっていた。
「さ、ヒカリちゃんも!」
「はい……」
半信半疑だがやるしかない。
(デートかぁ……レオン様と遊ぶのは楽しかったけど、元同性なのに変にドキドキしたり、やけに格好いいと感じたりして、自尊心が崩壊するんだよな……)
トワ様の言ったことをすっかり忘れて、そんな気持ちで自分に魔法をかける。
(白いドレスだし、白い髪色に染まって)
指先を頭に触れる。
「ヒカリちゃんも上手ね! 綺麗な純白だわ!」
「ありがとう……ございます?」
自分ではわからないけど、ちゃんと白に染まったらしい。
「取り敢えず一時間ほど、二人で……ヒカリちゃんはドレスじゃない方がいいかしら?」
「なら、メイさんが買ってくれた服着ましょう!」
「お母様、凄い乗り気……」
トワ様といるからか、お母様も普段よりテンションが高い。
そんなわけで僕はお母様に連れ去られて、以前レオン様にべた褒めされたあの服に着替えて参上。
「あら、凄い可愛いわね?」
「僕もそう思います」
「どうしてこんなことに……」
愚痴を言っても仕方ないが、愚痴の一つくらい言わせてくれ。
「それじゃあ、行ってらっしゃい! 魔法が解けたら戻ってきてね?」
「わ……わかりました」
「行ってきます」
僕とレオン様は、完全に普段の見た目と違う姿で町に駆り出された。
*
町中には、元気な子供の声や、立ち話をしている学生や主婦人、賑わうカフェのテラスなど。
『活気がある』を体現した景色が広がっている。
そして僕は、活気とはかけ離れた妙な気持ちに襲われていた。
「レオン様、今日の服……」
「これ? お母様がね『正装じゃなくて、軽い服装で行くよ』って。これが理由だったとは……」
「あはは……」
あらかじめ仕込んでたのか。
髪が黒くて日本馴染みな服着てると、本当に日本人みたいだ。
「ヒカリは、その格好……」
「前も見たよね? もう数着目立たない服買っておけば着回しじゃなくて済んだけど」
「いや、この服がいい」
「へ?……へ!?」
この服が良いって何? なんで手を繋ぐ!? なんで頬を赤くして僕を向く!!?
「ヒカリは、目立たない服とかじゃなくて、自分に似合う格好でいてほしい。その分僕が守るからさ」
「なっ……!?」
なんて事言うんだこのイケメンは!?
「スーちゃんやシャイナちゃんにもね……ちゃんとね、言ってあげなよ!」
どこを見ていいかわからない視線を誤魔化すように言葉を繋ぐ。
しかし、レオン様はーー
「言ってるよ。でもーー」
「でも?」
同時に少し視線と歩みを落とす。
「ヒカリは、ちゃんと受け取ってくれないから、沢山言わないと」
「それは……」
僕は思わず足を止める。
何かあるたびに、スーちゃんやシャイナちゃんにもやってあげて、言ってあげての繰り返し。
「僕の褒め言葉も、二人は素直に受け取って喜んでくれるけど、ヒカリには届いてない気がして」
「……」
「だから、この服着てくれた時も、僕が褒めたから着てくれたのかなって思ったけど……」
「そう……だよね……」
『自分が元男だから、自尊心』がとか言って逃げてきたけど、レオン様からしたら『同世代の女の子、ましてや婚約者候補の女の子一人にすら、ちゃんと気持ちが伝えられていない』と思っていたんだ。
「レオン様……」
「ごめんねヒカリ。もし婚約者候補が嫌だったら、いつでもーー」
「待って!!」
「え?」
僕は反射的に声を上げ、レオン様の手を強く握る。




