表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
61/77

60話 貴族社会の派閥


 ハイス子爵は何も言えずに俯いたまま。


「ねぇアリアちゃん、貴族って皆んなこんなんなの?」


 冗談抜きで公爵の三家以外まともなのと出会ってない。


「私も詳しくないけど、侯爵内で派閥があるらしいわよ?」

「侯爵内?」


 最早男爵や子爵の話で収まらないことだった。


「侯爵って、プライド高いのよ。それでいて身分の低い忠犬が大好きで、立場をわきまえない人が大嫌い」

「うわぁ……」

「そんな侯爵に感化された貴族がね、一定数いるのよ。目の前のハイス子爵とか」

「なるほど……」


『平民は国の宝』そんな言葉を上っ面に考え、自分は偉いんだと勘違いした貴族。


 そんな駄犬の正体は、侯爵の忠犬だったわけだ。


「勿論全員がそうじゃないんだけどね。私もよく話す侯爵の人もいるし。でも……」

「多いんだね?」

「うん」


 アリアちゃんがよく話す侯爵派閥と、目の前の子爵の侯爵派閥は別物だって直ぐわかる。


「この話はまた今度話すね」



 話に一区切りつけ、僕とアリアちゃんはハイス子爵に詰め寄る。


「もう一度言うわね? 申し開きは?」

「……ありません」

「そう」


 観念したのか、無気力気味にそう呟く。


「ヒカリちゃんからは何かある?」

「私はずっと言ってることをしてくれたらいい」

「いい……とは?」

「二人に謝って! 許すかどうかはナツとルカに決めてもらう」

「っ……!」


 今回の被害者は僕じゃなくてナツとルカだ。


 ここで僕とアリアちゃんが丸く収めてもいいけど、それじゃあナツとルカが晴れない。


「わかりました」


 俯いているから表情はわからないが、渋々でない様子なのはわかる。


 僕とアリアちゃんを横切り、ぐったりしているルカと、ルカを抱き寄せているナツの下まで歩く。


 そして、徐に正座をし、両手の平を地面につけて頭を下げる。


「ナツ、彼を傷つけてしまい、申し訳ございません。子爵にものを言わせて申し訳ございません」


 彼は、土下座をしたのだ。


 本心からなのか、公爵に目をつけられたからかはわからないが、確実に最上級の謝罪をしている。


「……さない」

「ナツ?」

「絶対許さない! ヒカリ様が来なかったらルカを殴ったこと気にも留めなかった!」


 ナツボロボロに泣き出し、嗚咽混じりにそう叫ぶ。


「さっきもそう! ヒカリ様に酷いこと言って、伯爵だってわかってから急に態度変えて! ヒカリ様が何も言わなかったら酷いことしてた!」

「それは…………」

「だから絶対許さない! お願いだから、もう私に近づかないで!」

「………………わかりました」


 ハイス子爵はナツの拒絶を受け入れ、ゆっくり立ち上がる。


「…………」


 あの男爵は最後まで愚かだったけど、ハイス子爵は違うらしい。


 愚かなのは間違いないけど、終わりきってない。


「アリア様、ヒカリ様……」


 ナツとルカに背を向け、今度は僕たち二人の方を向く。


「今日のことは、俺自身で犯したことで、兄上や両親、家族の人間は関係ありません。罰は僕一人でお許し頂けないでしょうか」

「どうするヒカリちゃん」

「そうだね」


 少しだけ頭を回して考える。


「さっきも言ったけど、ナツが許さないって言ったから、私も許さない。でも、反省してるっぽいし、ナツがもう近づかないでって言ったから、それさえ守ってくれれば私はいいかな?」

「ヒカリちゃんがいいなら私もいいわ?」

「寛大なお言葉、感謝します……」


 一つ頭を下げ、ハイス子爵は馬車でその場を去っていった。



「全く、折角ヒカリちゃんと楽しく遊んでたのに、ハイスのせいで全部台無しだわ?」

「あはは……」


 いや本当にそう。


 でも、流石に放っておくわけにもいかなかった。


「ヒカリ様……」


 ナツは未だ泣き止まない様子で、ルカに至っては意識を失っていた。


 まぁ極限の緊張状態だったし、経験者だからわかるけど、これはしょうがないよね。


「ナツ、よく頑張ったね!」


 僕は膝立ちになってナツの頭を撫でる。


「ヒカリ様ぁ!」

「ちょっとナツ!」


 涙でぐしゃぐしゃの顔で抱きついてきた。


「ねぇアリアちゃん」

「わかってるわ! 馬車用意してもらうよう頼んでくるから、ちょっと時間貰うわね?」

「ありがとうアリアちゃん」


 そう決まれば行動は早く、アリアちゃんは駆け足で屋敷のある方角へ去っていった。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ