55話 学園事情
アリアちゃんと遊びに行く日が明日に迫ってきた。
そんな中でもちゃんと日常生活は起きており、今日もコウは必死にユースに勉強を見てもらっている。
僕は書斎でのんびり領地経営の本を見ている。
因みに見ているだけで何言ってるか全くわからない。
こりゃ領地経営できねーわ!
そんな風に暇を持て余していると、ノック音と共に書斎の扉が開く。
「あれ、久しぶりだね?」
「お久しぶりですヒカリ様!」
「久しぶりです!」
入ってきたのは、学園生活で忙しくしていたナツとルカ。
学園生活の準備や、勉学について行くのに必死で、実に四ヶ月ぶりの再会だ。
「学園生活はどう?」
「凄く楽しいですよ?」
「貴族ばかりで疲れる……」
「おぉ……」
ナツとルカで見事に意見が割れた。
「もうね、ヒカリ様がどれだけ寛大なお方か身に染みてわかりました……」
「ルカ……病んでる?」
「もうロクな貴族いない……」
曰く、傲慢な男爵と子爵、見栄っ張りな伯爵、人を見下す侯爵、身分制度撤廃しているとは思えない程身分社会とのこと。
「同じクラスにセルライト公爵様がいるんだけど、その人だけですよ……」
「セルライト……もしかしてアリアちゃん?」
「え!? ヒカリ様ってアリア様とご友人!?」
「うん、明日一緒に遊びに行くくらいには」
「めちゃくちゃ仲良いじゃないですか!」
そういえば二人には公爵家と繋がりがあることを話していなかった。
「良いなぁルカ、公爵様と同じクラスで!」
「ナツは違うの?」
「はい! ルカが言うほど酷い貴族はいませんけど、皆様と楽しく話せています!」
そういえば前世でもきょうだいはクラスは別々になってたっけ。
「貴族にも良い人と悪い人がいるってヒカリ様が教えてくれたから、自分の目で見るようにしたんです!」
「ナツは立派だ!」
「ルカもちゃんとしなよ?」
「あはは……」
ナツもルカもそれなりに楽しそうにやれてて何よりだ。
「そういえばヒカリ様、ナツに恋人出来たんですよ?」
「ちょっとルカ!?」
「え! 聞きたい!」
突然流れてきた恋バナに思わず心が弾む。
冗談抜きで、前世は恋バナとかそう言うことは無関係だったからどんな感じなのか気になる。
「ちょっと恥ずかしい……」
頬を赤らめて俯くナツは、まんま恋する乙女だ。
「命令よ、話しなさい!」
「ヒカリ様!?」
「あはは! ナツ諦めろ?」
「ルカのせいでしょ!?」
ポカポカとルカを殴り「ヒカリ様のバカ」と可愛い罵倒を投げ、ようやく落ち着いて話してくれた。
相手は同じく平民。席が隣で勉強を少し教えたり、お互い双子、価値観の近い考え方で惹かれあい『お試し』というか形で交際スタートとのこと。
「いいじゃん! 素敵だと思うわ!」
聞いててくすぐったい気持ちになる。これが、恋バナ!
「ただ、一つ問題があって……」
「ルカ?」
さっきの甘い雰囲気とは一転して、ルカは難しそうな顔をする。
「ナツ、今とある子爵の男からかなりしつこく好かれてて……廊下で待ち伏せとかもあったよな?」
「はい。断ってはいるんですけど『身分が〜』とか言ってくるので、断れない時もあって……」
「それは……許せない……」
「ヒカリ……様?」
丁度四日前、僕も男爵の横暴に遭ったばかりだ。
正直ナツが貴族に好かれる心あたりはある。
僕と関わってきたからか、貴族相手の距離感の掴み方が上手なんだ。
ちゃんと敬うけど固くなり過ぎず、ルカのおかげで男性との関わり方も知っている。
貴族からすると『飾らなくてもちゃんと自分を見てくれる相手』なのだろう。
そりゃくすぐったい気持ちになるよね。そんな気持ちになるの確実に初めてだろうし。
「ごめんなさいこんな話、お気に触ってしまいましたよね?」
「そんなことないよ! 出来ることあったら私も協力するから、遠慮なく言ってね?」
「ヒカリ様ぁ!」
すげぇナツの目が輝いてる。
「でもヒカリ様も気をつけないといけないかもっすよ?」
「ルカどういう事?」
僕が気をつけるべき相手は侯爵だけ。それすらも四大貴族の公爵家のうち、三公爵家のお気に入りになっている現状だ。
迂闊に手を出せばキツめの仕置き待ったなしだろう。
「ヒカリ様も平民に優しいし、王族の婚約者候補で、純粋に可愛いから、身分学年とか関係なく揉まれると思いますよ?」
「たしかに! ヒカリ様って気さくで話しやすいから直ぐ持ち上げられそうですね?」
「持ち上げ……」
なんか、どんどん学園生活が億劫になっていくのは気のせいだろうか……。




