53話 ご立腹なシャイナちゃん
「シャイナ、よく来てくれたわね!」
「スーちゃんの誘いは断らないわよ?」
クスリと笑うシャイナちゃんは、大らかさに憧れているのか、スーちゃんのお母様の面影を感じる。
「お母様がね、ドレス作ったから幾つか試着してほしいって言ってて」
「それで私の出番なのね? そろそろ社交界デビューのことも考えないとよね?」
「あと二年だものね? お母様毎年張り切って作ってるから」
スーちゃんのお母様はドレスのお針子が趣味なのか。
もしかしたら僕がいつも着てるドレスもスーちゃんのお母様ブランドの可能性も。
今後贔屓にしてもらいたいものだ。
そっと顔を出すとスーちゃんと目が合い、なんか……笑いを堪えてる。
「スーちゃん?」
シャイナちゃんが不思議そうにスーちゃんを見つめる。
「な、なんでもないわ!」
(ははん?)
ちょっとシャイナちゃんにちょっかい出してスーちゃんを笑わせてやろう!
そんなわけでシャイナの頭に指でツノを生やす。
「くっ!」
「スーちゃんどうしたの?」
「なっ……なんでも……ないわ!」
「嘘! 何隠してるの?」
必死に笑いを堪えているスーちゃん。いやもう堪えられてない。
良いよね若いって。こんなくだらないギャグで笑ってくれるんだもん。
そんなわけでネタバラシ。
シャイナちゃんが後ろを振り返るが、僕は急いで回ってシャイナちゃんのソファの隣に座る。
そしてーー
「何が変なーー」
「わぁっ!」
と驚かした瞬間ーー
「「キャアアアアァァァァ!!?」」
オーラライトの屋敷に、シャイナちゃんの大きな悲鳴が響き渡った。
「ヒ……ヒカリちゃん……?」
「はい! ヒカリちゃんです!」
目を点にしてアワアワと口をぱくぱくさせている。
一方僕はニコリとピース。
「おどおどしてるの可愛い!」
ちょっと素直に言葉を口にすると、シャイナちゃんは何故か僕をソファに押し倒した。
……なんで?
「ヒカリちゃ〜ん……!」
「待ってごめん! シャイナちゃんごめん!」
急いで謝罪を試みるが、既に遅かった。
「お母様がね、おバカな友達にはこれしろって言ってたの!」
「あぁ……私も昔やられたのよね?」
「何……を……!?」
なんか強烈に嫌な予感がする。
「スーちゃん、手」
「ごめんねヒカリちゃん、私シャイナには逆らえないの?」
なんで両手首を抑えたの? なんでシャイナちゃんは手をワキワキさせてるの? なんで、マジでなんで!?
「くーらえ〜!!」
「ぎゃああああァァァァ!!?」
十歳児程度の腕の力も振り払えず、元高校生、女児にくすぐり倒されました。
なんて……屈辱……。
*
「スーちゃんのお母様凄いわね?」
持ち運び可能なハンガーラックを置き、作られたドレスをかけていく。
総数七着。
メイドや執事も手伝いもあるだろうが、趣味で全部作り上げたとのこと。
「あの、シャイナちゃん?」
「でもこの中からお店に並ぶのって一着あるかないからなのよね?」
「お母様が『納得いかないわ!』って言うから!」
カラーバリエーションこそ黒で統一されているものの、細かなデザインやパニエの差で大きく違って見える。
「シャイナちゃん!!」
「どうしたのヒカリちゃん?」
「どうしたのじゃなくて!」
ドレスは気になるよ、元男なのに気になるのは置いておいて、現状のヒカリちゃんの方が問題だ。
「なんで私シャイナちゃんに膝枕されてるの!?」
「え? 私を驚かせた罰よ?」
「くすぐりで終わりじゃないの!?」
いや尊厳! 元高校生が十歳児に膝枕!?
「ヒカリちゃんがこんな可愛い格好してるのが悪いのよ? こんな平民服初めて見たけど、よく似合ってるわ?」
「ありがとう! 起きていい?」
「ダメッ!」
「スーちゃん……!」
「ヒカリちゃん、私シャイナに逆らえないの」
「ぐぬぬ……」
驚かそうって言ったのスーちゃんのくせに……!
「こうやって見ると、なんか二人って姉妹みたいよね? シャイナはお姉ちゃんみたいだし、ヒカリちゃんなんてまさに妹だし」
「え〜、そう?」
凄く満更でもなさそうに声を漏らした。
「えっと……シャイナおねえちゃん?」
「ヒ……カリ……ちゃん!」
(これヤバい……)
確実に開いちゃいけない扉開いた。シャイナちゃんがれず堕ちしたかも。
いやマジで良くない! めちゃ頭撫でてくる!
「シャイナどうしたの?」
「な……なんでもないわ?」
「……」
とりあえず、無闇に姉妹に成り切るのはやめようとたった今誓いました。




