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52話 オーラライト公爵

家

 スーちゃんとお話しして数分後。


「こんにちは? 初めましての方がいいかしらね?」


 おおらかそうな女性がノック音と共に入ってきた。


 そして言うまでもなくスーちゃんそっくり。



「初めまして……スーちゃん、スティア様のお母様ですか?」


 急いで姿勢を正し女性を見つめる。


「えぇそうよ? 初めまして、スティアがいつもお世話になっているわ?」

「そ、そんなこと! 私がいつも助けられてばかりで」

「そうよ! 沢山助けてるわ!」

「スティア?」

「うっ、ごめんなさい」


 萎れるスーちゃんを横目に自己紹介を済ませる。


 強気でストレートなスーちゃんとは真逆のタイプだが、血の繋がりは容姿から強く感じる。


「ヒカリちゃん、これ」

「あ、私の服!」

「これを届けに来たのよ? 着替えたら、ヒカリちゃんにお客さんが来てるから、ちゃんと挨拶していらっしゃい!」


 ヒラヒラと手を振って部屋を去っていった。


 スーちゃんというより、シャイナちゃんっぽさを感じる雰囲気だ。


 もしかしてシャイナちゃん、スーちゃんのお母様に憧れておおらかな性格になった?



「その平民服可愛いわよね?」

「うん、アリアちゃんのお母様に選んでもらったの!」

「セルライト公爵家よね? あそことは繋がりがあまりないけど、お父様が『ふところが深い』って言ってたわ!」

「懐が深い……そうかも」


 繋がりを持ったきっかけが娘だったから正規ルートじゃないけど、お母様の出産の時に、忙しいはずなのに駆けつけてくれるくらいには情が厚い。


 そんなことを思いながらせっせと着替えを済ます。


「昨日はちゃんと見れなかったけど、凄く可愛いわね?」

「そう?」

「えぇ! レオン様に見せたらイチコロよ!」

「えへへ!」


 まるで婚約者候補同士とは思えない会話だ。


 そういえば、まだ筒で倒れた事の謝罪も出来てないんだよな。


 話さないといけない事が一杯だ。


「さて、準備も出来たし、ヒカリちゃんのお母様たちに会いに行きましょ!」

「おー!」


 もう『お母様たちに』って言ってしまっているが、公爵家に伯爵令嬢の来客なんて家族だけだ。



*



 スーちゃんと一緒に応接室に入ると、スーちゃんの家族と僕の家族が楽しそうに会話していた。


「お父様、お母様!」

「ヒカリ!」

「無事でよかった!」


 しかし僕が駆け寄ると会話は途切れ、両親は容赦なく抱きついてきた。


「大丈夫か? 怪我はない?」

「大丈夫……ってあれ? 何があったか知ってるの?」


 お父様もお母様も心配そうな顔をしている。


「うふふ!」


 困惑している僕の様子にスーちゃんのお母様が微笑みを一つ。


「スティア、ヒカリちゃん、大きなトラブルは、絶対に家族に話さないとダメよ?」

「ご、ごめんなさい」


 犯人はスーちゃんのお母様でした。


 まぁ倫理観的にアウトだからこれは僕とスーちゃんが悪い。謝ることしか出来ません。


「それでお母様、外出禁止にしないでほしいのですけど……」

「そんなことしないわよ! 流石に運が悪かっただけで、普段から人徳不足の貴族が彷徨いてるわけじゃないもの!」

「よかった……!」


 外出禁止は少し考え過ぎだったかな?


 でも、初めて一人で外出した矢先だから、過剰な妄想が膨らんだのは許してほしいな。


 異世界の価値観は十歳には難しいんだ。



「ねぇオズワルドさんフィリアさん、よろしければ私たち四人で少し出かけないかしら?」

「あら、私は嬉しいけれど、あなたは?」

「フィリアが良いなら僕も賛成」

「決まりね! あなたも来るのよ!」

「まぁ、仕事は片付いてるし良いか!」


 なんか親は親で話が転々と進んでいるけど、僕はどうすれば良いんだい?


 てっきり迎えに来たものかと思っていたけど、そうじゃないの?


「ヒカリちゃん、今日シャイナちゃんがうちに来るのだけど、どうせなら三人で遊んだらどうかしら?」

「え、スーちゃん良いの?」

「当たり前じゃない! 今帰っちゃうのはつまらないわ?」

「じゃあ、ありがとうございます! よろしくお願いします!」

「ふふっ、決まりね!」


 転々と話が進んでいき、親四人は外出、子供は家でシャイナちゃん待ちという事になった。


「というわけで、屋敷は任せたよレイナ」

「承知いたしました旦那様」


「ヒカリ、あまり迷惑かけちゃダメよ?」

「気をつけます」


 いやマジで本当に気をつけます。



 そんなわけで互いの両親が外出し、現在メイドや執事を除けばスーちゃんと二人。


「ねぇヒカリちゃん! シャイナ来たら隠れて?」

「良いけどなんで?」

「だって、シャイナ絶対ビックリするでしょ? 見たくない?」

「超みたい!」

「そうよね!」


 あのふわふわで温厚なシャイナちゃんが声を跳ね上げる瞬間なんて、みたいに決まってる!


 そんな風にウズウズしていたら鐘が鳴り響く。


「お嬢様、シャイナ様がご到着されました」

「早いわね! ヒカリちゃんはここに!」

「うん!」


 適当にソファの後ろに隠れて気配を消し、三十秒待たないうちにシャイナの声がドア越しから聞こえだす。


「シャイナ、いらっしゃい!」

「ご招待ありがとうございます、スーちゃん!」


 いつもの明るいシャイナちゃんの声が室内に入ってきて、ポスっとソファに座る音が聞こえた。


 今、ヒカリちゃん、シャイナちゃんの真後ろにいます!

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