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51話 事後の日の朝


「ヒカリちゃん……」


 スーちゃんは立ち竦む僕にどう声をかけて良いのか分からず、手錠をかけられて連行されるドーンに目を逸らす。


「結局……」

(結局、謝ってくれなかった)


 ゲンさんに無理やり連れ去られる時も、一瞬たりともこちらを見なかった。


 コメンさんはドーンの息子と話してて、こちらに気を使う余裕なんてなさそう。



 別に謝って欲しいわけじゃ……。


 いや、謝って欲しい。すごく謝って欲しい。


 僕は伯爵だし、後から制裁なんていくらでも出来たけど、この子たちは絶対に太刀打ち出来ない相手に怒鳴られたんだ。


 だから……ちゃんと謝ってーー


「えっ?」

「ヒカリ!」

「ヒカリちゃん!?」


 張り詰めた緊張感が緩まったからか、不意に膝の力が抜けてしまった。


 結果として気にかけてくれてたレオン様に抱きつかれる形で転倒は防いだ。


 とんだ少女漫画展開だけど、そんなこと気にするほど心に余裕がなかった。



「あ……あはは、力抜けちゃった……!」

「ヒカリ、よく頑張ったね?」

「スーちゃんも……レオン様も……ありがとう、ございます……」


 助けてくれたことも、最後一人で頑張らせてくれたのも、二人にはものすごい支えられた。


「スーちゃん……レオン様との、デートの邪魔しちゃって……ごめんね?」

「バカ! 今はそんなこと気にしてる場合じゃないでしょ!」


 ゆっくり隣に座るスーちゃんは僕の頭を撫でて、愛しむような笑みを浮かべる。


 まるで妹じゃないか。


「立てる?」

「お力お借りしても?」

「当たり前じゃない!」

「そんなのいくらでも貸すよ!」


 スーちゃんとレオン様に軽く支えてもらって立とうとするが、無意識に膝が震えて、全く力も入らない。


「あれ、おかしい……な?」


 立て……ない。


「なん……で、あれ?」

「ヒカリちゃん!」

「ヒカリ!」


 突然視界がぐにゃりと曲がり、僕の意識は深い底に落とされた。


 元高校生でスーちゃんやレオン様より人生経験長いはずなのに、どうしてこんなにヒカリちゃんは脆いの……?



*



「ふあぁぁ……」


 目が覚めると、見たことない天井と見たことない部屋、そして、持ってないパジャマを着ていた。


 外は朝の日差しが降り注いでおり、日を跨いだことが容易に想像できた。



「ここは……」


 寝ぼけた頭を必死に動かして、昨日のことを思い出す。


 いや思い出すも何も忘れられない出来事だった。寝ぼけた頭でも鮮明に思い出せた。


 元高校生の十歳児が、十歳と十一歳に介抱されていた。


 あの二人本当に十歳と十一歳なの? 随分と大人っぽかったよ? 子供のくせに中年のドーンを圧倒してたよ?


(王族とか公爵だと自信補正で色々強くなるのだろうか……?)


 自分と歳が近いはずの二人のことを考えていると、不意に『コンコン』とノックの音が響く。


「失礼いたします。あ、お目覚めですか!」

「えっと……おはよう?」

「おはようございますヒカリ様!」


 見たことのないメイドが部屋に入ってきて、しかも名前を知っているときた。


 凄く色々聞きたい。



「ここは、どこ……ですか?」

「こちらはオーラライト公爵家の、来客用の寝室です!」

「オーラ……じゃあスーちゃんの?」

「はい、スティア様のご厚意で、意識を失った後、我が家にお招きしました」

「おぉ、公爵家」


 正直家に帰されてるものかと思ったし、実際常識的には正しいんだけど、トラブルに遭って気絶して家に帰ったってなったら、外出禁止になりそうで嫌。


 気持ち的には物凄く有難い。


「なんでもスティア様が『今家に帰って外出禁止になったらヒカリちゃんが可哀想! うちに招いたってことにして!』と」

「完璧じゃん」


 スーちゃん、心の友過ぎるんだけど?


「なのでウィンガート伯爵のご家族様はちゃんとヒカリ様がオーラライト公爵家にいる事を存じております。ご安心を」

「スーちゃん……!」


 何もかも完璧なんだけど!

 倫理観以外。


「あら、起きたのねヒカリちゃん!」

「スーちゃん!」


 メイドとの会話中、スタスタと部屋に入ってきたスーちゃん。


「可愛い服だね?」

「当たり前じゃない!」


 完全に赤一色のワンピースの平民服。公爵様でも家でラフな格好なんだなって安心感を覚える。


「それよりヒカリちゃん、もう大丈夫なの?」

「うん、心配かけてごめんね?」

「許してあげるわ! それに、私の友達を傷つけたあの男は許せなかったし?」


 してやったりという顔をして、拳を突き出している。


「ありがとうスーちゃん!」

「なっ! ちょっとはしたないよヒカリちゃん!」

「少しくらい良いのっ!」


 僕は全力でスーちゃんに抱きつき、スーちゃんはワナワナしながらも受け入れてくれてる。


 本当、良い友達を持った。

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