40話 『筒』体質の警告
翌日、何故かアリアちゃんから手紙が届いて、中を開けてみる。
『今から来て』
とだけ書かれていた。
「えぇ……」
初めてアリアちゃんに怖いって気持ちが湧いた。
心配? それとも怒ってる? マジでわかんない。
そんなわけで現在セルライト公爵令嬢の門前。
「お母様……」
流石に不安が勝ってしまっている自分がおり、一緒について来てくれたお母様の腕を離せない。
「心配したって始まらないわ? 怒られたら謝って、心配かけてたら謝って、それで仲直りしましょ?」
「はい」
いつもよりゆっくり馬車を降り、当然突然の訪問故準備などされておらず、二人でゆっくり正面玄関まで歩く。
そしてベルを鳴らそうとした瞬間『ガタン』と扉が開き、アリアちゃんと目が合う。
「ア、アリアちゃーー」
「バカっ!」
「きゃっ!?」
瞬間、凄い勢いで抱きついて来て、ボロボロと泣き出した。
「心配……したじゃない……!」
「アリアちゃん……」
背中からアリアちゃんの手が震えているのがよくわかる。
「ごめん……アリアちゃん、ごめん!」
「ヒカリちゃんがいないと……私、ダメなの! 嫌なの!」
僕もボロボロと涙が溢れ出てしまい、二人でその場で膝を折って泣き崩れた。
「お久しぶりね、フィリアさん」
「メイさん、お久しぶりです。娘がご心配をおかけしました」
お母様は深々と頭を下げる。
「良いのよ、無事で良かったわ? それより来るまでに疲れたでしょ? 早く上がりましょ?」
「お邪魔させて貰うわ? ヒカリ、アリアちゃんも行きましょ?」
「んん! アリアちゃん」
「ヤダ、もうずごじ……」
「アリア、もう十二歳でしょ? しゃんとしなさい!」
「あぃ……」
メイ様にお叱りを受け、ゆっくり立ち上がる。
「久しぶりだから、沢山話そうね?」
「うん!」
*
「ヒカリちゃんが『筒』ねぇ?」
メイ様は興味深そうに僕を見つめる。
「メイ様知ってるの?」
「えぇ! 学園で習う内容だもの!」
「懐かしいわね? まさか自分の娘が『筒』なんて思わなかったわ?」
お母様とメイ様はある程度知っているようで、昔話に花が咲きそうだ。
一方、僕とアリアちゃんは何も知らない。
「お母様『筒』って珍しいの?」
「そうでもないわよ? 毎年一人以上学園に入学する生徒にいるもの!」
「一人以上……」
それって、結構レアなんじゃ? ヒカリちゃんレアキャラなんじゃ?
「私の代は、魔力沢山使えるからって調子に乗って退学になったわね?」
「あらフィリアさんの代も? 私もなのよ!」
「やっぱり、特異体質って舞いあがっちゃうのね?」
「……」
待って! 聞きたくなかった!
もう魔力沢山使えるとか考えないようにします!?
「ヒカリちゃんは退学になっちゃダメよ?」
「き……気をつけます」
メイ様、笑ってるけど結構洒落にならないよ……。
不意に扉が『バタン』と開く。
「おかあさま、ここ教えて欲しーー、あれ!?」
「カルラ、部屋を開ける時はノックしなさい!」
「ご、ごめんなさいお母様! ヒカリちゃん、お久しぶりです」
「カルラくん久しぶり!」
現れたのは、アリアちゃんの弟、カルラ・セルライト公爵子息。
初めてセルライト家に訪れた時、メイ様のお腹の中にいた男の子だ。
因みにカルラくん、アリアちゃんと同じくらいの身長をしています。
つまり! 僕抜かれてます!?
七歳児に抜かれた十歳です!?
そして凄いことにーー
「また背伸びた?」
「そ、そうなんです、お父様もびっくりしてました!」
まだまだ成長している。
「凄いじゃない! もう直ぐアリアちゃん越しちゃうよ!」
「おねえちゃんこえたら…………」
「ん?」
「い、いえ……」
「?」
時々ゴニョゴニョした声になるのは少し乙女ポイント。
「はぁ……全くもう!」
「あはは……」
アリアちゃん曰く、カルラくんはヒカリちゃんが好きらしい。
嬉しいけど、関わってる異性が姉のアリアちゃんと、姉の友人の僕だけだからしょうがない。
もっと世界が広がればいずれ冷める恋だし、僕に出来ることは、弄り倒して拗らせないようにしないといけないことだけ。
でも、親友の弟って不思議と可愛いんだよな……?




