37話 十歳のヒカリちゃん
どうもヒカリちゃんです。
本来なら五歳でお勉強、七歳で音楽教育、十歳で淑女教育を始める中、ヒカリちゃんは『アリアちゃんと本が読みたい』『アリアちゃんとピアノが弾きたい』『アリアちゃんみたいになりたい』と言い続けーー
全ての教育課程をどんどん前倒しで行い、アリアちゃんというお手本の後を追った結果!
現在十歳! 全ての教育課程を終えました〜!!
淑女教育だけは、どれだけアリアちゃんを追っても元男には大変だったけど、なんとかなってしまった……。
「私、優等生じゃん……」
気付けば両親と共有で使っていた部屋から個室が与えられ、プライベートも充実。
前世平均点の男子は、今世で超優等生。
転生もののテンプレを上手になぞっています。
まぁ令嬢ものなんて読んだことないからこれがテンプレなのかもわかんないけど。
「おねえちゃん?」
「ちょっとコウ、部屋入る時はノックして?」
あんなに小さくて可愛かった弟、コウ・ウィンガートも気付けば五歳。
今でも小さくて超可愛い!
「おねえちゃん、ここわかんない」
「どこ、お姉ちゃんが教えてあげるよ!」
五歳のコウはお勉強を始めたばかりで、日本語もとい『ポーンロンド文字』の読み書きに必死。
そして僕は、コウの勉強を毎日見ている。
毎日って言っても、勉強始めて一週間なんだけどね?
そんなこんなで今日は、実は待ちに待った魔力測定がある日なのです!
魔法の話を聞いて五年、本当に長かった……。
「ヒカリ、そろそろ行くぞ?」
「はーい! それじゃあコウ、今日はおしまい!」
「ええぇぇぇ?」
僕と同じピンクの髪を撫で、二人で正面玄関に向かう。
既に馬車は用意されており、正装をしたお父様が待っていた。
「お父様、格好つけ過ぎじゃない?」
「お偉いさんに会う姿は、これくらいしなと失礼に値するんだよ」
まぁしわくちゃなスーツよりかはマシだけどね?
「お母様、コウ、シャル、ミューゼ、行って来ます!」
「行ってらっしゃい?」
「行ってらっしゃいませ」
「おかえりお待ちしております」
大切な人たちに見送られ、魔力測定を行う会場へ向かう。
会場はどこだって?
はは……王城ですよ……。
*
「ヒカリ、久しぶり」
「レオン様、お久しぶりです!」
お父様と馬車をおり、王城へ入ろうとした時、丁度目の前にいたレオン第三王子と遭遇。
あれだけショタショタ言っていたレオン様も現在十一歳。
前世で言う小学五、六年あたり。
人によっては一番喰いごろの時期になってしまった……。
「随分と背丈が伸びましたのね?」
「これでも上の兄上より小さいのだけどね?」
上の兄上、つまり第一王子の十一歳の頃はもっと大きかったらしい。
すげーなおい。まだ会ったことないけど、今身長どれくらいになるんだ?
「どうせなら、会場までエスコートしてもいいかな?」
「スーちゃんとシャイナちゃんにも同じことするなら、いいですよ?」
「普通王族のエスコートって喜ぶものじゃない?」
そんな茶々を入れながらもレオン様は私の手を取る。
「オズワルド殿、娘様をお借りします」
「構いませんよ? どのみち私の行くところとヒカリの行くところは別なので、娘をお願いいたします」
お父様は軽く一礼して、大人が集まっている方へと足を運んで行った。
「では行こうか」
レオン様は僕の左腕を組み、歩幅を私に合わせて歩み出す。
六〜十歳の間、流石のヒカリちゃんも三ヶ月に一回ほど王城へ通い、それなりに親睦を深めて来た。
(この王子様……)
マジで、一切の疑いなく言い切れる。
レオン王子、ヒカリちゃんにガチ恋してる!
スーちゃんとシャイナちゃんと会う時の姿がまだわからないけど、ガチ恋されてるのはちょっとどころか露骨にわかる。
お茶会で婚約者の足切りをして初めて会った時なんて言ったと思う?
「ヒカリちゃんは、笑ってた方が良い! 僕はずっとヒカリちゃんの笑顔が見てたい!」
だよ?
まだ男としての心が強かった六歳のヒカリちゃんも、流石に赤面したよね……。
「どうしたの?」
「少し昔のことを思い出してて」
「昔?」
「あのお茶会のあと、レオン様が最初に言ったこと」
「あれはっ! もう忘れ……いや、胸にしまっててくれ、あまり人には教えないで」
「ふふっ!」
今ではネタ札として扱えてます。
そんな雑談をしながら会場のホールへ到着。
「僕は迎えるべき客人がまだ二人ほどいるからもう行くよ。ちゃんとエスコートしてくるからね?」
「行ってらっしゃい!」
そんなわけで一人待ちぼうけになりまして、暇つぶしになんとなく周囲の人を見回してみる。
「……」
全員知り合いは少ないのか、異様なほど静か。
話し声は聞こえるが、この大人数で内容が聞き取れるほど。
「あ、ヒカリちゃんみっけ!」
「シャイナちゃん!」
「ご到着です、お姫様」
「ありがとうレオン様!」
「では、あとお一人約束がありますので」
またレオン様はその場を去る。
なんかおもろいな。王族が舞台装置になっちゃったよ。
「お久しぶりですねヒカリちゃん!」
「はい! シャイナちゃんお元気そうです何よりです!」
お互い手を取り合い、僕とシャイナの声が静かなホールに響き渡る。




