32話 最後の一人
「みんな、今日は集まってくれてありがとう!」
スティア様の発言一つで全員の視線が集まり、満足そうに鼻を鳴らす。
「とりあえず、みんなで自己紹介しましょ?」
そう言ってスティアは立ち上がり、全員を見回す。
スカートを摘んで礼を一つ。
「オーラライト公爵、スティア・オーラライトですわ!」
自身に満ち溢れた表情は、真似事の礼ですら貫禄を帯びてしまう。
(これが、公爵令嬢……)
アリアちゃんの親しみやすさとはまた違う、不思議と魅入ってしまうオーラがあった。
「次、あなたお願い出来るかしら?」
「は、はい!」
ご指名を受けて立ち上がり、真似事の礼を一つ。
「ウィンガート伯爵、ヒカリ・ウィンガートです!」
同様に自己紹介をして全員の反応を伺う。
スティア様の時とは違い、明らかに舐めたような、首を持ち上げて見下す視線がいくつかある。
「お願いいたします!」
隣の令嬢に目を送り、チェアに座る。
返事をするでもなく、ただ無言で立ち上がった令嬢は、同じように真似事の礼を一つ。
水色の髪と青銅のようなオレンジの瞳、青いドレスといかにも青好きを主張した令嬢。
そしてーー
「スカラ侯爵、セイナ・スカラと申します。隣のお情け婚約者候補とは違い、スティア様と同じで、ちゃんと婚約者候補ですわ!」
(おお……)
超喧嘩腰。今直ぐ買ってやろうか?
「ではお隣の方、お願いいたしますわ?」
「あい!」
元気よく返事をして立ち上がる令嬢。
のっぺりした赤い髪に、セイナ侯爵同様の青銅のような瞳と青いドレス。
(この二人、仲良しだな)
「セッカ侯爵、ルージー・セッカと申します!」
この子は元気で無垢っぽそうだ。
「私もお情けではなく、ちゃんと婚約者候補ですわ?」
「……」
ちょっと待て! なんで最高身分の公爵より一個下の侯爵の方がクソッタレなんだ?
こう言うのって、公爵が鼻高々になって自惚れてると思ってたけど……。
そこからも自己紹介が続き、どうやらこの場にいる婚約者候補は、公爵が一人、侯爵が七人、伯爵が一人という超アウェイな現場だった。
あぁ、あと一人も伯爵であってくれ……。
*
「みなさま、素敵な紹介ありがとうございます!」
スティア様は両手をポンと叩いて笑顔を咲かせる。
正直不服だったけど、一番身分低いし、一番レオン王子に関わっていないから何も言い返せない。
「私、こうしてお茶会をするの、レオン様以外ですと今日が初めてなので、楽しみにしておりましたの!」
もうね、スティア様はニッコニコ。
「……」
気のせいだと嬉しいんだけど、僕を横に置いたのって、自分の公爵の身分を目立たせる為とかじゃないよね?
『気に入りました!』って言ってくれたもんね? 違うよね?
それからもう一つ気になることがあるんだよね。
「みんな何歳なんだろう……」
アリアちゃん、ナツ、ルカは二つ上の八歳、レオン王子は一つ上の七歳。
僕の周りには年上しかいないから、同い年で仲良く出来る人がいたら嬉しいんだけど……。
(高望みかな……)
伯爵を見下す侯爵まみれだし、難しいか。
そんなことを思っていたら隣のスティア様と目が合い、クスリと笑う。
「私、六歳ですわ?」
「ヒ、ヒカリも六歳です!」
「同い年ですわね?」
「はい!」
どうやら本当に気に入ってくれていたらしい。溢れた独り言をわざわざ拾ってくれた。
公爵の人って、いい人ばかりなのか?
「そういえば、みなさまはおいくつになるのですか? 私とヒカリちゃんは六歳なのですが」
しかも全体に話を振ってくれた。
この状況下でスティア様以外と仲良くなりたくないけど、もしかしたら会話の糸口になるかもしれない。
元男子高校生のヒカリちゃんは、心が広いんだ?
「七歳になります」
最初に答えたのは、隣のスカラ侯爵令嬢のセイナ。
そしてーー
「年下で、身分も下、ちゃんとうやまってね?」
「……」
小声でしれっと圧かけてきた。
この人嫌いだ……。
そんな感じで全員の年齢が開示され、五〜七歳の集い、日本にいた頃の理想の年齢差程度。
まぁ『歳は下でも身分は上』『歳も身分も下』みたいな高圧を延々とかけられて、同年代と仲良くなりたいとかそういう話じゃなかったけどね。
(はぁ……もう帰りたい)
既にナイーブなヒカリちゃん。
居心地の悪さに離席しようかと思った時、最後の客人が姿を現す。
「お、遅れてしまい、もうしわけございません!」
「あ、遅いわよシャイナ!」
「スーちゃん、はじめるの早いよぉ〜!」
ふわふわした雰囲気で少し登場したその人。
その雰囲気をそのまま纏ったような癖っ毛のミディアムロングの白髪ウェーブヘアー、灰色の瞳に、スティア様とお揃いの赤いドレス。
そして、スティア公爵令嬢を『スーちゃん』と気さくに呼んだ彼女はーー
「みなさまはじめまして〜! わたくし、ミクロライト公爵、シャイナ・ミクロライトともうします!」
歳が近いと思えないほど気品に溢れた、四大貴族の一角、ミクロライト公爵令嬢だ。
「今日、みなさまに会えるのを楽しみにしてました!」




